いや〜おもしろかった。最初から書いていればよかったよ。
単なるおどろどろしい怪談かと思って見始めたんだけど、毎回少しづつテイストの違うおそろし話を題材に人間の中に潜む恐ろしさと切なさを見せてくれたドラマでした。

 そして薄い壁で繋がっているあの世とこの世の不思議を描きつつ、今を生きている人間だけでなく、生を終えた人間達への愛おしさも伝わってきた。
人間というのは恐ろしいけど、哀しくも美しい存在なのだなぁ・・そしておもしろい。
毎回、あやかしの世界にぐいぐいと引き込まれる心地よさと、すっきり気持ちのよい噺を聞かせてもらっている満足感がありました。

 あの謎の男も言っていたように、まだまだ噺は続くようです。
原作も三巻まで出ているみたいだし、シーズン2も楽しみにしていますョ〜
HPはこちら


 兄・喜一(石垣佑磨)が三島屋を訪ねました。
おちか(波瑠)は久々の再会にほっとしながらも、何か異変を感じておりました。

 兄を見るとどうしても丸千でのできごとを痛みと共に思いだしてしまう。
松太郎(満島真之介)がいいなずけの良助(松田悟志)を惨殺したこと。
「許さねぇ。俺のこと忘れたら許さねぇ」という言葉を残し海に身を投げたこと・・・

 あの事件から半月後、喜一の元には松太郎の幽霊が姿を現していた。
でも恨みからではなく、突然生を終えたため、どこへ行けばいいかわからず彷徨っていたらしい。
松太郎は「しきりと呼ばれている。そこへ行けばいいらしいから行ってきます」と言って消えた。
もしやおちかの所へ行ったんじゃと心配になり江戸までやってきたのさ。

 松太郎が「呼ばれている」と喜一に伝えた時期はおちかが松田屋藤兵衛((豊原功補)から曼珠沙華の話を聞いた時期だった。
何か繋がりがあるのだろうか・・・

 喜一は百物語なんてすることで、魔を呼び寄せてしまうことを心配していましたが、
辛い記憶に苦しんでいたおちかにとっては良かったようです。
黒白の間でおそろし話を聞くことで自分が怖がっているものの正体が見えてきたし、
恐ろしいことに蓋をするのではなく意識的に思い出すことで起きたことをしっかり見つめられるようになったそうな。

 心に張り付いたどすぐろい思い・・
その黒さに怯えているうちに足場を失い、いつしか引きずられていってしまう怖さ。
伊兵衛(佐野史郎)はそのことをわかっていたのか。
百物語を聞くことでおちかは自然と自分の闇と向き合う準備ができていたんだね。
伊兵衛さん、てぇしたお方だよ。


おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)あんじゅう 三島屋変調百物語事続 (角川文庫)泣き童子 三島屋変調百物語参之続
 その頃、越後屋では座敷牢で生人形のように暮らしているおたか(小島聖)が家鳴りと共につぶやいていた。
「蔵が開いた・・・
ねぇ・・・お屋敷にお客様が来たの。嬉しいわぁ〜」
「そのお客様はどなたですか?」清太郎(川口覚)
「松太郎と言う人よ。
三島屋のお嬢さんが知っている。
松太郎さんは三島屋のおちかさんに会いたがっているわ。おちかさんもここに来ればいいのに。
いいえ、おちかさんはきっと来るわ。松太郎さんに会いに。来ない訳がないもの」

 清太郎はすぐに三島屋に走りました。
話を聞いたおちか、喜一、伊兵衛、お民(かとうかず子)はびっくりさ。
何で松太郎とおたかさんが繋がるのか・・・

「安藤坂のお屋敷が人の魂を求めているからよ。
そうして私がおたかさんを知ったから。みんな繋がっているの。
あのお屋敷はそういう場所なのよ」おちか

 ずっと謎の男がうろうろしていたけど、ここで「第二夜」の安藤坂の家に繋がるとは・・・
清六さん(螢雪次朗)に助けられ普通に生活していたおたかだったけど、ずっと自分の中にその魔を巣くわせていた。闇の世界は繋がっているんだね。


 伊兵衛に命じられ、おちかは清太郎に松太郎のことを話しました。
おちかにもう怯えはない。あるがままを受け止め、さらにその先に行こうとしている。

 喜一を伴い、おちかはおたかのいる座敷牢へ向かいました。
両親が自分のために誂えてくれ、喜一が守るように持ってきてくれた雪持ち南天の帯をしめて。

 おちかがおたかの手を握り「ちかです。安藤坂のお屋敷に似合いのちかが参りました。
どうぞお出迎えくださいまし」と言うと、家鳴りがし、おたかの目の中にいる幼いおたかと松太郎に呼ばれるようにおちかは消えた。

 おちかはあの屋敷の庭に来ていました。
幼いおたかはきれいな着物を見せておちかを誘いましたが、急に怖い顔になりましたぞ。
「あんた、一人で来なかったね。ずるい!」

 おたかが消えると蔵の中に松太郎の姿が・・・
追おうとしたおちかを引っ張り戻したのは曼珠沙華の中にいる藤兵衛(第一夜「曼珠沙華」)でした。
「この曼珠沙華の中に隠れていれば大丈夫。
ここは屋敷とは別の世界。屋敷もあなたを見つけられますまい」

 もはやこの世のものではなくなった藤兵衛でしたがおちかを守るために付いてきたのでした。
そばにはお彩(中村ゆり)と市太郎(井出卓也)(第四夜「魔鏡」)も・・・

「どうして・・・どうしてここに?」おちか
「お嬢さんが聞いてくださったからですよ」藤兵衛
「私達の・・・胸の痛みを」お彩
「生きていた時の過ちの後悔を」市太郎
「聞いて・・わかってくださった」藤兵衛
「心のうちで涙を流して下さった」お彩
「そんなひどい出来事は人ごとだと、愚かで忌まわしいことだと顔を背けたりせず」市太郎
「我がことのように悼んでくださった」お彩
「私どもの罪はお嬢さんの魂の一部になり、涙で清められました。
おちかさんのおかげで解き放たれたのです」藤兵衛

 これは非常に腑に落ちる話というか・・・
この世のものでなくなったとしても思いは残り、その思いに引きずられ亡者は苦しむ。
きれいな器を持っているおちかが受け止め、共に悲しみ涙を流してくれたことで亡者は救われ、黒い思いから解き放たれた。

 人の魂を癒すのはいつでも人の思いなんだね。
亡者だろうと生きたもんだろうと、それは同じ。
そして悲しみを自分のものとして受け止め涙を流すことでおちか自身の黒い闇も一枚一枚と剥がれ落ちて行った。


 おちかの心そのままのような芯のある清らかな美しさを見せてくれた波瑠さんがすばらしかった。
痛みと共に生きていく強さを感じさせる横顔が忘れられません。


「ここは冥土の入口なんでしょうか・・・私は死んだんでしょうか」おちか
「いいえ。おちかさんは生きておりますよ」藤兵衛
「だからおちかさんをお助けしたいのです」市太郎
「おちかさんを苦しめているものが、呼ばれてここに来ております」お彩
「松太郎さんのことですね。松太郎さんは悪くありません」おちか
「でも・・・松太郎さんのしたことがお嬢さんを苦しめている。
思いは別でも、しでかしてしまったことは消しようがありません。
お嬢さんを苦しめたことで、松太郎さんもまた苦しみ、迷っている。
屋敷はそういう魂を欲している。ならば松太郎さんも放ってはおけません」藤兵衛
「松太郎さんも一緒に助けられるのでしょうか」おちか
「皆でここを出て、屋敷をからにしましょう」藤兵衛

 おちかは魔鏡に閉じ込められていたお吉(梅舟惟永)を迎えに行くためにあの家に戻りました。
傍には奉公人の宗助(久保酎吉)が付き添っております。

 なんかね、幽霊っていうと悪いもんばかりと思っていたけど、そうではないんだね。
そりゃ宗助だって旦那様に殺されちゃったんだから無念の思いもあるだろうけど、それよりも忠義のこころの方が強かった。その思いは亡者になっても変わらない。

 おちかが宗助の思いとお吉の苦しみを受け止め、二人の魂も救われました。
その後の曼珠沙華の花の中で再会した清六と辰二郎一家の場面は不可思議でありながらおかしみもあり、落語のようにとぼけた味わいがありました。


 屋敷の魔にとりこまれてしまった辰二郎一家は次々と命を落とし(「シャイニング」系か?)幼いおたかは一家を守ろうとしたけど果たせなかった。
清六の命と引き換えに生き延びることはできたけど、こころを持っていかれてしまった。

「なんてひどい事を・・」おちか
「ひどいことでございます」藤兵衛
「非道でずるい事です!」
「この屋敷の主はそういうものなのです」
「おたかちゃんはみんなに別れも言えてないんです。
それから・・・松太郎さんも連れ出さなくちゃ。
この屋敷を打ち負かさないといけません。でも、どうやって・・・」
「お嬢さんはもうご存知のはずだ。何も難しいことはない。
お嬢さんが私どもにしてくださったことを、今度はこの屋敷の主にしてやりなさい」
「松田屋さん、私行ってきます。もう惑わされることはありません」

 ついにおちかと蔵の中にいる主の対決の時がきました。
おちかは礼を尽くし、主に不可思議話を聞かせてもらうよう頼みました。
松太郎の姿を借りた主はおちかの中にある恨みと憎しみを引き出そうとしたけれど、おちかの中にそんなものはなかった。

 主の抜けた松太郎にやっとおちかは謝ることができました。
「俺は良介さんに手をかけた。お嬢さんの恋しい人を殺めた・・なのにお嬢さんが謝るって」松太郎
「あなたがあんなに思いつめてしまったのは私のせいです。
私のおごり・・・あさましさ・・・
私だけじゃない。兄もあなたに謝りたいって」おちか
「・・・・ああっ・・・・お嬢さん・・・・(涙」

 奥にあった櫃が揺れ、突然悪態をついた松太郎はおちかの首を締めましたぞ。
幼いおたかが必死で止めたおかげで松太郎を正気に戻すことができたさ。
初めて松太郎は生い立ちについて話しました。

 松太郎を崖から落としたのは父親だった。
でも、その事を言ったらおちかの両親や丸千のみんなにも見捨てられるように思えて言えなかった。

「親に捨てられるような子をひと様が大事にしてくれるはずがない。だから言えなかった。
それが俺のひがみになった。怯えになった。
でも・・・丸千の皆さんははぐれ者の俺にいつも優しくしてくれた・・・
なのにどうして、あんな事をしでかしたのか・・・
あの時・・・・あの刹那・・・俺は人でなしになってしまった」
「松太郎さんは私達の家族でした。
松太郎さんが丸千に来てくれて、私は本当に嬉しかった」
「・・・・・・お嬢さん・・」

 父親に捨てられたしまったことが松太郎の心に深い陰りを生んだ。
その陰は消そうとしても消せなかった。それが悪い方に転がってしまった。
丸千のみんなも松太郎も、お互いに道を間違ってしまったんだよね。
でも、今怒りと憎しみ・後悔を越えて二人は共にいる。


 その結末に怒った主が櫃の中で暴れ出しました。
蔵の扉は閉まり、錠がかかってしまいました。

 って、開けてみたら櫃の中には何も入っていなかった。
「こんな・・・・空っぽのものがあなたの正体なのでございますか?
これがあなたのお話ですか・・・?」おちか

 すると櫃の底は真っ暗な闇となりおちかを誘いました。
「私がここに入れば・・・あなたは満足なのね。
そして私も苦しみから逃れられるのね・・・」おちか
「お嬢さん、だめだ!入ったらもう出られない」松太郎

  ε=( ̄。 ̄;)フゥ. 危ない危ない・・・魂持ってかれるところだったョ。

忘れられることが悲しいのでしょう?
忘れられていくことが悔しいのですね?私達は忘れません!
」おちか
「お嬢さん・・・」松太郎
おちかは櫃の底に向かって言いました。

「すべては遠い昔のこと。悲しみ、苦しみ、恨みと怒り。
それはすべて時を越えて残ります。
あなたもここから出たいのですよね?
私と一緒に外に出ましょう!」


 その時、清六と辰二郎が蔵の錠をはずし扉が開きました。
「お嬢さん、そのまま振り返らずにおいでなさい」藤兵衛
「はい」おちか
「さあ、あなたも参りましょう。私らと一緒に」藤兵衛
「・・・・(うなづく)」松太郎

 松太郎とみんなはおたかをおちかに託すとあの世に旅立って行きました。
やっとおたかは家族に別れを告げることができた。
繋がってはいるけどはっきりとラインが引かれているあの世とこの世・・・
切ないのう・・・

 曼珠沙華は消え、そこにあの謎の男(村上淳)が現れました。
「いよいよ、ここの空になりますか・・・
それともあなた様がお残りになるか」
「あなたは何者です?」おちか
「私は商人。あなたの叔父さんと同じです。
私が仕入れて売るものを欲しがる人達に与える。
二つの道を繋ぐ道筋でお客様を相手をしている。三島屋さんと同じです」
「二つの場所・・・あの世とこの世」
「あんたのような人がいるおかげで、私の商いも成り立つんです。
けどね、おちかさん、良助さんのことはどうでもいいんですか?
あの人は・・・まるっきり殺され損だ。
あんたが松太郎を許したいとばっかり思うもんだから、良助さんの恨みと悲しみは棚上げだ」

 男がくるりと振り返ると良助となり、おちかへの恨みを訴えたさ。
でも、おちかは引き込まれなかった。

「しかたない。これでいよいよしまいですな。まぁ、いいや・・・
あんたはこれからも生きていく。また会う機会がありそうだ。
アンタの話は終っちゃいない。
私とあなたの商いはこの先まだまだ続くでしょう。
これからが・・楽しみだ。腹の底から楽しみです」男

 男の姿は亡者たちの行き場を失った恨みや憎しみの現身なのでしょうか。
それとも死神のようにあの世とこの世を行き来し、亡者の恨みを伝える手伝いをしているのか・・・
人間が生きて死んでいく限り生まれる亡者の黒い思いは重しとなり、あの世に行くこともできず亡者と共に残り続ける。
その黒い思いは力を持ち、屋敷の主も飲みこみ、さらなる生贄を求め続けた。


「それには、ここから帰ってもらわんとなりませんが・・・道案内はいりませんか?」男
「あなたの案内など・・・いりません」おちか

 男がにやりとほくそ笑むと蔵は崩壊し・・・おちかと幼いおたかは座敷牢に戻ってきました。
「おたかちゃん、もう大丈夫。怖くないから」おちか

 笑顔になった幼いおたかが消えると共におたかは正気に戻りました。
「ありがとう、おちかさん。もう怖くないわ。大丈夫。
・・・・おちかさんに助けてもらった」おたか

「兄さん、松太郎さんは帰っていきました」おちか
「・・・・・松太郎が・・・そうか。おちか・・」喜一

 物語はひとまず終わり。
でも三島屋変調百物語は続きます。
おちかの苦しみは生きている限り続くかもしれない。
でも、前回お福が言っていたように亡者も浄土も生きている人間の心の中にある。
地獄を見たおちかだからこそ、共に生き闇に怯える人々の心を浄土に向けることができるのかもしれない。


 橋の上から魚にエサをやっていた灯庵(麿赤兒)は、あの謎の男が通っていったのに気づきました。
男も・・足を止めてにやりと笑いましたぞ。

 いや〜灯庵もこの世にいながらあの世とそして魔の者の姿を見ることができるんですね。
麿赤兒さんの独特の存在感が、この摩訶不思議な物語に誘う語り部にぴったりでした。


 そして懐の深さを感じさせる茶目っ気のある主人・伊兵衛役を軽妙に演じてくれた佐野史郎さん、
温かな情が静かに伝わってきた内儀のお民・かとうかず子さん、
お福やおちかをこの世に引き戻すことができる地に足のついた強さと明るさを持っている宮崎美子さんのおしま、
どの登場人物たちも物語の中でしっかりと生きていました。

 この人たちにまた会いたい。
そうそう、物語の世界観ぴったり合ったドラマチックでありながら静謐な雰囲気で包んでくれた中村由利子さんの曲も心に残りました。
どうかシーズン2がありますように・・・( ̄人 ̄) 


br_banner_risu