
アラン定義集 (岩波文庫)
PESSIMISME 悲観主義
自然的なもので、それをあかしするものはいっぱいある。なぜなら、だれもみな悲しみ、苦悩、病気、死をまぬがれ得ないから。悲観主義は厳密に言えば、現実は不幸ではないが、これらのことを予見している人間の判断である。悲観主義は自然と体系のかたちで表現されて、(そう言ってよければ)好んであらゆる計画、あらゆる企て、あらゆる感情の悪い結末を予言する。悲観主義の本質は意志を信じないことである。オプティミスム[楽観主義]はまったく意志的である。
OPTIMISME 楽観主義
それによって自然的な悲観主義を退けるような意志的判断。オプティミスムはしばしば、苦しみ、病気、死によって打ち負かされる。しかし、悲観主義が人間についての判断において勝っていると信じようとするその瞬間に、オプティミスムは勝利を収める。なぜなら、人はつねにその同胞を、自分がそれを欲するならば、少なくともわれわれに依存することにおいて理解し救うことができるから。当然のこととして、人は最悪の現象でさえ悪く解釈はしないだろう。そしてそこに善を求めるだろう。よく考えると、この好意は正義にほかならない。より正確に言えば、この好意を求めることは、人間嫌いであることは虚偽である、という推測のなかでももっとも美しい推測によれば、正義にほかならない。