前情報を入れずに見てみました。おもしろかったわ〜見て良かった。
原作も買ってきちゃった〜\( ̄▽ ̄)/ これから読むぞ。
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 健史(妻夫木聡)とその一家が亡くなった大叔母・タキばあちゃん(倍賞千恵子)を見送り、遺品整理をする場面から始まります。
健史に残された箱には写真と封を開けてない手紙、何冊かの大学ノートが入っていた。

 それは健史に勧められ、タキが書いていた自叙伝だった。
健史はタキばあちゃんの家に来るたびにごちそうになり、ばあちゃんの書いた自叙伝を読ませてもらうのを楽しみにしていた。
健史がその自叙伝を読み進めている時間と、ノートに書かれている過去の時間が織り成されるように描かれます。

 
 18才の布宮タキ(黒木華)は親戚のつてで女中奉公のために山形から東京へと出てきた。
1年ほど小説家先生のお宅で仕えた後、東京郊外の平井家で奉公することになった。
平井家は玩具会社に勤める旦那様(平井雅樹(片岡孝太郎))と時子奥様(松たか子)と恭一ぼっちゃま(秋山聡)の三人暮らしだった。
タキには2階奥の女中部屋が与えられた。

 昭和10年に建ったという坂の上にある赤い瓦屋根のモダンでかわいらしいお家・・・タキはこの家が大好きだった。
美しく優しい時子奥様はきさくなお方でいろんな事を教えて、かわいがってくれた。
タキはこの家で旦那様や奥様に仕え、ぼっちゃんのお世話をできることが嬉しかった。

 恭一(秋山聡)が小児麻痺になった時も毎日おんぶして遠く離れた日本橋までマッサージに通った。
半年ほど治療院に通ったのち、マッサージはタキの仕事となった。

 黒木華さんのことは、朝ドラの『純と愛』で初めて知りました。
日本人らしい涼やかで穏やかな顔の子だな〜と思いながら見ていました。
その後「リーガルハイ」でおもしろい個性だな〜と注目し現在に至る・・( ̄▽ ̄;)アハハ…
繊細な演技力というか、セリフがない時にも注目してしまう女優さんですわ〜

 タキの様子を「仕える」と書きましたが、平井家にいるタキは主従関係を感じさせないほど自然でした。
それは時子の人柄と二人の相性もあると思うけど、タキの働き方がでしゃばらず屈従を感じさせずほどよい距離感の気持ちいい仕事ぶりだったから。
気が利くことを感じさせない頭のよさと身軽さ・・・黒木華さんは主役でありながらも映画全体の中でもしっとりとバランスよく存在していました。

 そして時子を演じた松たか子さんもぴったりだった。
「み〜んな好きになっちゃうの。あの人のこと。時子さんの結婚が決まった時自殺しかけた人もいるの。嫌だったの。あの人が結婚するのが。独占したかったの」と同級生の睦子(中嶋朋子)に語らせたように無邪気な人たらし的雰囲気があり、花のように惹きつけられる。立居振舞も凛として美しかった。


 ここからはラストの内容も書きますのでご注意を。
小さいおうち Blu-ray
 お正月、平井家に旦那様の会社の社長と社員が集まり、その中にデザイン部門の新入社員で美術学校出の板倉正治(吉岡秀隆)がいた。
社長達が戦争の話で盛り上がる中を抜けてきた板倉はどこか学生臭さの残るような親しみやすい青年だった。
同じ北国出身ということもありタキもすぐに打ち解け、時子とは映画の話で盛り上がった。
絵本を読んであげた恭一とはその後、年の離れた面倒見のいい兄と弟のような関係になった。

 で、レコードを聴きに平井家に通っているうちに時子様と板倉は心を通わせるようになり、社長から勧められた板倉への見合い話を中継ぎしている間に、ついに男女の関係になってしまう。

 出会い、コンサート会場での再会、嵐の夜、嫉妬を隠しながらの見合い話のお世話・・・
この流れが時子の女心を微妙に刺激して、一線を越えるまでの感情の盛り上がり方が自然でうまかったと思います。


 タキがそのことに気づいたのは時子が結んでいた帯の模様が出かけた時と逆になっていたから。
そういうのにちゃんと気づくのがタキなんだよね。
でも大きな衝撃を受けながらも、タキはいつも通りに仕事を続けた。

 でもな〜吉岡秀隆って全くそそられないんですけど〜( ̄▽ ̄;)アハハ…
一般的な会社勤めの人とは違った雰囲気は出てたけど、男は感じないぞ。
好みの問題だけどさ。
だから嵐の夜に時子から積極的にキスした場面にはびっくりしたよ。
美人さんにありがちなよく働いてくれた下僕へのお礼的な?とか思ったりしたけど、その後の展開見ると違ったもんね〜

 旦那さんは普通の男性で繊細な気づかいのできるタイプではなかったけど、この時代の奥様が急激に惹かれていくんだからさ〜せめて斎藤工レベルには整えて欲しかったわぁ〜


 まぁ、いい。
タキが平井家に居た8年ほどの間、日本は二・二六事件、支那事変、南京陥落、国家総動員法制定、第二次世界大戦と、ずっと戦争中であり軍国色が濃くなっていった時代。でも平井家では特に憂いもなく過ごしている。

 鉄不足になり旦那様が会社の先行きを心配したり不景気を嘆いたりするけど、時子もタキもそれほどの不便もなく暮らしていたように見える。南京陥落の折には大いに喜び祝賀セールを楽しみにし、出征する兵士には日の丸の旗を振り万歳しながら見送ることに何の疑問も感じない。

 健史に度々突っ込みを入れられる通り、タキによって描写された「その時代」はそれほどの深刻さも暗さもない。
それは平井家が中の上的な裕福な位置にあり生活の不安がなかったことと、
タキがその時代を美化している部分もあると思うけど、本当にそんなものだったのだと思う。
新聞には日本が戦況有利だと言う記事しか載っていない。何となく大きな時代の渦の中にいる不安は感じながらも、時流にそった生き方をすることに抵抗もない。

 私もノンポリの平凡な人間だからわかるけど、時子もタキもそういう普通の人間だったんだと思う。
だからこそ全てが過ぎ去った後になって、何も考えずに流されていた自分に怒りと後悔を感じる・・・
タキ達が戦争の理不尽さを初めて感じるのは、自分達にとって大切な人、板倉に赤紙が届いた時。

 平井家で報告をすませ帰宅しようとする板倉へ懐中電灯を渡しに行ったタキに
板倉は感謝と共に手を差し出した。

「忘れないよ。君の事は。
もし・・・僕が死ぬとしたら、タキちゃんと奥さんを守るためだからね」板倉
「ダメです!死んじゃいけません!」タキ
「・・・・・・さよなら」
タキを抱きしめた後、板倉は去って行った。

 板倉はタキのことも好きだったのかなぁ・・・時子への激しい感情とは違うだろうけど。
抱きしめたのは時子の代わりだったのか、それともタキの思いを知っていたのか・・・


 出発の前日、時子は最後の逢瀬のため板倉の元へ行こうとするがタキは必死に止める。
実は時子の叔母が二人で会っているところを目撃しており親戚間でちょっとした問題になっていたし、出入りの酒屋のおじさんも2人の関係を知っていた。

 タキは会いたい旨を書いてくれたら自分が板倉に届けると訴え、奥様も迷った末に受け入れた。
その後、タキは時子の書いた手紙を手に板倉の元へ向かったが、いくら待っても奥様の前に板倉は現れなかった。

 この場面を書きながらタキばあちゃんは嗚咽をもらしていた。涙が止まらなかった。
「おばあちゃん、どうしたの?何で泣いてるの?」健史
「私ね・・・・長く生きすぎたの・・・・(泣」タキ

 深い後悔、罪の意識・・・
そしてあの小さな赤い屋根のおうちからずいぶん遠くに離れてしまったこと・・・
みんなが一緒だったあのおうちにはもう戻れない。
全てが遠い過去になってしまったことが悲しくてたまらない・・・


 その後戦況は厳しくなり、女中を置くと言う贅沢も許されなくなり、タキは平井家を出て田舎に戻ることになった。戦争が終わり、タキがお嫁に行っていなかったら戻って来てねと送ってくれたが、タキが時子に会う事はなかった。

 昭和20年の大空襲で小さなおうちは爆撃により焼失。
奥様と旦那様はお庭の防空壕の中で抱き合った姿で亡くなっていたらしい。

 タキばあちゃんの自叙伝はここで終っており、ここからは、その後偶然板倉が出征後も生きて画家として活躍したことを知った健史が書かれなかったことを調べ始めるミステリの謎解き的展開になります。

 板倉正治記念館には彼が戦後に描いて寝室に飾っていたという「思い出の小さいおうち」という絵があった。
赤い瓦屋根のちいさなかわいいおうちの前には時子とタキと思える女性が立っていました。
友人の下宿が近くにあって以前から小さいおうちを見てきた板倉にとっては、そこに住む奥様は憧れの人、そしてその家と時子に仕えるタキも特別な存在だった。

 そしてタキばあちゃんの部屋にも板倉が描いたと思われる「小さなおうち」の絵が飾ってあった。
ということは、タキは板倉が生きていたことは知っていたはず。
この絵は再会した彼にもらったのか、自分で買ったのかはわからないけど、タキにとっても幸せな時間の象徴である大切なものだった。たとえ痛みを伴うとしても。
板倉とタキはあのおうちを思う事で繋がっていたのかねぇ・・・

 タキが板倉に手紙を渡さなかったのは、最初、板倉を好きなタキの嫉妬故と思ったんだけど、あの時の奥様を止める時の必死な姿からはそんな邪心は全く伝わってこなかった。
タキは本当に奥様とあの小さなおうちが大好きだったんだと思う。
渡せなかった手紙の罪と秘密にタキはずっと苦しみ続けた。
でも、その苦しみは甘美な夢へと続いている。
もう決して手の届かない小さなおうちの夢・・・

 せつな悲しいけど幸せな気持ちになれる映画でした。
音楽も「ハウルの動く城」みたいで心揺さぶられるわ〜と思ったら
久石譲さんだった・・( ̄∇ ̄;)
いい曲だにゃ〜しっとりと映画の余韻に包まれました。


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てか、健史よ、タキばあちゃんの自叙伝の流れから、アレが渡されなかった時子奥様の手紙だぐらいわかるだろうよ!
あの年になって母親の不倫を知らされる平井氏の気持ちを考えんかい!
やっちまったにもほどがあるぞ・・ ゞ( ̄∇ ̄;)