最終話は日都子(坂井真紀)と娘のなつき(岩崎未来)の物語。
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 日都子はなつきを殺害していたのだった・・・
判決は「懲役三年 保護観察付き執行猶予四年」。
離婚後、夫から養育費が支払われず、生活に追われ精神的に疲れ切った末の衝動的な犯行との判断が反映された。
日都子は強く実刑を望んだが、叶えられることはなかった。


 山小屋を出た一行は頂上をめざし、急で困難な道のりを一歩一歩進んでおります。

 裁判を終えた日都子は、祖母・八重子(藤村志保)の家に身を寄せ、祖母は何も言わず受け入れてくれました。
まるで、なつきが最初からいなかったかのように。

 実刑を免れたことで罪を償う道が閉ざされた日都子は戸惑っているようでした。
祖母の家で何をするでもなく、小さい頃のように過ごしていると、すべては夢だったような気がする。

 押入れから蚊帳を出していると、日都子も、彼女の母親も使っていたという手押し車が出てきました。
なつきも使っていたはず。

 夜中・・・眠れない日都子は八重子に話しかけました。
「お母さん・・・今、どこにいるのかな・・」
「どうだろうね・・・・・」
「地獄にいるのかな・・・地獄って・・怖い?」
「ほうだな・・・ありゃあ・・生きてんのか、死んでしまったのか・・・」
「私も行きたいな・・・」

 幼い頃、自分を捨てて行った母・・・
呼びかけても呼びかけても振り返ることのなかった母・・・
残された真っ赤な風車。
そこにどんな思いがあったのか・・・果たして思いはあったのか・・
あの母と同じように、自分もなつきの存在を消してしまった。
でも、母の気持ちも自分の気持ちもわからない・・・・
かなたの子 (文春文庫)

 殺人は決して許されることじゃない。
母親が身勝手な理由で子供を虐待したり殺す事件が後を絶たないけど、そんな親ならいらない。
勝手に一人で死ねばいい。
里子に出すなり、児童相談所に連れていくなり、人間の心があるうちに縁を切ってくれと思う。

 でも、決して娘を殺したくないのに、愛したいのに、負の方向へ引っ張られる自分を感じながらも、
抵抗する気力を失くしていく日都子の心理は理解できました。

 仕事のかけもちで朝暗いうちから夜遅くまで仕事。
保育所に迎えに行く頃には心身ともに疲れ切っていて、なつきの言葉を聞く余裕はない。
頼れる友人も、助けてくれる母親もいない。
娘と自分だけの世界。
娘との生活を守るために働いているのに、その状況が自分と娘を追い詰めていく。
母親に甘えたい、自分を見て欲しいという娘の願いは叶えられることがなく不満が溜まっていく。
わがままという方法でしか思いを伝えられない娘に疲れ切った母親は苛立つのみ。
なつきがいるだけで、日都子は捨てられた自分、愛されなかった自分を思い出し、苦しくなってしまう。


 でも、日都子は、ちゃんとなつきを愛せていたと思うよ。
愛し方がわからないという思いは常にあったかもしれないけど、彼女の母親としてわきあがる思いは伝わってきたもの。

 子供の頃、古びた寺で見た、生にしがみつくように死んでいったミイラの姿が忘れられない。
「おばあちゃん・・あのお寺にあのミイラ、まだいるのかな?」
「あの寺には、もう誰も居ない。
どこかの土の中に埋めたって話は聞いたがね・・・
それでいいんだ・・・どうせ罪からは逃げられねぇ・・・」
「・・・・・・・・」

 あのミイラは自分の罪と向き合うことができたんだろうか・・・
そして、あの苦しげな表情が穏やかになったんだろうか・・・

 日都子が風呂に入っているとバスタオルを持ってきた祖母が怯えるようにつぶやいた。
「おめぇ・・・・母親に似てきたな・・」
「・・・・・・・ばあちゃん・・・・?」
「あれ・・・けえって来てくれたと思った・・・」

 八重子も日都子の母親が出て行ったことで自分を責め続けていたんだね。
「罪からは逃げられねぇ」・・・それは自分自身への言葉。

 ある日、保育所に行く前になつきが「この服イヤ」とゴネ始めた。
仕事に遅れる連絡をした後、なつきに服を渡したけど、どの服も拒否。
キレて大声で怒鳴った日都子は部屋を飛び出したけど、どこにも行くことはできない。
仕事に行く時間は迫っているし、そのためにはなつきを保育所に預けなければならない。

 扉の前で部屋に入れずに泣いている日都子は、母親に置いて行かれたあの日のようでした。
あれから、何度も母親に助けを求めたけど、母親の手が差し伸べられることはなかった。
「ママのこと好きなら、もう、こんなことしないで!」
なつきを力一杯抱きしめるけど、涙が止まらない。
本当は抱きしめて欲しいのは自分・・・


「ばあちゃん・・・私、ここにまた住んじゃだめかな」日都子
「ダメだ」八重子
「・・・・・・・・」

 翌日の夜、手押し車を焼いている日都子に祖母は言いました。
「おめぇの母親の話をちゃんとすれば良かったな」

 日都子が産まれる前、母親は妊娠したけど流産してしまった。
母親は産まれてこなかった子に名前を付け、その子を思い続けた。
それは日都子が産まれてからも変わらなかった。

「お母さん・・・誰もいないのにいつも一人で楽しそうに喋ってて・・うっすら憶えてる」日都子
「そんな事しちゃいけねぇって咎めて、あれを追い詰めちまった。
あれが出て行ったのは・・・みんなばあちゃんのせいだ。
全部ばあちゃんが悪い。恨まないでやってくれ・・・」八重子
「ばあちゃん・・・明日東京に帰る」
「ばあちゃん、一緒にいるとおめぇを許してしまう」

 日都子を許すことは自分を許すことに繋がってしまう。
娘を追い詰め日都子を一人にしてしまったこと、その日都子がなつきを殺してしまったこと。
その罪は決して許されてはならない。

  疲れ切った日都子の精神は極限状態にきていた。
保育所の壁に貼られた日都子となつきと別れた父親とが手を繋いでいる絵を見た時、日都子は涙が止まらなかった。
なつきにすまないと思い、なつきに責められていると感じ、そんな自分をさらに責めた。
休日に眠らせてくれないなつきにイラだった日都子は泣きながらつぶやいていた。
「ママ、何もしてあげられないね・・ママといても幸せになれないね・・
でもね・・・ママだって愛してたよ・・・」

 気が付いたら、隣で息をしていないなつきが倒れていた。
日都子はなつきを抱え、必死で医者の元に走った・・・


 母親から愛されなかった自分・・・
我が子を愛せなかった自分・・・
せっかく産まれてきたのに、母親から愛されず殺されてしまったなつき・・
母の、そして自分の、なつきの人生とは何だったのか・・・

 雨の中で庭を見つめていた日都子は、青い花が一輪咲いているのを見つけました。
それは、去年、なつきと一緒に花が咲くのを楽しみにしていたものでした。
この花を見せてあげる事ができなかった。

 いつのまにか雨はやんでいた。
「おばあちゃん・・・私、なつきを殺しました」日都子
「・・・・・・・そうか・・・・」八重子

「そういう言い方しないでよ。
ちゃんと叱ってよ!
私が悪いの?!そんなのわかってる!
でも、私が泣いたって帰って来なかったお母さんが悪いのよ!!
ごめんなさい・・おばあちゃん・・・私、お母さんに愛されることばかり考えてた・・・
全部私が悪いんです・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!
なつき・・・苦しんでた。
それでも私、首を絞め続けたんだよ・・・
どっかで止めてくれるってなつきは思ってたはず・・
苦しくても、私が手を離すのを信じてたんだよ・・・・
あばああちゃーーーん!許して下さい!!
私は・・・ちゃんとなつきを愛したかった!
もっともっと愛したかった!

でも、なつきを抱きしめていると、私も抱きしめられたいと思うの!
私の体から産まれてこなければ良かった!」


「やめろ!」八重子
「なつきに会いたい・・・なつきと会いたい!
なつきと話したい!なつきに会いたい!
でも会ったら怒られる・・どうしたらいいの?
なつきの口から聞きたい・・・そして死にたい!
話がしたいよっ!話がしたい!
なつきともう一度話がしたい!話がしたい!」

「は・・・話す?・・・
死んで楽になれるなら、ばあちゃんが殺してやるから・・・
それまでは生きろ!!
八重子が力一杯抱きしめてくれました。

 子はどんな親だろうと愛を求め続ける。
無視されても無視されても、いつか振り返ってもらえるという希望を捨てることができない。
愛されない子供は自分を責め、自分の生を呪ってしまう。
長い道のり、犠牲は大きすぎたけど、日都子はやっと生きていく許しをもらえた。

 頂上が近づいてきて・・・
日都子はなつきと話すことができました。
「なつき、いたね・・・」
「そうだよ」
「やっと会えたね」
「何度も会ってるよ。何度も、何度も」
「なつきは泣いてない?」
「時々は泣くけど。でも、泣きやむよ。ママは泣いてない?」
「いっぱい泣いた」
「大きいのに小さいみたいに言うね」
「そうだね。泣いてたらいけないね」
「ここはすごく広いよ。どこへでも行ける。でも新しい場所に行くよ」

「ねぇ・・ママとなつきは、何のために出会ったの?」
「そう願ったからだよ」
「でも、出会っちゃいけなかった・・・」
「それでもまた、出会うよ」

 日都子はなつきのために花火を出しました。
「おばあちゃんのだね」なつき
「そうだよ。おばあちゃんがなつきと会える場所を教えてくれたんだよ」日都子
「おばあちゃんとはよく話してる。
ママのお母さんのこともたくさん話してくれる」

 花火は短い間、闇の中で輝いた後、静かに消えていきました。
人の一生もそんなものかもしれない。
かなたからその相手を求め、産まれ、出会い、死んでいく。
そんな中で、輝きを見つめ合った一瞬があればいいのかもしれない。
残された者は、その罪と共に生き続ける。
そして、いつか自分もかなたへと還っていく。
御来光を待ちながら、それぞれが自分の罪と生を見つめていました。

 複雑で、わからない部分も多いドラマでした。
それでも、罪を犯さずにはいられない人間、その罪と共に生きていく人間への希望を感じるラストだったと思います。
役者さんたちのすばらしい演技力が心の中に重たくて大きなものを残していってくれたように思います。
その形は、まだはっきりとはわからないけど生き続けていればいつか見えるのかもしれない。
静かに突き刺さる言葉を残してくれた高橋泉さんの脚本、
その世界観をしっかり支えてくれた「MONO」さんの曲。
とにかく心に残るドラマでした。

 第一話 巡る
 第二話 道理
 第三話 同窓会

温泉
「リーガルハイ」の最終回の記事で間違って書いちゃったけど、これが今年最後の連ドラの記事だったわ(´∀`;)
今年もあと1週間か?
振り返りたいような、振り返りたくないような・・・