【演奏会場】
ギャラリー南製作所(東京・大田区)

【演奏曲目】
四季の四部作より春の歌:平野一郎 吉川真澄ソロ
野ばら:H.ヴェルナー
近くにいること:S.ローザ
カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲:P.マスカール
即興〜りゅうのこもりうた:平野一郎










サイドバイサイド:北爪道夫 池上英樹ソロ
即興〜星めぐりの歌:宮沢賢治
死んだ男の残したものは:武満徹
翼:武満徹

【管理人コメント】

吉川真澄さんとパーカッションの池上英樹さんとのコンサート。

歌とパーカッションとのコンサートってどうなるのかと思っていましたが、とても素晴らしいアンサンブルを楽しませて頂きました。

 最初に池上さんのパーカッションによる短い導入に続いて、吉川真澄さんが歌ったのは、平野一郎さんとの協働で生まれた「四季の四部作」からの『春』でした。プログラムを見たとき、この時期に「秋」でも「冬」でもなく、何故「春」?と思いましたが、ブリキバケツのドラムス(!)とマイネルチャイムによる導入部を聴いた途端、「あ、ナルホド」と合点がいきました。擬音演奏の多い『春』なら、至極自然にこの導入部から繋がって行くだろうと思われたからです。プログラム構成は池上英樹さんによるものとのことですが、コンサートを通してこのような流れの自然さというか納得性が貫かれており、それが打楽器と歌という一風変わったコンサートを、心から楽しめるものにしているのだろうと思いました。

プログラムには2曲ほど、「即興」と銘打たれたものがありました。「即興〜りゅうのこもりうた:平野一郎」と「即興〜星めぐりの歌:宮沢賢治」です。これは、吉川真澄さんの歌と池上英樹さんのマリンバによる伴奏を基本とし、様々な打楽器を交えて演奏されるもので、恐らくこの打楽器の部分が即興なのだと思いますが、吉川真澄さん自身も打楽器の一部を担当されるという、実にユニークなものです。正にお二人の創造性のほとばしりを感じる素晴らしいパフォーマンスでした。

 中でも「りゅうの子守唄」。これは、古くから龍神を祀る丹後半島の海辺の山を切り崩して、米軍のXバンドレーダー基地が建設されたことに対するプロテストソングと伺っていますが、パーカッションを巧みに用いて、有無を言わさぬ軍の進駐や、それに対する龍神の怒りと悲しみなどがつぶさに表現されているように思われ、今までに聞いた中で一番、その曲本来の訴えが伝わって来たように感じました。

 いつも素晴らしいコンサートをありがとうございます。

 

【演奏会場】
大東市立総合部文化センター

【演奏曲目】
平野一郎: 女声独唱の為の《四季の四部作》×弦楽四重奏の為の《二十四氣》[新作初演]

【管理人コメント】
前田剛志さん制作の七十ニ侯にまつわる七十ニの造形作品の展示と(展示の部)、それに呼応する平野一郎さんによる二作品の演奏(演奏の部)という形で開催されたイベント、『時ノ祀リ』に行って来ました。
 
演奏の部で演奏されたのは、吉川真澄さんが歌う《四季の四部作》と、このイベントのために平野一郎さんによって新たに作曲された弦楽四重奏による《二十四氣》の2曲ですが、演奏の仕方に思わぬ仕掛けがありました。《二十四氣》の演奏の最中、それぞれの季節のど真ん中で吉川真澄さんが舞台に登場し、《四季の四部作》のその季節の歌を歌うのです。
 
《四季の四部作》は、理性のたがを外した、魂の奥底からの叫びだと私には思えます。一人の歌手が、それこそ身一つで全宇宙を相手に立ちあがり歌うさまは、生まれ落ちた裸の赤ん坊が最初の肺呼吸とともにあげる、なんの作為もない産声のようでもあります。
 
一方《二十四氣》は、天文を研究するところから生まれたものですから、どちらかと言えば理性的なものと言ってよく、その意味で《四季の四部作》の対極にあるとも言えます。演奏時間が丁度1時間と「設計」されていることもそうですし、弦楽四重奏という器楽の形をとっていることも、何かartificialな感じがします。
 
この対極に位置する二つが組み合わされて一つになったとき、吉川真澄さんの《四季の四部作》には、また新しい命が吹き込まれたように思われます。この二つは、対極にありながら強く融合しあっている。それは、例えば《二十四氣》が一年の時の旅路の終盤、『冬の歌』の挿入を変節点として、冬至、小寒、大寒次の始まり(立春)に向かって進んでいく過程で、やおら混沌とした様相を示し、《四季の四部作》と世界観を共有していくかのように感じられることなどに現れています「万象のざわめき、生まれ出づる歌」、演奏会に対して与えられたこの副題が全てを物語っていると言えるでしょう。

《二十四氣》という新しい仲間を得て、この先《四季の四部作》には、どんな出会いと物語が待ち合わせているでしょうか?ロールプレイゲームの冒険物語を体験しているようなわくわく感があります。







【演奏会場】
川崎能楽堂

【演奏曲目】
平野一郎:アナベル・リー~E.A.ポーの詩に拠る物語歌(バラード)~[2018/世界初演]
平野一郎:秋の歌[2014年/吉川真澄委嘱]
ジョン・ダウランド:涙のパヴァーヌ(流れよ我が涙)
その他

《演奏》
ペトリ・クメラ(ギター)
ヤンネ・館野(ヴァイオリン)
吉川真澄(ソプラノ)


【管理人コメント】
作曲家平野一郎さんの連続企画『衢CROSSING(クロッシング)vol.3 ~異人(まろうど)の秋、呼び交す夢~』で、フィンランド出身のペトリ・クメラ(ギター)、ヤンネ・館野(ヴァイオリン)との共演。

三人のアンサンブルで初演された、平野一郎さんの「アナベル・リー~E.A.ポーの詩に拠る物語歌(バラード)~」は、文字通りポーの最後の詩とされる「アナベル・リー」がテキストとなっています。幼い男の子と女の子の悲しい恋の物語。超極ピアニッシモで語り始められ、大切な人を奪われた少年の悲しみと怒りに満ちた超極フォルテッシモを経て、愛の永遠への確信に満ちた超極ピアニッシモ静かに物語りは幕を下ろします。

in a Kingdom by the sea.../海のほとりの王国に…。繰り返されるフレーズを耳にしながら、今日のプログラウの最後を飾る曲を作ったダウランドが生きた時代、16、7世紀あたりの、ヨーロッパの田舎の風景が、何となく浮かび上がってくるような気がしました(勿論見たことはありませんが笑)。

会場は、川崎駅近くの能楽堂。私にとって、能楽堂で音楽を聴くのは初めてでしたが、普通のコンサートホールとは異なる柔らかな響きがあって、とても新鮮に感じました。あまり「耳には自信はないのですが、歌だけでなく、ギターやバイオリンの音も、いままで聞いたことのないような響きのように感じました。

秋の歌は、足踏みによるパーカッション演奏がありますが、能舞台の特性を利用して、とても良い音を出せていたと思います。後から聞いた話では、舞台が固く強く蹴らないと音が響かなかったそうで、体力的には大変だったそうです。2時から後6時からの二公演で一公演に2時間以上掛かっていましたので、休みは1時間ちょっとしかなかったはずです。本当にお疲れ様でした。


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