2009年08月12日

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)

概説

 マスメディアを通じて、低髄液圧 症候群(脳 脊髄液減少症)という病名が注目されていますが、低髄液圧 症候群は、「腰椎 穿刺(ようついせんし)の処置後に、硬膜(こうまく)にあいた針穴から髄液が漏れ、激しい頭痛が続くことがある」現象として知られたのは、19世紀の古きにまで遡ります。しかし、最近注目されている最大の理由は、「交通事故後、長期間経っても、頭痛、頸部痛、めまい、集中力低下などの症状が続き、治療が効果を示さない患者の少なくとも一部は、低髄液圧 症候群である」という事実に、篠永正道先生(国際医療福祉大学附属熱海病院脳神経外科教授)が2000年に気づき、「ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入、後述)という比較的簡単な処置で完治することがある」ことを世間に発表し始めたためです。
 低髄液圧 症候群は、1990年代後半には、頭部 MRI検査での特徴的な所見を中心に 症候群として集大成された感がありました。しかし、篠永先生の提唱する低髄液圧 症候群は、上述の教科書的知識から外れた多くの非典型的症例を含み、「慢性疲労 症候群」「慢性頭痛」や「線維性筋痛症」など、原因不明で難治性疾患の少なくとも一部が、低髄液圧 症候群であることを示したことから、医学界への反響が大きく、同時に反発も強い状況が生まれています。なお、髄液圧は正常であることが多いため、低髄液圧 症候群という名称は誤解を与えるおそれがあるため、「脳 脊髄液減少症」(Cerebrospinal Fluid Hypovolemia)へ名称変更されつつあります。

症状

 多彩な 不定愁訴を示しますが、中心的な症状を敢えてあげれば、[1]頭痛、[2]後頸部痛や肩こり、[3]疲れやすさ、集中力低下、記銘力低下の3つです。それ以外に多い症状は、[4]背部痛や腰痛、[5]立ちくらみ、めまい、耳鳴り、[6]上肢あるいは下肢も含む痛みやしびれ感、などです。その他、視力障害、微熱、動悸、頻尿(ひんにょう)、などを伴うことがあります。
 頭痛の特徴としては、後頭部痛が最も多いのですが、こめかみ部の痛み、頭のてっぺんの激痛など様々で、筋緊張型頭痛(緊張型頭痛参照)や片頭痛と診断される場合が多いのですが、投薬による効果に乏しく、時には、くも膜下出血のような突然の激しい頭痛で救急外来を受診する場合があります。顔面や顎の痛みを訴えることも多く、また、背部痛として肩甲骨の裏側の部位を示す場合も、低髄液圧 症候群が示唆されます。
 髄液は、腰椎部から漏出していることが多いため、横になって寝ている場合には漏れにくく、立ったり座ったりした位置では、静水圧差が生じて髄液が多く漏れるために、典型例では、朝、目が覚めたベッド上では頭痛がなく、起きあがって、洗面など身繕いをしたり、朝食を作っている間に激しい頭痛が始まります。昼過ぎ、あるいは夕方に頭痛が強まると訴えることもありますが、慢性化すると、 日内変動がなくなることも多いです。

一般的な治療法

1)安静と水分補給
 交通事故など原因の外傷が明らかな場合で、約3カ月以内の場合は安静と点滴治療で症状が改善する場合もあります。自宅でできる限り安静にして、水分(普通の水で可)を多めに摂取する、あるいは、1週間ほど入院して安静を保ち、1日に約1.5lを点滴 静注します。安静は、横に寝ていることが必要で、ソファに座っていても効果はありません。

2)ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入)
 安静と水分補給で効果がない時には、ブラッドパッチが有効です。髄液の漏れは腰椎部がほとんどのため、初回ブラッドパッチは、腰椎の上部(L1/2あるいはL2/3)で硬膜外に 穿刺し、点滴ライン から静脈血を採取し、女性では約20ml、男性では約30mlをゆっくりと注入します。腰痛が強まった場合は予定量以下でもやめます。時には頭蓋内圧が亢進して、頭痛を訴えることがあり、グリセオール200mlを約30分で点滴 静注することで対処します。血液注入後は伏臥位を30分間保ち、その後約2時間半は仰臥位で安静を保ちます。2泊3日は入院し安静を保つことが望ましく、点滴は1日約1.5lを日中に施行します。ブラッドパッチ後は約2週間自宅で安静にする必要があります。2回目以降のブラッドパッチは、胸椎下部から頸椎方向へと、次第に 穿刺部位を上げていきます。症状の改善が十分な時点で終了しますが、原則的には4回まで施行します。

3) 対症療法
 ブラッドパッチの治療開始前も後も、患者はしばしば、頭痛、めまい、体の痛みなどの 急性増悪を訴えます。症状の強い時には、どんな内服薬も効果なく、点滴だけが症状を少し改善することに役立ちます。点滴により循環血液量が増え、その結果、髄液の産生量が増えることで改善すると推定されます。

a)点滴:ラクテックなど、500ml点滴ボトルを約1~2時間で 静注します。ノイロトロピン1Aを点滴内に加えると効果的なことがありますし、吐きけの強い時はプリンペラン1Aを 静注することで他の症状も改善することがあります。

b)頭痛:軽症の場合は、慢性頭痛に準じて治療して効果を示すことがあります。その他、ソラナックス(0.4mg)2錠(1日2回)、アモキサン(10mg)1錠夕方1回、デパス(0.5mg)2~3錠、 就寝前1回なども効果を示すことがあります。重症の際は、点滴をしても効果がなく、セルシン5mgを 静注したり、 生食100mlにドルミカム10mgを加えてゆっくり点滴 静注して、鎮静させるしか方法がないこともあります。

c)めまい:メリスロン3~6錠(1日3回)が少し効果を示すことがあります。その他、ピーゼットシー(2mg)3錠(1日3回)も試す価値があります。

mastar0707 at 09:34│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!頭痛 

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