映画「マネーボール」で、ブラッド・ピットが演じるびりー・ビーン
(松井が在籍したオークランド・アスレチックスのGM)は、
実際のビリー・ビーンとはちょっと違う。

実際のビリー・ビーンは、アシスタント時代に使えたGMのサンディー・アルダーソンの影響で、
セイバーメトリクス理論を駆使して、低予算ながら強いチーム作りをしてきた人物。

だけどこの映画では、採用したアシスタントが提唱する理論に惚れこみ、
様々な抵抗勢力を押しのけて、革新的なチーム作りをする。

実際のビリー・ビーン(会ったことは無いがインタビュー記事等によると)が、
短気で感情的なところはあっても、極めて冷静な計算の上で、物事を捉えていく、
理系でクールなイメージなのに対し、ブラッド・ピット演ずるビリーは、
熱い体育会系な男になっている。

古参のスカウト達の意見を押しのけて獲得した選手が、思うように活躍しない。
チームは開幕から低迷。
監督は、ビリーが連れてきた選手を使おうともしない。
沸き起こるGM批判。

この逆風の中で、ビリーは強行手段にでる。
監督が、ビリーの提案通りに選手を使わざるを得ないようにするため、
中心選手をトレードに出してしまう。

「そんなことをして失敗したら、あなたはクビになってしまうよ。」
心配したアシスタント・マネージャーが諫めると、
「お前は自分の理論が100%正しいと思っているんじゃないのか?
本当にそう思うなら、あとは信じてやり切るしかないんだ。」

どんなに素晴らしいデーターや理論があっても、それだけじゃあ意味がない。
重要なことは、それを信じきれるかどうか、というわけだ。
ここには、計算ではなく信念に殉じようとするアナログな男がいる。

その後アスレチックスはメジャー記録となる20連勝の快進撃で、地区優勝を達成する。
オフに、ビリーはレッドソックスから、GMとしての最高年棒(5年・1250万ドル)のオファーを受けるが、
結局断ってしまう。

”二度と、金によって左右される生き方はしない”

過去の苦い経験から得た、哲学または理論(?)を、信じて貫く。

でも実は、かなり迷っていたあたり、愛すべき人物だ。