経営コンサルティングの現場から

名南経営コンサルティング 永井晶也 公式ブログ

「段取り八分の仕事二分」
昔からよく言われている、
仕事術の王道です。
ご存知の通り、
質の高い仕事を効率的に行う上で、
段取りの重要性を説いたものです。
組織の生産性は、
個々人の生産性の合計ですから、
一人ひとりの仕事の質が高まり、
効率的に仕事ができるようになれば、
自ずと組織の生産性は高まります。
加えて、組織全体でも
こうした段取りの共有がなされれば、
組織の生産性は相乗的に
高まる可能性があります。
やはり、仕事をする上で、
段取り上手であることは
必須の課題であるといえます。
これくらい重要な段取りですが、
こうした段取りをする能力(=段取り力)
を組織的に強化しようという取組みは
あまり聞いたことがありません。
もちろん、
仕事の中で(仕事を通じて)
上司や先輩社員から、
段取りの重要性を
教わることがあるでしょうが、
それ以外で改めて
時間をとって訓練するということは
あまり聞きません。
どちらかといえば、
個人が自己啓発で高める部類のもの
とされる傾向にあり、
そこに組織が積極的に関与する
というケースは稀ではないでしょうか。
しかし、組織の生産性に
大きく影響を与えるものだとすれば、
会社としてもっと積極的に
社員の段取り力の向上に
関わっていっても
良いのではないでしょうか。

では、段取り力の向上は、
具体的に社員の仕事に
どのような影響を与えるでしょうか。
同じ成果を上げるとしたら、
段取り力の高い人は、
より短い時間の中で
成果を実現することができます。
段取り力の低い人は、
より多くの時間をかけなければ
同等の成果を得ることができません。
それは何故か。
段取り力を高めることによって
得られる効果の一つは、
成果を生む時間を
より多く確保することができる
ということだからです。
一般的に、毎日2時間程度の残業
をする人であれば、
月間で200~210時間程度の
労働時間になると思います。
この中で、成果を生んでいる時間とは、
一体どれくらいでしょうか。
もちろん、業種や職種によって
異なりますが、
直接的に成果を生む営業職などでも、
業種によっては20%も無い
ということも珍しいこと
ではありません。
様々な仕事に忙殺され、
結局、成果を生むために
使える時間は極めて限られている
というケースが非常に多いといえます。
そう考えると、
改善の余地は極めて大きい
と思いませんか。
先の例で言えば、
成果を生む時間が平均20%ということは、
15%の人もいれば
25%の人もいるわけです。
能力が同じであれば、
25%の時間を確保できる人が
優秀な営業であり、
15%しか確保できない人が
優秀でない営業となります。
これは間違いありません。
こうして15%しか確保できない人の
段取り力を高め、
全体の平均を20%から25%に上げること
ができたなら、
組織の生産性は25%上昇します。
同じ人員で売上高は25%増え、
粗利益も25%増えます。
コストはそこまで増えませんから、
営業利益ベースで考えれば
少なくとも50%以上の増益
が期待できるでしょう。
いかがでしょう。
組織として社員の段取り力向上に
積極的に関わるための、
十分な根拠といえるのでは
ないでしょうか。
成長しない時代であるからこそ、
限られた時間という資源の
有効な活用で、
大きな成果を上げられる
“段取り力”を強化
していかなければいけません。


中国の古典「禮記」に、
国の財政のあり方として、
「入るを量りて出づるを制す」
という故事があります。
要するに、収入を計算して、
それに見合った支出にしなければいけない
ということです。
企業経営においても同じことであり、
安定的に利益を上げるには、
しっかりと「入るを量り」、
それに見合った「出づるを制す」
必要があります。
こうした考えは、
企業経営の予実管理
という考え方に共通します。
とりわけ、
建設業の実行予算管理は、
まさしく
「入るを量りて出づるを制す」
そのものであります。
ところが、
この管理が徹底されないことが
多いように思います。
徹底されないばかりか、
利益率の目標すらない
というケースも見受けます。
こういう状態を放置していては、
会社の利益が出ないのは当たり前であり、
仮に利益が出ているとしても、
そこには大きな機会損失
があることは間違いありません。
「出づるを制す」を行わない限り、
目標とする利益は確保できませんし、
確実に計画を割り込むことになります。
赤字になるということも
稀ではないでしょう。

管理の基本は、
計画-組織化-実行-統制-調整
の管理サイクルを回すことです。
先の建設業の例で言えば、
受注が決まる段階で、
見積りの原価を更に詰めて、
業者と交渉した上で予算を決めます。
この段階で想定する利益率を上回る利益
を確保できていなければいけません。
これが実行予算(計画)です。
そしてその計画に基づき、
組織を編成し、
実行に移していくのです。
重要なのはここからです。
実行の段階で、
予算をどのように使っているのかを、
リアルタイムで管理する必要があります。
そこを怠ると、
必ず経費予算を超過することとなり、
利益は圧迫されていきます。
状況を「視える化」し、
予定通りの利益に着地できるように
進んでいるかどうか、
常に注意を払う必要があります。
これが統制です。
そこで予定通りに着地できそうにない
と判断すれば、
そこで諦めてしまうのではなく、
予定通りの利益を獲得するために、
やれることは無いかを検討します。
工事の場合は、
そもそも一定の期間がありますので、
リカバーすることは、
必ずしも不可能ではありません。
予定通りの利益を残す
という強い執念を持って、
不足する分を補う為の
具体的な方策を打つのです。
これが調整という機能です。

このように管理サイクルを
しっかり回すことが、
利益をしっかり残すための基本
となるわけです。
そして、こうした取組みを
組織的に行うことで、
利益に対する認識や仕事への取組み方
に変化が出てきます。
故に利益を意識した風土が
出来上がるわけです。
こうした風土が出来上がれば、
より強いコスト構造を持った
企業体質が生まれ、
ひいてはコスト競争力の強い会社へと
生まれ変わることができるのです。


組織が有効に機能し、
組織の目的である相乗効果を
最大化するには、
いくつかの重要な要件を
満たさなければいけません。
その要件の中に
「縦横のコミュニケーション」
を円滑に行うというものがあります。
これはいわゆる「報連相(ホウレンソウ)」
を指すわけですが、
この「ホウレンソウ」が円滑に
行われている企業は、
それだけでも組織の相乗効果を
相当程度高めることができます。
反面、「ホウレンソウ」が
円滑に行われていない企業では、
あちこちでロスが生じている
可能性が高いといえます。
二度手間、三度手間が
あちこちで発生し、
それに関わる無駄な時間
にも当然コストがかかります。
収益を圧迫し、
働けど儲からないという悪循環
にはまることになります。
ところが、この「ホウレンソウ」
の懈怠(けたい)による機会損失には、
意外にも皆さん、
大らかというか、鈍いというか・・・。
それほど問題視されることも
少ないように感じます。
それは不良品のように、
直接目に見えるものではないために、
ロスを実感し難い
という側面があるのかもしれません。
実は、組織の目標達成に向けて
高い意識を持てなければ、
「ホウレンソウ」の懈怠による
機会損失にも、
人はそれほど敏感になれないのです。
よって、「ホウレンソウ」が
うるさく言われない会社は、
ほぼ間違いなく組織の目標達成
に向けた意識が、
それほど高くないといえます。
それでも利益が出ているうちは
まだ良いのでしょうが、
徐々に利益が出なくなり、
いよいよ赤字となって
慌てることになります。

ビジネスにおける
「ホウレンソウ」は
基本中の基本です。
この重要性が認識されていない
ということは、
組織で仕事をするということの
基本が理解できていない
ということです。
こういう企業の多くは、
一人親方がそれぞれ勝手に
営業をしているようなものですから、
1+1は2にしかなりません。
上記の通りロスも出ていますので、
2にもなっていないかもしれません。
むしろ、一人でやった方が、
一人当りの効率は高い
可能性さえあります。
これでは、組織で仕事をしている意味
がありません。
組織で仕事をしている意味が無い
となれば、
企業としては致命的な話です。
それほど深刻な問題なのです。
また、組織において
コミュニケーションを
円滑に行うためのツールは、
年々発達していきます。
多くの企業で、
「ホウレンソウ」を促進
するための道具、
例えば携帯電話やPC、
タブレット端末など、
一人が複数のツールを持つ時代
になっています。
こうした時代背景において、
「ホウレンソウ」の重要性を
理解している会社と、
そうでない会社の格差は、
これから広がることはあっても、
縮まることは決してありません。
早々に、自社の課題を明確にし、
改善に向けた活動に取組むべきでしょう。


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