このブログ記事は私のホームページの下記の記事に対応しています。

なぜ清朝中国領全土地図 (皇輿全覽図) に釣魚嶼が描かれて無いのか?

http://masanori-asami.sakura.ne.jp/Diaoyu-Islands_dispute/Huangyuquanlan-tu.htm

問題の所在:

   清朝中国の第四代皇帝である康熙帝は清朝中国領全土について緯線・(基準とする北京を経度0度とする本初子午線による)経線が二分の一度 (0.5度) 間隔で描かれた近代的実測図である『皇與全覧図』 ( 『皇與全覧分省図』 も含む)をヨーロッパから中国にキリスト教の布教に来たイエズス会神父らに作成させた。時代的に日本の伊能忠敬の日本地図 (大日本沿海輿地全図) 作成より約百年前である事を考えれば18世紀初頭としては非常に優秀な地図である事は一目瞭然である。
Kangxi-huangyuquanlan-tu

   しかし、その『皇與全覧図』には釣魚嶼 (魚釣島) は描かれていない。これに対して、拓殖大学の下條正男教授が尖閣諸島が描かれてない事をもって尖閣諸島が清朝中国領でなかったと主張している 。

2015年9月29日付け・産経ニュース記事・

[ 中国の尖閣領有権主張、また崩れる 17世紀作製の「皇輿全覧図」に記載なし ] 参照

http://www.sankei.com/politics/news/150928/plt1509280003-n1.html

Huangyuquanlan_Sankei


私の見解: (詳細はホームページ記事を御覧ください。)

   『皇與全覧図』に釣魚嶼 (魚釣島) が描かれていない最大の原因は、三角測量ができない荒海を隔てた絶海の孤島では当時の技術では経度の誤差が一度を越える可能性が高かった事が最大の原因と考える。『皇與全覧図』では経線が二分の一度 (0.5度) 間隔で引かれているが、誤差が一度を越えると経線で三つ以上ズレる可能性があったのである。経線で一つズレる事は許容されるが二つ以上ズレるようだと問題があり、三つ以上ズレたら二分の一度 (0.5度) 間隔で経線を引いた意味がなくなる。さらに、もし仮に経度の誤差が1度を越えると見通し距離を越え、将来に技術革新があって正確な経度測定が可能になった場合に別の島と認定されて「無主地」として先占されてしまう危険があったのである。ただし、大陸近くの廈門島・金門島は三角測量で正確な緯度・経度が測量でき、金門島から一日程度の澎湖諸島や更に半日程度の台湾本島は海が穏やかなら振り子時計が概ね正確に作動したため比較的精度の高い経度が算定可能だった。 

   ちなみに、経度と異なり緯度は絶海の孤島でも陸上で天文観測によって測定すれば当時でも緯度の誤差は比較的少なく、『皇與全覧図』でも重要な場所である台湾の県城の緯度の誤差は小さい。

Imperial atlas of China_gedanken-diaoyudao

   上掲の地図は、The Library of Congress (アメリカ連邦議会図書館)が所蔵・公開する『皇與全覧図』の「福建図」(下記url参照)の一部に、0.5度間隔で(北京基準の)経線・緯線を青色で追加し、釣魚嶼 (魚釣島) と鶏籠城 (基隆港口の和平島) の正しい位置及び、釣魚嶼 (魚釣島)が測量誤差によって西に1.2度ズレたと仮定した場合の仮想位置を示したものである。

https://www.loc.gov/resource/g7820m.gct00265/?sp=30


重要参考書籍:

デーヴァ・ソベル 著・『経度への挑戦』 (藤井留美 訳)・角川文庫


重要参考サイト:

wikipedia「経度の歴史」

https://ja.wikipedia.org/wiki/経度の歴史


wikipedia「経度法」

https://ja.wikipedia.org/wiki/経度法


[ 八分儀  ]

http://asait.world.coocan.jp/kuiper_belt/navigation/octant.htm


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