マタハラ弁護団東海

マタハラに悩む全ての女性のために、東海地方の女性弁護士が集結したのが、マタハラ弁護団東海です。 無料相談、セミナー、勉強会への講師派遣など、随時開催しています。

妊娠・出産・育休を理由にした不利益な取り扱いを「マタニティ・ハラスメント」と言い、これらは違法とされています。
マタハラ弁護団東海では、このようなマタハラのご相談を随時お受けしています。また、勉強会への講師派遣も行っております。お気軽にお問い合わせ下さい。
弁護団事務局:弁護士法人名古屋南部法律事務所
住所:名古屋市中区正木4-8-13金山フクマルビル
電話:052-682-3211
担当弁護士:岡村・田巻

 こんにちわ。マタハラ弁護団東海の渥美です。

 2023年4月9日、全国一斉地方選挙/前半がありましたね。
 その報道を見ていたら、横浜市の市会議員選挙で当選した大野トモイさんのことが上がっていました。

 大野トモイさんは、1978年生まれの女性で、2019年4月に立憲民主党の公認で横浜市会議員に当選したそうです。4年後の2023年4月の統一地方選挙では立憲民主党から再度の公認をもらうことを予定していました。
 ところが、2020年末に妊娠がわかり2021年8月25日に出産予定だったそうです。しかし大野さんは、妊娠中も議員活動を続けてきました。
 報道によると、大野さんは、切迫流産等による3度の入通院をしながら頑張ってきました。産前6週前以降にあたる7月14日以降は仕事を休むと党に伝えていたそうです。
 2021年8月に予定されていた市長選挙に向けて、他の党員と同様の活動を要求され、事実上できなかったそうです。ちなみに、その活動とは、1日200枚のビラ配り、最低3時間の駅頭活動を毎週行うことなどでした。
  同年8月に出産したものの産後の体調が思わしくなく、同年10月の衆議院選挙でも十分な活動ができなかったそうです。
 2022年4月には、県の題7区総部長から党員としての活動量が不足していることを理由に、2023年4月の選挙においては公認できないと伝えられたそうです。
 2022年5月、大野さんは、党のハラスメント対策委員会に申立を行ったところ、8月22日には再度、「党公認は見送る」との通知があったそうです。

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 その後、いろいろ経過はあったようですが、大野さんは、今年4月の選挙に無所属として立候補し、無事当選を果たしたということです。
 党のやり方に怒った支援者が頑張ったそうです。凄いことです。

 女性の妊娠出産、その後の体調の不調などにより男性と同じ議員活動ができないことは、当然のことです。にもかかわらず妊娠中及び出産後の女性に対し、厳しいノルマを課して、それが果たせなかったことを理由に「公認を拒否する」という不利益を与えることは、やはりマタハラというべきだと思います。

 日本では、女性の政治家がなかなか増えない理由の一端を知った思いでした。

 こんにちわ、マタハラ弁護団東海の渥美玲子です。

 2016年に、「逃げるは恥だが、役に立つ」というドラマが人気を博し、東京ドラマアワード賞やコンフィデンスアワード賞など多くの賞をとりました。
 このドラマの興味深いところは、35歳の独身男性(星野源)が、25歳の独身女性(新垣結衣)と契約結婚し(とは言っても法律的な婚姻ではありません)、契約妻を住み込みで家事をさせ、対価として賃金を支払うというものです。法的には雇用契約ないし労働契約ですね。そのためこのドラマでは「家事労働の対価」が大きな話題になりました。
 もちろん、このドラマは妻と称する女性に家事の対価としての賃金を支払うだけの余裕のある収入を得ている独身男性が主人公になっているので、そのような経済力のない男性には、あまり関係のあることではないでしょう。しかし、妻を専業主婦としている夫や、専業主婦として忙しい毎日を働いている妻にとっては、いろいろ考えさせることになったようです。

 ドラマの中で独身男性、つまり契約夫が対価を試算したときの台詞は次のようなものだったそうです。
「試算してみたんです。家賃、水道、光熱費等の生活費を折半した場合の収支。食事を作ってもらった場合と外食との比較。毎週家事代行スタッフを頼んだ時との比較。そしてOC法に基づいた専業主婦の家事労働時間は年間2199時間になります。それを年収に換算すると304万1000円。そこから時給を算出し、1日7時間労働と考えたときの月給がこちら。契約妻の生活費を差し引いた手取りがこちらで、健康保険や扶養手当を利用した場合の試算をしてみました。」
 この結果、月給は19万4000円ということです。

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 ところで、台詞にでてくる「OC法」とは、内閣府で無償労働の貨幣評価をおこなう際に用いる算出方法の一つで、機会費用法(Opportunity Cost method)というものです。
 この方法は「無償労働を行うことによる逸失利益で評価する方法」です。
 つまり,「家で家事をする代わりに外で働いていたら、いくら稼ぐことができるか。」という考え方に基づいています。
 しかし、「無償労働を行った者」の賃金率を使用するため、評価する基準として男女間の賃金格差などが反映し、無償労働の内容ではなく、誰が無償労働を行ったかで評価が変わりうる。賃金換算の際には「厚生労働省:賃金構造の基本統計調査の産業計(性別・年齢階層別)所定内平均賃金率を用いる」と指摘されています。
 つまり、無償労働を行った者が女性なら女性の、男性なら男性のという「性別」による賃金率が採用されることになるので、日本における男女賃金格差をそのまま採用する結果となり、その点に問題があるのです。
 ちなみに、ドラマが放映された2016年(平成28年)時点での賃金センサスをみると、35歳(学歴計)の男性の平均賃金は年収(毎月決まって支給する現金額+年間賞与額・その他特別給与額)にして542万8700円、25歳(学歴計)の女性のそれは352万9600円です。
  この計算方法は、家事労働の対価として、いかがでしょうか

 なお、「逃げ恥」では「304万1000円」という金額がでていますが、原作の漫画はもう少し前の年でした。
 2013年(平成25年)6月に公表された内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部の「家事労働等の評価について-2011年データによる再推計」では、2011年の無償労働の貨幣評価額について、「OC法では女性の場合、専業主婦の無償労働評価額がもっとも高く、1人当たり年齢平均では304,1万円。1人当たり無償労働時間は、女性の場合、専業主婦は2199時間」と記載してあるので、ドラマでは、この論文を参考にしているものと思います。

 こんにちわ、マタハラ弁護団東海の渥美玲子です。

  近年、家族における「無償労働」とか「ケア労働」という言葉が、社会的に認知されています。でも、このような言葉は、法律にはありません。
 
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  あえて似た単語を探すと、労働基準法の116条2項に「この法律は,同居の親族のみを使用する事業及び家族使用人には適用しない」と規定されています。

  同居の親族のみを使用するというのは、例えば、ある個人事業について、夫が経営者つまり事業主で、妻を使用人として事業を行う場合です。
  個人商店などで良くある場合ですね。しかし、通常、夫と妻との間には「指揮命令関係」がないので、妻が家事を担っていても、労働者とは判断できないとされています。そもそも妻は、「家事を行うこと」を業としている訳ではありません。
  まあ、昔、「結婚とは,性生活付き家政婦を雇うようなもの」と言った男性がいましたから、実態はそうかもしれませんが・・・。
  「家事使用人」というのは「家事一般に使用される労働者をいう」とされ,例えば,会社の社長の家で「家政婦」として会社が雇用するなどの場合が考えられるでしょう。

  ちなみに労働基準法6条では,「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによってよって成立する」と規定されています。なお「使用する」と言う言葉は、使用者が労働者に対して業務につき指揮命令することとされています。
 あくまでも契約ですから「退職」や「解雇」、「期間満了」などの事由によって契約を終了させることもできます。

  皆さんは、この条文をどのように考えますか。

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