31年ぶりの高水準

先頃、日本経済新聞社がまとめた
2023年の賃金動向調査では、
定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた
平均賃上げ率が3.89%であった
との報道がありました。
実に31年ぶりの高水準で、
ベアの実施率は9割に迫っているとも。
また、従業員300人未満の
中小企業の賃上げ率も3.57%と高水準であり、
集計可能な期間では最高値であったことも
併せて発表しています。
これらはあくまで平均値ですので、
実際の賃上げの状況は企業間において
それなりの差はあると思います。
企業の業績も二極化が進んでいる昨今、
物価高による賃上げ要請に
十分対応できた企業と
そうでない企業の格差は
一段と大きくなった可能性も
否定できません。

会社の何を見ているのか

働く条件は賃金水準だけではありませんので、
単に賃金の高い・低いにより
企業の魅力が決まるわけではありません。
ただ、社会の情勢に応じて、
自社がどのように対応しようとしているのか、
という点においては
社員は敏感に感じていると思います。
生活物価が上がっていることは
紛れもない事実ですので、
そうした社会情勢の中で
従来以上の賃上げがされたかどうかという点は、
賃金そのものが多いか少ないか、
ということよりも重要なポイント
であったといえそうです。
もちろん、長く続いたコロナ禍により、
収益や財務に大きな傷を負った企業も
少なくないと思います。
その中でどう対処すべきなのか、
難しい経営判断ではありますが・・・。

適正な賃金と働きがい

社員は自分が所属する会社に
何を求めるのでしょう。
もちろん生活のために働いているわけですから、
まずは自身の労働に見合った対価として、
適正な賃金を得ることでしょう(衛生要因)。
ただ、それだけでは(不満がないというだけで)
積極的な満足感には至りません。
積極的な満足を得るには、
仕事に対する達成感や責任感、
自身の成長への評価とそれに伴う昇給といった、
自己の存在価値の高まりを感じられるような
実体験(動機付け要因)が必要です。
これこそが「働きがい」と言われるものです。
ただ、こうした働きがいが生れる前提は、
ベースとして前述の
“自身の労働に見合った適正な賃金”(衛生要因)
が存在していることです。
ここが崩れると、働きがいも
生まれにくくなってしまうのです。
いかがでしょうか。
社会情勢の変化は、こうしたベースに
変化を与える可能性がありますので、
十分な注意と配慮が必要です。