2011年07月24日

仙台での土壌からの内部被曝のリスクを私はどう見ているか

空間線量率がどれくらいかは、各自治体や文科省を初めとする省庁の測定によって概要が分かるようになってきました。 放射線測定値についてのまとめは、私も参加している

放射線量モニターデータまとめページ
に情報が集約されています。 なかでも、「全国の様々な地図マッピング結果を一つのGoogle Map 上に重ね合わせて表示するページ by @nnistarさん」を見ると広域に渡ってどうなっているかが分かります。

また、「文部科学省と宮城県による航空機モニタリングの結果(7/20公表) PDF」でも状況が分かるようになっています。 航空機での測定は、リンク先のPDFの文章によると、地表約150-300mの高さでの測定で、測定値は航空機下部の直径約300mから600mの園内の平均値となっています。 そのため、地上で地表1mで測定した場合に比べると細かい違いは分かりません。 ただ、人間は屋外で同じ場所にずっと立っていることが無いと仮定すれば平均値で良いと考えられます。 (朝から晩まで農作業等をしていて、その農地が周りの何倍もの高い放射線量率になっている場合は、また別の話です。)

空間線量率のことが明らかになってきて、仙台市でもホット・スポットがあるかもと心配する人は減ってきているように感じています。

なお、ホット・スポットがどのようなものを指すかについては、人によって感じ方が違うようです。 単に放射線レベルの高い地域のことを言っている人もいれば、周りの空間線量率が低くてもある点状に高い場所のことを言っている人もいます。 前者は、本当はホット・エリアというべきではないかと私は考えます。 カタカナになっている単語は外来語由来であることもあり、指していることが人によって違うことが多々あることは頭に入れておいた方が良いと思います。
次に、心配することはおそらく内部被曝のことだと思います。

内部被曝のことを考えるには、どのくらいの濃度の放射性物質を体内に入れたか、またどの核種(放射性物質の種類)を考える必要があります。 心配して調べている人にとっては何を今さらと言われるかもしれませんが、自分が調べて理解していることを以下にまとめます。 生体に対する影響については私は専門家ではありませんので、子供を持つ親の意見の一つとして見てください。

  • 放射性物質の種類による生体への蓄積しやすさ
    • ヨウ素:甲状腺に蓄積
    • セシウム:全身(主に筋肉)に蓄積。カリウムも同じ振る舞いをする、従ってカリウムに放射性カリウム (K-40)が含まれているからといって、カリウムを含む食物を食べないとかえってセシウムを蓄積する可能性が増える
    • ストロンチウム:骨に蓄積
  • 福島第一原発から排出された放射性物質の種類
    • ベクレルで量を表示するが、ベクレルは「一秒間に一個の不安定原子核が崩壊(壊変)する」という単位なので、普通の感覚からすると桁がむちゃくちゃ大きくて分かりにくい。原子の数はアボガドロ数の桁なので1gの物でも原子の個数にすると100垓(垓は京の一万倍、京ば兆の一万倍、兆は億の一万倍)の桁になるので、億の桁のベクレルでも重さにすると100億分の1gになる。
    • 地表に降った放射性物質は、多い方からヨウ素-131、セシウム134とセシウム137。
    • 放射性ストロンチウムの Sr-90 は、文科省の調べ(PDF)で、福島県内で 放射性ストロンチウムと放射性セシウムの比は 1/2000 から 1/10000。チェルノブイリ事故の場合は、この比が1/9 と言われている。チェルノブイリ事故に比べれば地表に降った放射性ストロンチウムの影響は、多めに見積もっても222分の1以下。
  • 経口接種(胃に入る)と吸飲(肺に入る)では影響が違う、また核種によっても影響が違う
    • 核種による違いを考慮し、1 Bq の放射性物質の吸収等価線量が幾らになるかの換算係数は ICRP によって見積もられており、国の定める基準はこれに基づいている。
    • 内部被曝の換算係数は、「緊急時における食品の放射能測定マニュアル 厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課 (PDF)」の36ページにある、「傾向摂取による実効線量および甲状腺透過線量への換算係数」、に載っている。
    • 上記のページを自分で、グーグル・スプレッドシートにまとめたページ
    • セシウム137を吸引した場合の換算係数は経口接種の約3倍。(緊急被ばく医療研修のページより)
  • 体内に入った放射性物質は、代謝によって対外に放出される。 従って、超寿命の放射性物質、たとえば半減期が約30年の 137Cs(セシウム-137)から受ける体内被曝の影響は、この代謝によって放射性物質が減るより先に体外に放出される。 上記の内部被曝換算係数は、代謝による放出の事もきちんと考慮されている。
  • 内部被曝換算係数によって見積もった、放射線量は「預託線量」と呼ばれ、接種後50年間(乳幼児や子供に対しては70歳まで)に受ける吸収等価線量の積分になる。 つまり、排出までの時間が長い場合は逆に1年あたりにあびている吸収等価線量率は低い。
  • 食物に当てはめられている摂取制限は、ある放射性物質を一定量含む食べ物を1年間食べ続けたとして見積もられている。 従って、たまたま摂取制限を越えたものを食べたからと言って、すぐに何か起きるわけではない。その後、含んでいないものを食べていれば良い。
  • 3月に「直ちに健康に影響がでるレベルではありません」という言葉を何度も聞いたが、これを「どんなに微量であっても、何年後かあるいは数十年後に絶対に影響がでる」と解釈するのは「間違い」。 「直ちに健康が影響が出る」のは、一度に大量の放射線を浴びた場合。 微量な放射線の人体に対する影響は、微量なリスクの上昇があるとしか言うことが出来ない。 そのため、他のリスクと比較をして判断するしかなく、判断するのは個人。
  • 内部被曝の影響を ICRP の数百倍に見積もっている ECRR (European Committee on Radiation Risk)の報告があるが、自分は ECRR の言うことを信じる気にはならない。
    • 理由その1:彼らの主張が正しければ、大人で約数千 Bq 常に体内にある、40K (カリウム-40)によって、発ガンしている人が多いはず。カリウムは人体の必須元素の一つなので常に一定量存在している。
    • 理由その2:「buveryの日記 2011-05-20」で議論されているように、多くの恣意的なデータの解釈が見られる。
    • 理由その3:ECRR の委員である クリス・バズビーは、福島第一原発3号炉の爆発が水素爆発にしては大きいから核爆発だと言っている。とにかく影響を大きく見積もりたいと思っている様に見える。(そして驚くべくことに、この論理の飛躍を「やっぱりそうだ」と思って信じる人がいる。)
    結論として、自分が内部被曝の影響を見積もるときは、ICRP の換算係数を使う。
  • 原子炉から少しずつ放射性物質が出ていることは、東電の測定にもある。しかし、4月以降空間線量率が極端に増えてないことを考えると、心配する濃度とは思えない。
  • 子供が外で遊ぶときに放射性物質を吸い込むのではないかと恐れるため外で遊ばせない人、あるいは吸い込まないためマスクをさせる人ががいることは承知している。不安な人は努力をするに越したことはないと思うが、私は気にしていない。
    • 仙台青葉区での土壌中の放射性セシウム(Cs-134とCs-137を足したもの)の値は、高いところで 500 Bq/kgで、Cs-134とCs-137の比はおよそ1:1(どちらの数値も、当研究室調べ)
    • 幼児が外遊びをしていて、毎日1 g の土が口に入って飲み込んだと仮定。 それぞれのセシウムは、年間 250×0.001×365=91.25 Bq。 実効線量は、91.25 × 0.013 + 91.25 × 0.010 = 1.18625 + 0.9125 = 2.1 [μSv] になる。
    • ただし、 「幼児の土壌粒子摂取量」と 「土壌の摂食などによる有害物質の摂取量の算定方法」によると、一般には幼児は一日0.2g の土壌を摂食すると仮定している。従って、上記の見積もりは、それより5倍の摂食量と多めに見積もっている。

仙台で一年間毎日 1g の土を食べたとしても、それによる内部被曝の影響は、2.1 μSv です。 食物による内部被曝の世界平均が、一年あたり 0.29 mSv = 290 μSv であることを考えると、100分の1弱だけリスクが増えたことに相当します。

私は、この100分の1弱のリスク増は気にしません。 従って、自分の子供(4歳)が外で遊ぶことを止めませんし、マスクもさせていません。

追記:上記で「等価線量」と書くところを、寝ぼけてたのか「吸収線量」と書いていました。今の文章では取消線を引いて訂正しています。



この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/masashi_kaneta/51277867
この記事へのコメント
とても分かりやすかったです。
ありがとうございます。
私も外遊びは現時点では気にしていません。
ただ、学校での草むしりの時のマスクや食べ物の産地は気にしています。
いろいろな情報が飛び交う中、あとは個人の判断と思いますが、参考の為にお聞かせ下さい。
お弁当の記事は毎回楽しみです。
食材選びにあたっては、産地は気にされてますか?
まったく気にしないですか?
Posted by あっちゃん at 2011年07月25日 00:49
> 食材選びにあたっては、産地は気にされてますか?
> まったく気にしないですか?

流通している物はサンプル調査ですが調べられているので、産地は気にしていませんでした。
最近の牛肉の問題もありましたが、間違って流通したことが分かればその直後には放射性物質の濃度の高いものは流通しなくなるので、深刻には心配していません。
また基本的には、いろいろな場所からのいろいろな食材を選べば、その中の一つが放射性物質を含んでいても影響が少なくなります。
その為、今後も特に産地を選ぶことはしないつもりです。
Posted by 金田 at 2011年07月26日 22:09
なるほど!ありがとうございます。
少し気になる時は、あちこちの産地を考えながら選ぼうかな…
これからも、情報ありましたらよろしくお願いします。
(*^^*)
Posted by あっちゃん at 2011年07月28日 22:10
冷静な説明ありがとうございます。
放射性セシウムが体に溜まらないようにするためにカリウムでも取ろうかと考えている時に読ませてもらいました。カリウムもカリウムで放射性カリウムがあるということを忘れていました。素人考えは浅はかであると反省させられました。
Posted by はまちゃん at 2011年08月02日 11:46