2014年11月

イメージ 1
(演奏会を終え、「やったぜ」ポーズの吉川真澄さんと、ピアニストの河野紘子さん、ギタリストの大萩康司さん)
 
【演奏会場】
東京オペラシティ リサイタルホール
 
【演奏曲目】
傍にいることは Salvatore Rosa
もはや私の心は感じない Giovanni Paisiello
アマリッリ Giulio Caccini
何も言わずに Gioacchino Rossini
ジプシー娘 Gaetano Donizetti
夜と夢 Franz Schubert
ます Franz Schubert
パストラーレ Igor Stravinsky
うぐいす Seiber Matyas
天国の美しい三羽の鳥 Maurice Ravel
起きて、美しい人 Seiber Matyas
四つの愛のマドリガル Joaquin Rodrigo
  何で洗いましょう/愛ゆえに死ぬ想い/愛はどこから/お母さん、ポプラの林に行ってきたよ
 
《休憩》
 
秋の歌 ~女声独唱のための~ (吉川真澄委嘱・世界初演) 平野一郎
落ち葉のとき (ギターソロ) Hebelt Vazquez
めぐり逢い 武満徹/渡辺裕紀子編
恋のかくれんぼ 武満徹/田中やよい編
さようなら 武満徹/鷹羽弘晃編
ハナウタ(散花より) 大場陽子
うみ 文部省唱歌/Momo編
りんごのひとりごと 河村光陽/夏田昌和編
シャボン玉 中山晋平/渡辺裕紀子編
風 草津信/米倉香織編
待ちぼうけ 山田耕筰/米倉香織編
 
演奏:
 吉川真澄(ソプラノ)
 佐藤紀雄(ギター)
 
イメージ 2
(打ち上げの後の集合写真。中央でVサインを出している吉川真澄さんと、その後ろに立つマエストロ佐藤紀雄さん)
 
【管理人コメント】
吉川真澄さんの、初の東京での本格リサイタルが成功裏に終わりました。
 
リサイタルは、ユーロッパ歌曲の演奏から始まりました。イタリア古典歌曲「アマリッリ」やシューベルトの「夜と夢」のような、静謐さに溢れる歌曲から、華やかなコロラトゥーラ唱法により歌われるロッシーニやドニゼッティのオペラアリアまで、クラシックの名曲の数々がギター伴奏で演奏されたのですが、初めて聞く人にはとても新鮮に感じられたようです。私は何度も聞いているので、つい当たり前のように思ってしまうのですが、もともとはオーケストラやピアノ伴奏で歌われるものにも拘らず、この違和感のなさは尋常ではありません。吉川真澄・佐藤紀雄のデュオならではのわざであると改めて思い知りました。
 
後半の最初に歌われた平野一郎さんの作曲による「秋の歌」は、「春の歌」、「夏の歌」と続いてきた吉川真澄委嘱作品の三番目の曲にあたります。私は残念ながら、「春の歌」のトライアル演奏的なものを聴いたことがあるだけで、この連作の作品を聴くのは実質的に今回が初めてなのですが、さすがは平野一郎、そして吉川真澄。素晴らしい名曲、名演でした。
 
曲の前半は、仄かに寂寥感が漂う母音唱の中に、時折野鳥や獣の鳴き声が響く、まさに秋の雰囲気に満ちた曲相なのですが、その旋律の美しいこと。そして、それを歌い上げる声の素晴らしさ。秋の空気のように、微塵の濁りもない澄み渡った歌声でした。その曲を聴きながら私がイメージしたのは、刈入れを終えた晩秋の山間の里、冬支度を急ぐ女たちの紡ぎ歌風の歌声が野辺に漏れ流れてくる、というものでした。
 
後半は一転して激しい曲相になりますが、これは村祭りのイメージでしょうか。苦しい労働から解放され、非日常的な、ちょっと狂気がかった荒々しさが表現されているようでした。しかしやがて祭りは終わり、冬に向かっていつもの静かな山里の日常が営まれていくことが示され、「秋の歌」は終わります。
 
現代曲の中には、新しい表現を求めるあまり私のような素人には理解が難しいものも数多くあります。しかし、平野作品には、難曲には違いないものの、その音楽のありように関する納得感を、私のような音楽的素養のない聴衆でも感じることができます。なぜそういう音たちなのかの必然性のようなものがあるように思うのです。それは、表現が持つ統一感と言ってもいいかもしれません。あるいは、芸術を支える「真善美」の「美」の部分がちゃんと提示され、美しい均衡が成り立っているということなのかもしれません。
 
そしてその素晴らしい作品は、やはり吉川真澄という素晴らしい演奏家を得て初めて人の心を打つものになる。もう一つ言えば、リサイタル・ホールでのコンサートという最良の場を得て初めて完成に到達したものでもあるように思います。佐藤紀雄先生に背中を押されなければ、このリサイタルはなかったかも知れない思うと、様々な縁を紡いでこの名演が生まれ、私はその場に居合わせる幸せを享受させて貰ったということになります。感謝。
 
まだまだ、大場陽子さんの「ハナウタ」の思い出など、書きたいことは沢山ありますが、長くなりすぎたので、この辺にしておきます。
 

 
イメージ 1
 
 
【演奏会場】
九段イタリア文化会館 アニェッリホール
 
【演奏曲目】
サルヴァトーレ・シャリーノ 「ヴァニタス」
   太田真希(ソプラノ)、竹本聖子(チェロ)、大須賀かおり(ピアノ)
 
ゼミソン・ダリル 「松虫」
   吉川真澄(ソプラノ)、是澤悠(オーボエ)、大須賀かおり(ピアノ)、竹本聖子(チェロ)
 
【管理人コメント】
ゼミソン・ダリル氏はカナダ人の作曲家で、Music without Bordersの活動で何度か吉川真澄さんと共演されたのを聴いていますが、日本の伝統芸術を深く研究し作品に取り込まれている方です。今回は能の演目である「松虫」を下敷きにこのモノオペラを作曲されたとのこと。
 
今回のコンサートは、ゼミソン・ダリル氏が主催するアーティスト集団、「工房 寂」が運営されたようですが、舞台設定、特に衣装が特徴的で、観客のイマジネーションを大いに掻き立ててくれました。
 
「空」と名付けられた最終楽章は、変拍子かつ変テンポの極めて難しい作品であるとの話を聞いていましたが、ゼミソン・ダリル氏の指揮を見ていると、その変拍子かつ変テンポ具合が素人目にもよく分かり、面白く鑑賞させて貰いました。演奏は迫力があってとても良かったと思います。本番にきっちり仕上げてしまうというのは、やはりプロの力は凄い。音程の幅もかなりあったように思いますが、低音から高音まで素晴らしい澄んだ歌声を聴かせてくれました。
 
冒頭の写真は、ピアノで出演された大須賀かおりさんとのツーショットです。
 
今回のコンサートのテーマは、「死」ということのようでした。能は「要するに幽霊ばなし」だというのを誰かから聞いたことがありますが、「死」と密接なつながりを持つ芸能と言えそうです。サルヴァトーレ・シャリーノの「ヴァニタス」は、これもまた「死」を扱った作品とのことですが、驚いたことに非常に日本的な、というより能楽的な雰囲気を持った音楽であると感じました。果たして作曲家が能楽から影響を受けているかどうかは知りませんが。
 
プログラムに記されていた解説は、あまり日本人の知らない、「死」や「虚しさ」に関する西洋の文化背景が語られており、とても興味深く読ませて貰いました。「ヴァニタス」なる絵画のジャンルについては初めて知りましたし(Wikipediaで調べてみてください)、「荒れ野」と「空」という言葉の持つイメージが西洋人と日本人ではすれ違っている(肯定的/否定的イメージが逆)という指摘も非常に面白い。素晴らしい演奏に加えて、新しい知識の扉を開いてくれた演奏会でした。
 

イメージ 1
 
【演奏会場】
両国 回向院本堂
 
【演奏曲目】
《歌の演奏》
まっかな秋         薩摩忠詩/小林秀雄曲
はしれちょうとっきゅう  山中恒詩/湯浅譲二曲
りすのしっぽ        柏木麻里詩/伊左治直曲(☆)
ママのそばで       インドネシア民謡/中山知子詩
夕焼け小焼け       中村雨紅詩/草川信曲
里の秋            斎藤信夫詩/海沼實曲
だれがこおりをとかすの  レオ・レオニ詩/谷川俊太郎訳/林光曲
 
お豆の物語         大場陽子詩・曲
 
小さな電車         柏木麻里詩/Momo曲(☆)
ひまわり           柏木麻里詩/Mono曲(☆)
どっちかな?        白井明大詩/鶴見幸代曲(☆)
 
(☆)は、KOHAKUの活動から生まれたオリジナル童謡
 
《詩の朗読》
うさぎ            まど・みちお詩
ちいさいかわのうた    武鹿悦子詩
花子の熊          与謝野晶子詩
 
KOHAKU
  吉川真澄(うた)
  柏木麻里(詩・朗読)
  大須賀かおり(ピアノ)
 
【管理人コメント】 
11/8と11/12に行われた回向院公演ですが、11/8に行ってきました。写真の通り、今回はユニフォームで登場です。色々事情があって暫く振りのKOHAKUコンサートでしたが、今回は定例形式ではなく、沖縄で成功をおさめたスペシャル版形式で、就学前の子供たちも受け入れてのコンサートでした。
 
KOHAKUの「名作童謡を上質な音楽で送る」、「真に聴かれるべき新作童謡の初演を行う」という活動スタイルを、その真の聴衆である就学前の子供たちの前で貫くのは、今の時代世相から見ると極めてラジカルな挑戦と言えるのではないでしょうか?彼女たちはそれだからこそこの活動に意味があると考え、大人から見ても最上質の芸術を子供たちと一緒に楽しめるはずだと信じて続けて来たということだと思います。そう考えるに至り、「もう少し歳上の子供たちをターゲットにしたらどう?」なんて浅薄なことを言ってしまった自分を恥じております。

↑このページのトップヘ