「太郎君の言うとおりだ。子供ってつらいわ。
忘れてた。こんな大切なこと」
礼子

 大人になってみると、子供時代の輝きだけが思い出される。
でも、うまくごまかすことも、どう立ち向かっていったらいいのかもわからないけど
目をそらすことができなかったあの頃の方が辛かったかもしれない。
自分の中にある何かを見送れない。見送りたくない自分・・・

 「さくらや」に帰ってきた礼子はそんな子供の頃の自分に再会した。
さてさて、礼子はその子とどう付き合っていくんだろう。
HPはこちら


 桜井太郎(オダギリジョー)は幼い頃に両親を亡くし、東京下町にある駄菓子屋「さくらや」を営む祖父母に育てられた。
5年前祖父が他界して以来、祖母・明子(八千草薫)と一緒に店をやっている。33歳。

『この駄菓子屋はいずれ確実に潰れる。
売り上げは月に4万円程度。もろもろの経費を引いた純利益は・・・
恥ずかしくて言えない。
でも、この駄菓子屋がただ無意味で無駄なものだとはどうしても思えないのだ』


 という訳で建築現場で深夜アルバイトをしております。
孫に苦労をかけたくないと思っている明子は店をたたんで土地を売ることをことあるごとに言ってくるが、太郎は祖父と祖母の生きた証の、この『さくらや』を守り続けたいと思っている。

 って、話だけ聞くと健気な青年のようだけど・・・日中は『さくらや』の裏庭(のび太たちが過ごしているような空き地の狭いバージョン)で駄菓子を食べながら仲間とだらだら過ごしております。
その後は亀の湯に一番乗り。
こちらもお客さんが太郎達以外いないという・・・( ̄∇ ̄;)


  そんないつものメンバー紹介。

銭湯・亀の湯の経営者・島崎 明(嶋田久作)、54歳。通称島さん。
銭湯が開くまでは暇なので毎日溜まっている。

三枝弘樹(勝地 涼)、太郎の同級生。33歳。
脚本家を目指し、高校卒業以来バイトで食いつないでいるそうな。
なんか脚本家になるために具体的に何かやってんのかしら?

金田 剛(前野朋哉)、太郎の後輩。32歳。元いじめられっ子。
大学卒業後就職するも挫折し精神を病んでしまったらしい。
やっぱり昼間っから溜まってるから現在無職?

 狭い路地にある築4,50年ぐらいは経っていそうな『さくらや』。
薄暗くて埃っぽそうで、駄菓子やらおもちゃやらがごちゃごちゃと並んでいる狭い店。
わたしゃ、今でもこういうほじくると何が出てくるかわからない空間が好きさ。
この堆積層の下の方に忘れられた商品が眠っていそうでわくわくする。

 でも今の子は楽しいことがいっぱいあるからね〜
学校終わった後に駄菓子屋行って何買おうかわくわくするなんてことないのかな。
それに、みんなお金持ちだから10円20円でくじにしようか駄菓子にしようか頭を悩ませる喜びもないのかしらん・・・駄菓子屋が混むのは遠足の前ぐらいかしらねぇ・・・


Baby a Go Go
 さて、いつものように『さくらや』の裏庭でみんなと無駄話に講じていると、同級生の礼子(尾野真千子)が覗きに来た。
でも太郎達が小学生のノリで「エンガチョー!」と大騒ぎで迎えたもんだから逃げちゃった。

 HPによる礼子の初恋の相手は太郎なんだって〜
離婚し、5歳の子供を抱えるシングルマザーになり、地元に戻って来た早々に「さくらや」に行くなんて、ロマンチストね。


 翌日、太郎が一人で店にいそうな時にまた来たさ。

「おお、礼子どうした?」太郎
「よかった。普通にしゃべれるんだ」礼子
「はあ?」
「昔のノリには ついていけないから。『えんがちょー』とか言われても対応に困るし。
もう30すぎたから」
「シャレだよ。ばーろー。おい、何か買ってけよ。裏で食ってけ」

 礼子もこの場所が気に入ったようです。
お互いの情報交換したぞ。

「何かいろいろ思い出してきたな。
大人んなると忘れるだけでさ、
子供んときは子供んときで何かいろいろつらいことあったぞ」太郎
「・・・・」礼子
「もう行くのか?」
「太郎君みたいに暇じゃないのよ。
子供を保育園に送ったらパートに行って、今度は保育園に迎えに行くの。
ご飯作って子供寝かせて・・」
「ほら、これお前の息子に持ってってやれよ。俺が5歳んときに好きだったやつ」
「・・・・・・・」

 駄菓子を渡してくれたぞ。
優しいお兄ちゃんだよ。
しかしこんなにいい男だし、若いのに駄菓子屋の店主って訳ありか?って思っちゃうよね。
学校の用務員さんって言ったらおじいちゃんばっかりだったけど、私の中学校では20代ぐらいのお兄ちゃんがやっていたんだよね。子供ながらに何か不思議な気がしたわ〜
学校祭の時に自分のギターで「東京」って歌を歌っていたのを今でも覚えてる。

 なんか太郎から流れてくる空気と礼子のとはまるっきり違っているな。
礼子から感じる生活の重さが太郎にはない。
太郎だって太郎なりに生活しているんだけどね、どこかひょうひょうとしていて軽やかなんだよな〜。


 それでも心の中にずっとひっかかっているものはある。

 子供の頃、太郎は寝室にあった時計の秒針のカチカチいう音が怖かった。
その音が気になると眠れなくなった。

「時計の音が怖い」太郎
「どうして?」祖母
「やっぱり いつかじいちゃんと ばあちゃんもいなくなるんじゃないかと思って・・・
父ちゃんと母ちゃんみたいに」
「大丈夫だよ、太郎」祖父


 確実に時を刻む時計の音・・・
その音は『死』へと誘われるよう。
5歳の時に父が死に、8歳の時に母が亡くなり・・・
「大丈夫だよ」と言ってくれていた祖父も死んでしまった。
太郎の場合は死の恐怖というよりも、大切な人がいなくなってしまう、続くはずの幸せな時間が消えてしまうことへの恐怖なのかな。


 礼子は翌日もやってきた。
太郎の留守に明子からいろいろ聞いたらしく、すっかり太郎を見る目がかわいそうな子供を見るおばちゃんになっとる(^w^)

「太郎君、太郎君、太郎君・・・・いいやつ。
アンタ、やっぱホントいいやつ。昔っから いいやつ。おばあちゃん子すぎるやつ。
店の利益が月3万円って・・・(ノω;`)
そりゃそうだよね、こんな店繁盛するわけないし・・・
ホントごめんね。私のほうがつらいみたいな顔しちゃって・・・」礼子

 太郎を見つめていたかと思うと、逃げるように去っていきました。
自転車をこぎながらつぶやいております。

「ダメダメ!シングルマザーは恋愛禁止。
アイドルとおんなじ。恋愛禁止!」

 いやいやいやいや!え〜〜?!これぐらいで恋に落ちる?!
いくら初恋の人ったって小学生の頃でしょ〜?ようわからんぞ。
礼子、よほど寂しいのか?


 で、その礼子の思いを察知した太郎は怯えてお仲間に相談しております。

「困ったな、俺・・・・礼子を養う自信なんかないから」太郎
「でもおばちゃん、いいとこだけかいつまんで重要なあの話はしてないんだろ?」弘樹
「してるわけないだろぉーーそもそも知らないよ。知ってたら困るし。
ちょっと島さん、年長者として何かいいアドバイスないんですか?」太郎
「礼子さんにあの話を・・・ホントの話をするしかないだろうな。
週に一回は風俗に行って、深夜バイトの給料を半分以上使っちゃってるって。
ヘヘッ・・・」島
「そうだなぁ・・・ホレられる前に言ったほうがいいかもなぁ〜」弘樹
それはできれば言いたくない」太郎
「三枝は脚本家の卵だろ?この先のストーリー展開、お前どう読んでる?」島
「正直、簡単です。こういう場合の女性は無自覚的なる駆け引きを仕掛けてきます」
「無自覚的なる駆け引き?」太郎

 そこに礼子が息子の春馬を「どうしても ここに連れてきたくて」と現れた。
なるほど〜これが「無自覚的なる駆け引き」か・・・・
子連れだけど大丈夫〜?あなたお父さんになれるぅ〜?的な?


「れ・・・礼子、ちょ・・・ちょっと待ってくれ。俺 ホントのことを話す」
「やめろ、太郎。子供の前だぞ」弘樹
「ああ・・・俺・・・その・・・プーゾクっていうか・・・ピューゾクっていうか・・・
おばあちゃん!おばあちゃーーーん! ε=ε=ε=ε=\(;´□`)/」

 結局言えず・・・何だよ、ピューゾクって・・・ゞ( ̄∇ ̄;)
てか、言わんくてもいいべ!


 翌日、アルバイトの帰り道の橋で礼子が待っていた。

「遅かったね」礼子
「買いもんしてたから・・・何で?」太郎
「仕事 おつかれ様」
「はあ、ずいぶんケンカ腰だな」
「春馬と朝からここで待ってて・・・
太郎君来るの遅いから春馬保育園送ってって・・・
そいでまたここ来て一人でずっと待ってたの。
パート先にも今日は病気で休みますって電話しちゃったし。
どうするんだろうね、私。どうなるんだろうね、私?」
ええっ?ムカつく子供かよ、お前は」

「分かってるよ。自分でも子供みたいなこと言ってるって。太郎君の言うとおりだ」
「えッ?」
「子供ってつらいわ。忘れてた。こんな大切なこと」
「ちょうどよかった。これ・・・やるよ。お前の息子。春馬に」
「何?これ」
「音が出ないやつだから怖くないんだよ。
俺の気休めだから。いらなかったら捨ててくれ」

 太郎が礼子の自転車のかごにポイッと投げ込んだのは時計。
もしかしたら春馬も時計の音に怯えているのかもしれない。
もしそうなら、その恐怖を忘れさせてあげたい。
春馬へ、そして子供の頃の自分への贈り物。
なんか太郎君・・・いいですなぁ・・・・


♪ おとなだろ〜 勇気をだせよ
♬ おとなだろ〜 知ってるはずさ
♪ 悲しいときも 涙なんか 誰にも見せられない

♪ おとなだろ〜 勇気をだせよ
♪ おとなだろ〜 笑っていても
♪ 暗く曇った この空を 隠すことなどできない

♪ あぁ こどもの頃のように
♪ さぁ 勇気を出すのさ
♪ きっと道に迷わずに 君の家にたどり着けるさ


 エンディングの忌野清志郎さんの優しくて力強い詞と歌声。
大人の中の子供、子供の中の大人を呼び覚ましてくれる。
30分のドラマですが、ゆったり穏やかな時間が流れていました。
こどもが創り上げる素朴で心をくすぐる詩のような世界。
次回も楽しみです。


 第二話 意味
 第三話 後悔
 第四話 痛み
 第五話 愛
 第六話 夢
 第七話 夢の続き
 第八話 覚悟
 第九話 戦い

こたつ