不明になっているゴルフ会員権が昭子(高橋恵子)の所にあるとにらんだ
敏子(高畑淳子)は、昭子の店へと向かう。
「亭主も盗んでゴルフ会員権も盗んだと思われちゃ嫌ですからね」と
あっさり会員権を渡すかとおもいきや・・・
ぐだぐだと語り始める昭子。
 
 会員権も隆之(大和田伸也)はくれると言っていた・・
10年間の隆之の食事代を考えるとそれぐらいにはなる・・
さらに、「お気楽にのほほんと妻の座にあぐらをかいていただけの奥さんに
私と隆之さんの何がわかるっていうのよ!」
冷静に話そうとする敏子に対して、わざと危険とも言える言葉を敏子に投げ続ける昭子。

 さらに、昭子と隆之の生活を「しょせんいいとこ取り。本物の生活じゃないわ」と言った敏子に
「ニセモノよばわりされる筋合いはないわ!私と隆さんは強いつながりがあったんです!」
「あなたのこと、隆さん何て言ってたか知ってる?
古い家具みたいなもんだって・・結婚当初に買った。
時代遅れだけど取り替えるのも面倒だから、そこに置いて使ってるだけだって!」
「退職した日もまっすぐ私の所に来て言ったわ。(妻と)そのうち別れるつもりだけど、
放り出すのもかわいそうだからどうしようかな〜って!」

 確かめようにも当の本人は死んじゃってますからね〜
ああ言ってた、こう言ってた!と言い合ってもね・・
でも、退職の日、長年の妻としての労をねぎらわれ「これからもよろしく」と
言われた事を思い出した敏子。
「同じ日に別々のことを・・・」昭子
「調子いいわね・・」敏子
「ほんとに・・」昭子

 結局、昭子は何が言いたかったのか・・

 冷静だった敏子が一輪挿しを叩き付けて割った時から、
やっと敏子が同じステージに乗ったと思ったのか本音を話す昭子。
「空中に根を張る植物があるって聞いたけどちょうとそんな感じ。
若いときはそれでもよかったけど、年をとってくるとそれもはかない気がしてね」昭子
「離婚して一緒にならなかったあの人を恨んでるんですか?」敏子
「恨めたら、恨むことができたらどんなに楽か・・・」
頭を下げて帰る敏子の背に隆之の使っていた歯ブラシを投げつける昭子。
「隆さんのよ。持ってってください!」

 夫の事を愛していたが故に苦しんでいる昭子の姿。
生きている間は何とか耐えれられたけれど、
隆之が死んでみて、改めて自分の立場の不確かさを思うと、底なし沼にいるような感覚なのでしょうか・・
 愛した日々は思い出として残るけれど、それども、隆之がいなくなってみると
自分の存在や愛した日々を証明するものは何もない。
隆之と過ごした日々はまぼろし?それとも・・・
 昭子もまた、弱い一人の人間だったのです。

 自分は何も考えずに人の勧めで隆之と結婚して、
「恋という感情を抱かず」に結婚生活を静かに過ごしてきた敏子。
 そんな夫の事を愛して思い切れずに苦しんでいる女性がいる。
羨ましいような、悲しいような・・せつないような・・・

 夫がどんな人間なのかということも深く考えずに夫婦として生きてきた何十年間か・・
死んでみて、初めて関口隆之という人の本当の姿をちょっと知ったような・・
静かに生きてきた敏子にとっては嵐のような日々でしたが、
人生というものに直面した時でもあったのです。

 水面の下でゆっくりと動いていたものが、
初めて水面から顔を出して空気をすったような・・・そんなすがすがしさを感じたのではないでしょうか。

 さて、塚本(村井国夫)ですよ・・
塚本に「自分に何かあったら母さんを頼む」と言っていた隆之の言葉の意味を尋ねる敏子。
 自分が死んだ後の事を言っていたのか、それとも別れて昭子と一緒になった後のことを言っていたのか・・・
そこに塚本の妻かららしい電話が入り、平気で嘘をつく声を聞いてしまう。
「多分、関口君は両方とも欲しかったんですよ」
「塚本さんも・・ですか?」敏子
もらったネックレスを目の前ではずして去っていく敏子。

 それでも塚本に踏み込んでいくほどの情熱もないし、
なにより男というものの姿に冷めてしまっている。
自分は昭子とは違う人間なんだと改めて知る敏子。
 でも、自分っていったいどんな人間なんだろう・・・・

 病院の宮里を見舞った敏子は野田が姿をくらまし、入院保証金も払ってないことを知る。
カプセルホテルに行って聞くと、やはり野田は夜逃げしたらしい・・・
何故か、フロントの男に代わりを頼まれる敏子。
 そこに現れる野田(宇梶剛士)。
会社の鍵を戻しに来たらしい。

「野田さんって・・中途半端に律儀っていうか・・・」敏子
「そうなんです・・多分、私には人として一本欠けてるところがあるのかもしれません」野田
「私にはわからないけど・・欠けたところのない人なんていないし、
人生の巡り会わせが悪い時期っていうのもあるし・・」
「私はそんな時期ばっかりです・・
それでも生きていかなければなりません。
ずるくて弱くて情けなくても生きていかなければなりません。
だらしなくて、情けなくても生きてかなきゃなりません」
「人はいろいろ合って人生ですから・・て言ってたでしょ。
気が向いたら手紙を下さい。何年先でも何処からでもかまいませんから」
と言って、さっきカウンターに来た女の子に脅されて買わされたはがきを渡す敏子。

 生きていくって多分そんなこと。
情けなくて馬鹿馬鹿しくて、悔しかったり悲しかったり、みじめだったり・・
でも、何も知らずに生きていくよりは真実を知った今の方がずっといい。

 敏子はゴルフ会員権を売却したお金を250万円づつ息子と娘に分けることにした。
息子(山本太郎)はそのお金を元手にしてアメリカで商売をするため帰っていった。
娘(酒井美紀)は同棲していたマモル(杉本太陽)と結婚するらしい。
 やっと落ち着いた生活を始めた敏子のところへ昭子から壊した花瓶の請求書(250万)が届いてびっくり・・・してたら、昭子本人が家にやってくる。

 ついに狂ったか?と思ったら違いました。
謝って、請求書を返して欲しいと頼む昭子。
「(ゴルフ会員権を)妻だから堂々と持ち帰れるんだって思ったら、
身をよじるほど苦しくなって・・・
でも、ポストに入れた後、自分は卑しい人間だって・・夕べは一睡もできませんでした。
軽蔑してもいいですよ・・」昭子
「一つだけ確かにわかりました。
あなたは関口にホントに恋してらしたんですね・・」敏子
 隆之のお墓のある場所を教えて別れる二人。

 自分の隆之への気持ちをわかってもらえて、やっと昭子も眠れるのかもしれません。
夫には自分の知らない人生があった。でも、それもまた人生。
全ては終ったこと。
自分も自分の人生を生きていかなければならない。
 どこかで生きている野田のように・・

 いや〜面白かったですね〜!!
原作読みたくなりましたよ〜
ぬるま湯の中で生きてきた女性が、目覚めて自分の足で歩いていこうとする姿が
すがすがしかったし、何だかこちらも力が沸いて来ました。
 敏子と言う女性が少しづつ変貌していく姿が丁寧に描かれていて
こちらもじっくりと見守ることができました。
 高畑淳子さんという女優にも興味が沸いてきましたよ〜

 野田役の宇梶さんの悲惨さの中にユーモアを感じさせるたたづまいも良かった。
今度はこの野田さんを主役にしてドラマを作って欲しいですね。
NHKの土曜ドラマなんて久々に見たけどすごく充実感ありましたよ〜

 そしてオープニングのスパニッシュ・コネクションの主題曲が効果的に効いてましたね。
どろどろしてるような、哀しいような、激しいような・・・

 来週からの「迷子の大人たち」はどうしようかな〜?