「さくらや」の前に椅子を出してお客さんが来ないか見ている明子(八千草薫)。
そしてため息をつきながら隣に椅子を並べて一緒に前の通りを見つめる太郎(オダギリジョー)。

「・・・・・・」明子
「おばあちゃん、今日も全然、客来ないね」太郎
「そうね。来ないわね」

 全く気にしていない声に太郎も思わず笑ってしまう・・・

「・・・お茶でも飲む?」太郎
「・・・うふふふ・・・」明子
「・・・みゃ〜〜ん・・・」ミーちゃん


 なんと穏やかで幸せな時間だったろう・・・
でも、その大切で幸せな時間でも人は忘れていく。
明子はわかっていたと思う。
あんなに引き留めてくれた太郎だけど、いずれ自分のことを忘れていくだろう・・
そして『さくらや』での日々も思い出さなくなっていくだろうと。

 それでいい。
忘れてしまうということは太郎がそれだけ一生懸命生きているということ。
あの、常に回りに気を使っていた太郎が自分のことだけを考え、
頑張って前を向いて走っているということ。
だから明子は自分に会いに来てくれなくなった太郎に安心していたのかもしれない。

 あの時間が太郎の中から消滅してしまう訳ではない。
太郎が春馬に「いつか思い出してくれ」と言ったように、太郎も思い出すだろう。
何度も何度も噛みしめるように。
今はその時じゃないって明子はわかっていたんだよね。


「俺はホントにバカだ。・・・・・おばあちゃん・・・ごめん・・・はぁ・・・・」

『いくつになっても後悔だらけよ』・・・・それでいいの。
笑顔と共に明子の声が聞こえるようでした。
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 さて、振り返ってみますか・・・
「さくらや」の入口には『売物件』の張り紙が・・・

『駄菓子屋を閉めた直後、理不尽な裁判に巻き込まれ、
結局、賠償金を支払うことになってしまった。
そして俺にほとんど何の相談も無く、おばあちゃんはこの家を売ったのだ』


 明子の思いを知らない太郎たちは4人で住むアパートを探し、よさげなところを見つけた。エレベーター付きでバリアフリーになっている所を。

「働いて金貯めて俺の店出すタイミングで、もっといい家に引っ越そう。
ま、それまでは少し辛抱してもらうことになる」太郎
「ここを売ったお金でお店を出したら?」明子
「そういう訳にはいかないよ・・・」
「太郎らしいわね」

「・・・・・・」
「私は一人で暮らそうと思っているから」
「・・・・・・」
「あなた達とは一緒に暮らせないわ」
「・・・・・えっ・・・ナニ言ってんの?」
「・・・・・養護老人ホームに入ることにしたの」
「『入ることにした』って・・・それは何・・」
「決めたことなの」
「・・・勝手すぎるよ」
「私ももう年だから。静かに暮らしたい。
あなた達と一緒だと疲れちゃうから・・・」

 そこまで言われると何も言い返せなかった。

第一話 「恋と恐怖」Baby a Go Go
「どうする?」礼子(尾野真千子)
「・・・・・何かさぁ・・・おばあちゃんに裏切られたような気分だよ」太郎
「・・・そんな訳ないじゃない」
「わかってるけど・・・・どうすることもできない・・・
俺がもっとしっかりしてりゃあなぁ・・・」

 何か親に見捨てられたように気持ちになったかしら・・・
いつまでもずっとそばに居て自分を見守っていてくれると信じていた。
自分と明子の気持ちは同じだと思っていた。

 でも明子は大切な太郎の自立の邪魔をしたくないと思ったんじゃないかな。
太郎の自分への思いやりや優しさがその邪魔になっている。
思い切って羽ばたこうとしている太郎と離れるなら今しかない、と決心したんだと思う。


 明子がホームへ行く日が来た。
お迎えの車がいる場所まで付いてきたけれど・・・

「おばあちゃん・・・やっぱり止めよう」太郎
「・・・・・・」気にせず乗り込もうとする明子
「ちょ・・・おばあちゃん、やめようって・・・」
「・・・・・・」
「すいません・・・俺があとで連れていくんで」

 結局、太郎がタクシーで送って行った。
ホームに入ったら、明子はすぐに太郎に別れを告げた。

「ここでいいわ」
「えっ・・・」太郎
「荷物はお預かりします。さ、どうぞ!」職員
「・・・・・・・」
「・・・・太郎・・・本当に・・ありがとう」

 いつものように優しい微笑みを浮かべ、明子は太郎から離れて行った。
いつか明子の本当に気持ちに太郎も気づく時が来る。
この笑顔の意味がわかる時が。


 新居にはミーちゃんも一緒ですョ〜
春馬は『広い〜』と喜んでいました。
アパートになり、ベッドになり・・・明子と離れ家族3人の新しい暮らしが始まりました。

 そして喫茶店で会っている太郎と弘樹(勝地涼)。
わざわざ連絡しあって会うなんて不思議な感じよね。

「やっぱり『さくらや』がいいなぁ」弘樹
「・・・・・・・」太郎
「俺、絶対忘れないよ」
うん。・・・・脚本どうだ?」
「やってる。お前は?・・・・おばちゃんは大丈夫か?」
「近いうちに絶対また一緒に暮らすよ。
まぁ・・・それにはやっぱ金が必要だから、今はとにかく頑張るだけだ」
「・・・・・・(うなづく)」

 なんかコーヒー飲んじゃったりして、やっぱり変な感じ。
本当に『さくらや』は無くなっちゃったんだねぇ・・・


 それから月日は流れ・・・・
太郎は念願のスペイン料理屋「さくらや」を開くことができました。

 すんごいりっぱなお店じゃん!
太郎、莫大な借金しちゃったんじゃないのお?( ̄∇ ̄;)
で、TVで2020年って言ってるから5年たったのか?
かわいかった春馬もでっかくなっちゃって・・・中学生?高校生??

 そして弘樹は脚本家として活躍しております。
連ドラが放送されているようだけど太郎に見る暇はない。
忙しい毎日を送っているようで、ぐったりとベッドに倒れる太郎。


「少し落ち着いたら、おばちゃんに会いに行こうか?
もう半年近く会ってないし」礼子
「・・・・あぁ・・・・うん・・でも、今はちょっと忙しい・・・」
「・・・・・・・」

 そして弘樹がエマさんという美人女優を伴って来店しました。
あの弘樹がこじゃれた業界人ぽい雰囲気ョ〜
食事は終わったのか、酔っ払った弘樹は厨房の太郎の所へ行ったさ。

太郎〜!太郎〜!太郎!
「ちょっと!迷惑でしょ!」エマ
「太郎!」
「なんだよ・・声デカいよ」太郎
「めちゃくちゃ美味しいぞ」
「うん」

「俺のドラマ見てるか?」
「あぁーーいつも急いで帰ってんだけどなぁ・・・
決まってエンディングしか見られないんだよ。お前の名前見つけて礼子と騒いでる」
「・・・・それでいい。別に見なくていいんだよ。
太郎は俺が書いたものより俺のことが好きだろう?」
「えっ?」
「こいつはさ、俺が書いたものの方が好きなんだよな?」
「そんなことないから」エマ
「酔ってんな、三枝・・・」太郎

「おばちゃんには会いに行ってるか?」弘樹
「・・・・・・・・」太郎
「そんなことだろうと思ったよ」
「・・・・・」
忘れていくんだよ。・・・・どんどん・・・忘れるんだ。
大切だと思っていたものをさ・・・」
「・・・・・」
「昔はあんなにはっきり見えたのに・・・・
俺・・・・何で脚本家やってんだろう・・・たろうーーー
「・・・・・・・」
「大丈夫?すいません・・・ちょっと飲みすぎたみたいで」エマ
「・・・・・・ハハハ・・・」弘樹

 忘れないと誓っていた弘樹も忘れてしまう。
太郎も日々の生活に追われ忘れている。
人間とは悲しい生き物だ。

 弘樹はあの裏庭にいた頃に戻りたいと思っているんだろうか・・・
自分がどこを目指しているのかわからない・・・
あの頃、ピンと来なかった武蔵(藤原竜也)の気持ちがわかるような気がする。
『さくらや』に戻って来た思いも。でも、もう『さくらや』はない。


 そんなある日、明子の容態が悪化したと連絡が来た。

「いや・・・今日は・・・ちょっと・・・どうしても店に行かないと。
重要な打ち合わせがある・・・」太郎
「・・・・・・・」礼子

 でもネクタイを締めている手が止まってしまった。
その言葉をすぐに後悔したはず。
ベッドに座り込んでネクタイを外したさ。


「(背中をなでながら)行くよね?」礼子
「・・・・・・(うなづく)」太郎
「すぐ用意して」
「・・・・・・・・・」

「春馬!おばちゃんのとこ行くよ!」礼子
ええーー!俺、ヤダよ。学校あるし」春馬
「何言ってんの?!」礼子
「いいよ。無理すんな」

 そう言って太郎は春馬のことをぎゅっと抱きしめた。

「ちょっ・・・何だよ?!」春馬
・・・・いつか・・・思い出してくれ・・
「・・・・・・・」

 車で明子のところに向かう太郎はため息をついていた。

「はぁ・・・・俺はホントにバカだ」
「・・・・・・・・」礼子
「・・・・ふぅ・・・・おばあちゃん・・・・ごめん・・・・・」

 明子という光の存在があったから太郎は生きてこられた。
静かに温かくふりそぞいでいた明子の愛。
優しすぎてその中にいたことを忘れてしまった。
それでも太郎は明子からもらったものを、同じように春馬に手渡していくのだろう。
生きながら忘れたり、思いだしたりしながら。

 も〜最後の最後まで憎いドラマだったわ。
生きていくこと、生活していくこと、誰かと一緒にいるということ、
そんな過ぎていく時間の中で、遠くにきらりと光っている何か・・・
チクンと痛むような、どこか懐かしくて心地よいものでもある捨てても残る大切な思い。それを見せてくれたようにも思います。

 納戸を掃除していたら見つけた昔の宝箱のようなドラマでした(ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ、どういうこっちゃ)。
その優しい痛みとぴったり寄り添う『空がまた暗くなる』・・・
毎週、この歌を聞くたびに、なにやら切なく鼻の奥がつーんとしちまったわ。
いいドラマでした。
基本のほほんとしていて妙な空気感も好みでした。

 放送されていない地域もあったけど、たくさんの人に味わってほしい世界でした。
見て良かったな〜キャストとスタッフの皆さまに心から感謝デス。

 そうそう、太郎の開店祝いにシマさん(嶋田久作)と武蔵(藤原竜也)からのものがあって嬉しかったわ〜
みんな、それぞれ生きていってるんだね。


 第一話 恋と恐怖
 第二話 意味
 第三話 後悔
 第四話 痛み
 第五話 愛
 第六話 夢
 第七話 夢の続き
 第八話 覚悟
 第九話 戦い

こたつ