リオネル・メッシがまだ背番号19のころ、僕はそのプレーを間近で観たことがある。そのころのバルセロナはバロンドールに輝いたロナウジーニョがいた。その他にもデコやエトー、相手チームにはベティス時代のホアキンがいた。
サッカーはレベルが高くなればなるほど、基本が大事になる
周囲から聴こえる「Hijo de puta」の怒号や8万人近い観客が集まったスタジアムの雰囲気に圧倒され、ゲームの内容はほとんど覚えていない。その中で一つだけ、はっきりと覚えているプレーがある。それはリオネル・メッシのトラップだ。水を含んだ芝の上を「シュートのような」と陳腐な表現でよく言われるが、まさにそんなパスを「スッ」といなした時、自然に出た溜め息と、中田英寿が発した「サッカーはレベルが高くなればなるほど、基本が大事になる」が一瞬にして理解できた経験を今でも覚えている。
「止めて・蹴る」という基本に対して、敬意を表すことのできないのは似非だと思う。超一流たる証がそこには確かにあった。
言葉は発した人に強く作用する
元P&Gの上司に勧めてもらった本をこの週末読んだとき、僕はその時の記憶が鮮明に浮かび上がっている感覚があった。この本は端的に表現すれば「真新しいことは書かれていない」と言える。驚くような魔法の言葉は書かれていないし、読み終わった後に全能感に浸ることもない。
言葉は発した人に強く作用する。
ただ、きっとそれはメッシのトラップに似ていると思う。レベルが高くなればなるほど、基本が大事になる。そんな当たり前のことは既に出来ている、と慢心していはいけない。
相手の言動を慮り、機微を読み、敬意を表す。そのことを決して忘れていはいけない。

著者:小森 康充
販売元:かんき出版
発売日:2009-03-17
おすすめ度:

クチコミを見る