カネ余りの中小企業

ある日の日経新聞に、
「日本の中小企業が現預金をため込んでいる」
という記事がありました。
その記事によれば、(調査した)中小企業の
総資産に占める現預金の割合が
2割強あるとのこと。
それは大企業(の割合)の3倍の水準
にもなるということでした。
長く続いたコロナ禍対応のための
「コロナ融資」により、
万が一に備えて過剰な資金を抱えたままの
企業が多数存在するということでしょう。
これから返済が始まってきますので、
この現預金残高も徐々に正常な水準に
戻っていくのでしょう。
企業経営は、資金を調達し、
それを運用することで収益を
上げていくものです。
その意味から、本来であれば
調達した資金は収益向上に向けて
有効に活用されなければいけません。
ここでは企業の収益力について
考えてみましょう。

経営者の通知表

企業収益を測る
代表的(伝統的)な指標といえば、
総資本対営業利益率(=ROA)です。
前述の通り、
資金を(自己資本や他人資本により)調達し、
それを運用することで収益を上げるのが
企業経営ですので、
どれだけの資本投下(総資本=総資産)で
どれだけのリターン(営業利益や経常利益)を
上げられているかが、経営の通知表
ということになります。
それゆえ経営者には、
できるだけ少ない資本投下で、
最大のリターンを得るような企業経営
が求められるのです。
その点からいえば、
何の価値も生まない現預金(ほぼゼロ金利)
が総資産の2割もあるとなると、
経営者の通知表としては厳しい点数が
付けられてしまうのかもしれません。

バランスシートを意識する

では企業の収益性を高めるには
どうすればよいでしょう。
前述の通り、
分子である利益額を大きくすると同時に、
分母である総資産を少なくすれば
収益性は向上します。
ただし、利益を大きくしようとすれば、
売上高も大きくしなければいけません。
売上高が増えると、
売掛金や在庫も増加するでしょう。
売上を上げるための設備や固定資産
も増やさなければいけないかもしれません。
要するに、放っておけば、
利益の拡大以上に総資産は
増加していくのです。
そうして拡大した資産が、
何の利益も生んでないとすると、
収益力はどんどん低下
していくことになります。
それゆえ、個々の資産が利益に
どういう貢献をしているのか、
様々な観点から常に注意深く検証しておく
必要があります。
利益を生まない資産(最たるものが現預金)
はどんどん減らし、利益を生むところに
集中的に資金を投下する
という基本方針が必要です。
現預金の残高が増えるということは、
精神衛生上は良いかもしれませんが、
企業収益の観点からは決して良いことではない
と認識しておく必要があります。