賃上げ合戦の次に来るもの
大手各社の賃上げに関するニュースは
引も切らない状況です。
メガバンクをはじめ、大手自動車メーカー
でも労組要求の満額回答や
新卒初任給の大幅な引き上げ報道
がありました。
各社、優秀な人材をいかに引き留めるか、
あるいは逸早く取り込めるか、
必死の様相です。
これまで、競合との間で睨み合いながら、
人件費上昇を抑制してきたという
面もあるでしょうが、
引上げ局面でも同様に競合に
同調しないわけにはいきませんので、
収益力の低い企業にとっては
厳しい状況になるでしょう。
賃上げに見合うだけの生産性向上
が図れなければ、
ただ単に収益を低下させるだけです。
好条件で優秀な人材を集めたとしても、
その人材を有効に活用できるかどうかは、
また別の話とも言えますので、
これからが本当の意味での競争
になってくるでしょう。
持続的な賃上げを実現するには
賃金アップは、企業のコスト全体に
非常に大きな影響を及ぼします。
ちなみに
「2021年経済産業省企業活動
基本調査(2020年度実績)」
によれば、
全産業における
労働分配率(給与総額÷付加価値)
は 50.7%です。
企業が稼いだ付加価値(=営業利益+
給与総額+減価償却費+福利厚生費+
動産・不動産賃借料+租税公課)の
ほぼ半分が賃金
(福利厚生費を含めると半分以上)
ですので、賃上げの影響が
いかに大きいかは理解できると思います。
また、今年の賃上げは
来年度以降にも影響しますので、
生産性の向上を実現できなければ、
収益構造は年々悪化していく
ことになります。
企業経営は三方良し。
社員にとっても、会社にとっても、
取引先にとってもメリットのある賃上げ
にしなければ、持続的な賃上げ
の実現は難しいでしょう。
三方良しの経営
では、どういう状態となれば、
三方良しが実現できるのでしょう。
シンプルに考えてみましょう。
社員の立場で考えれば、
賃金が上がることがよいといえますので、
指標で示すなら
「一人当りの人件費(人件費÷社員数)」
が上昇することがよいといえそうです。
では、会社の立場で考えるとどうでしょう。
先の通り、収益構造を改善するには、
コストの多くを占める人件費を
適正水準に保つことが肝心ですので、
指標でいえば
「労働分配率(人件費÷付加価値)」
を引き下げることがよいといえます。
まずはこの2つの指標の改善を
両立させることです。
一方で人件費は上げたい、
その一方で人件費は下げたいという、
一見矛盾がありますが、
両方を同時に改善する方法があります。
それこそが、
労働生産性(付加価値÷社員数)
を上げるということです。
労働生産性を高めることができれば、
一人当りの人件費を増加させつつ、
労働分配率を引き下げることができます。
三方良しの経営を実現するには、
まずこの考え方が重要です。
もちろん、本当の三方良しを
実現するには、取引先を無視しては
考えられませんので、取引先に
無理な取引条件を押し付ける前に、
社内の努力(革新:イノベーション)
によって労働生産性の向上が
図れないかを検討し、
実践する必要があります。
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