彼等と出会って数日。
この村の生活にもかなり慣れてきた。
逆さ語はまだ少し時間を要するが会話は成立させていると思う。
楽しい。

そんなある日のこと、賑やかな声と共に朝を迎えた。

テントの外が騒がしい。
何か行われている様だ。

声に誘われるまま眠気眼で外に出た。
すると
IMG_1175
















おぉ!!
何だこの光景は!
激しい音楽と共に歌い踊る村人達!

どうやら今日は村のお祭りらしい。
IMG_1172
















朝からこんなに元気な彼等の秘密はやはり逆さにあるのか!?
特に手前の黒いTシャツの彼!

 なっ!?か、片腕であんなこと!?

族長に負けず劣らず凄い技を連発している。
彼の名は「KIZUKA」。
持ち合わせた技だけではなくその人柄から村人達の信頼も厚い。
部外者の私から見ても次期族長は彼に違いないだろう。

そんなKIZUKAに聞いてみた。

 「やはり逆さは健康を保つのに必要?」

すると彼は応えた。

 「No,MENRA-」

MENRA-・・・?
あぁ!
ラーメンか!

意外な返答に笑ってしまう。




祭りは盛大に催された。
たまたま滞在していた私は客人としてもてなしを受け、族長と同じ物を食べることを許された。
それは何と・・・
FullSizeRender(1)


















KIZUKA特製のMENRA-だ!!
中太の縮れ麺にじっくりと仕込まれたスープ、そして柔らかなチャーシュー!

う、旨い!
いや、美味い!!
こんなラーメン、私の国にあるかどうか・・・!
(更に私の地元にはうどんしかない)

スープまで飲み干し、私は言った。

 KIZUKA、俺と一緒に帰国してラーメン屋やらないか?


 ・・・。


KIZUKAは私の目を見たまま応えなかった。
代わりに族長が応えた。

逆さ言葉を記述するのは面倒なので省略するが、KIZUKAは村の男であり、この世界じゃないと生きていけない。
そしてこの世界以外で生きて行くつもりもないのだそうだ。

口数の少ないKIZUKAの目に強い光を感じたのはそういうことだったのだろう。
これからこの世界を担っていく上で必要な「覚悟」と「責任」、そして「強さ」をこの若きリーダーは既に理解している。

私は「KIZUKAラーメン」で一発を狙った自分の浅はかさを恥じた。

と、そこへ一際大きな声が上がった。
Snapseed(4)
















村人の中でも精鋭達による集団演技、その名も「千脚観音」!!
息の合った演技に拍手(足)と掛け声が鳴り止まない!


これは獲物が取れた時、神に感謝する為に行われるのだそうだ。
ほほぅ、獲物かぁ。
ん?・・・獲物?


千脚観音に気を取られていたが、私の背後で別の騒ぎが起きていた。
Snapseed(19)
















「おい!何だよこれ。」
「降ろしてよ!」
「縄を解いて!!」

明らかに私側の人間達だ。
どうしたのだろう。

族長によると勝手に逆さ族の縄張りに入って来た為に捕まったのだそうだ。
姿勢も悪く、逆さ語も話せない為侵略者だとみなされたが、今日は祭日、きっと神が獲物を人間の姿に変えて寄越したのだ。
美味しく戴く、と。

ほほぅ、戴くのか。

えぇ?
た、食べるの?


私は自分が逆さ語を理解し話せることに安堵しつつも大きな選択を迫られているのを感じた。

彼等を助けるか・・・
それとも・・・食べ・・・


どうする私!?
続報を待て!



それではまた!


まさとう