「私は、刑事だから」
夢の中の比奈子はナイフを捨て、永久に手錠をかけた。
比奈子の心に種を蒔いてくれた母・香織の愛情、
東海林の言葉、そして中島の思い、
刑事としての自分を支えてくれた厚田や石神、同僚たちの信頼、
それが比奈子をこちら側に留める助けとなった。
でも選んだのは比奈子自身。

 それは殺人者になるかもしれないという破滅の淵にいながら
決して逃げることなく自分と向き合い、
本当の自分自身を求め続けた比奈子だからこそ。
これは猟奇殺人を題材に取りながら、藤堂比奈子という人間の成長を稀有な視点で描いてくれたドラマでもある。

 確定した未来なんてない。
これからも比奈子は殺人者になるかもしれない自分自身と向き合う時が来るかもしれない。
でも、その度に彼女は自分自身で未来を選択するだろう。
呪いの代わりに自分の中に根付いた刑事としての誇りを大切にしながら。
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 さて、振り返ってみましょうかのう・・・
片岡(高橋努)を切りつけ、東海林(横山裕)を拉致した永久(芦名星)は
比奈子(波瑠)にこんな言葉を残した。
「選択肢を与えてあげる。
一人で来て人質を取り戻すか、警察の連中と一緒に来て人質を死なせるか。
24時間以内に決めて」


 そして永久からの隠れメッセージを見つけた中島(林遣都)は
厚田(渡部篤郎)へこげなメールを送った。

『動物殺傷、人体埋め込み事件の犯人は非常に婉曲にですが
藤堂さんに対してアピールを行っています。
脱走した佐藤都夜だけでなく別の第三者が藤堂さんを
狙っている可能性があるということです。
十二分に警戒してください』


 さらに片岡殺傷時の監視カメラ映像で永久が比奈子に話しかけている
のを確認した厚田は比奈子に彼女のことを尋ねた。
比奈子は会話の内容は言わずに『8歳の時、親元を離れ「永遠の翼」という養護施設で育ったこと。常習的に動物殺傷を行っていたこと』を伝えた。

「それから・・・嫌いだと言っていました。何もかも。全部。
自分はこの世界の全部を憎んでいると」


 シリアルキラーが育つにも理由がある。
人は育てられた相手や環境から人とのコミュニケーション方法を学ぶ。
両親からの虐待、その後の施設での性的虐待を受けてきた永久は
人と人は暴力で繋がっていると教えられた。
痛みと苦痛、怒りと憎しみは澱のように溜まり、
そしてそのエネルギーを自分をこの世界から消す自殺ではなく
回りの人間を消す殺人という方法で表現した。 


 調査すると、ここ数年、永久と関わりのあった人間が次々と行方不明になっていた。
両親、施設の運営者夫婦と幹部数名、
そして佐藤都夜に送られた手紙の送り主である5名の男性も消えていた。
(その後、DNA鑑定で連続動物殺傷人体埋め込み事件の被害者と一致)
厚田たちはまだ知らないが、もちろん情報屋の藤川(不破万作)、
佐藤都夜も自分に従わない、ノリが合わないという理由で焼死させていた。

 早いとこ東海林を見つけないと、殺されてしまう。
必死の捜査が続く中、安全のため内勤を命じられていた比奈子も捜査に加わらせて欲しいと厚田に訴えた。
「東海林先輩は私の代わりに拉致されたかもしれないんです。
それに・・・・私はまだ刑事です

 比奈子の中で、初めて刑事魂が目覚めたようですぞ。

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 その頃、永久は殺人についての独自の見解を東海林に語っていた。 

「思いこんでいるだけだよ。アンタだけじゃなくてみ〜んなね。
自分は絶対に人殺しなんてしないしましてや殺されるとかありえな〜い・・・
お気楽だよね。
ニュースでは毎日のように悲惨な事件が起きてて
な〜んで自分は無関係だと思えんの?
どっかの誰かが今日も殺して、殺されて、だからアンタら警察は失業せずにすんでんのに!

人を殺すなんて、みんなが思ってるほどハードル高くないんだよね。
日常のほ〜んの一瞬。
法律とか倫理とか、そういうのにバイバイして、目の前にいる人間を
刃物で刺すか、鈍器でぶん殴るか、首を絞めるかすればすむんだから」

「世の中はてめぇみたいにイカレた奴ばっかじゃねぇよ」東海林
「人殺し見つける度にムカついてボコボコにするアンタはイカレてないっての?
私のこと死にかけるぐらい虐待して捨てた親、
私を立派な怪物に育ててくれた連中は?!」


 そう言いながら永久は自分の殺人コレクション(人体の一部をケースに入れたもの)を披露。その数はりんご箱一杯分ぐらいあった。

 比奈子にコンタクトを取った理由も説明した。
「グズグズしているから、こっち側に引っ張ってあげるの。
私もそろそろ飽きてきた頃だしねぇ〜」
「飽きた?」東海林
「世界を憎み続けることに」 

 比奈子は東海林を救うために一人で永久の元へ向かうことに決めた。
その決意を感じていた厚田の指示で石上(原田美枝子)の所に行った比奈子は彼女から抱きしめられた。

 その時、脳裏に母・香織(奥貫薫)の言葉が蘇った。
『比奈子、大丈夫よ。
あなたはきっと間違えずに正しく生きていくことができるから』


「生きてることとか、人との繋がりとか、そういうのがあると、
ギリギリのところで踏み留まれるもんよ」石上
「・・・・ありがとうございます」比奈子
「どういたしまして」

 感情がなくても感じることはできる。
石上の包み込むような明るい笑顔、伝わってくる温かな体温、込められた思い・・
常に現象を知性で理解してきた比奈子が考えずに感じることができた一瞬だったのかもしれません。


 さらに石上は比奈子を中島の元へ行かせた。

 いろんな人達が比奈子をこちら側に留めようと動いている。
もし比奈子が誰とも関わり合わず、隔絶された環境で生きてきたとしたら
簡単にあちら側へ流れて行ったでしょう。
自分でも実感したことのなかったであろう生活の重み、
それが比奈子を救った。


 比奈子は永久が現れたのは自分が殺す予定だった父親を殺さず、
彼女の期待に応えられていないからだと話した。

「あなたが真壁永久の期待に応える可能性は限りなく低かったと僕は思う。
僕はあなたに潜入しました」中島
「それで答えが出たんですか?私が・・・どういう人間なのか」比奈子
「人間に答えなんてありませんよ。
それに安易な答えも求めることはできない。
僕はあなたの『自分自身が知りたい』という言葉が
何かに縛られて結果だと思っています。

それは・・父親から言われた『怪物』という言葉であり、
真壁永久の『自分らしく殺す』という言葉ではないか・・・
あなたはその言葉に抗おうとしているのではないか・・・
でも、実際に潜入してみると、しっくりこなかった。
心あたりはありませんか?
藤堂さんに何か大きな影響を与えた誰かからの言葉について」

「だとしたら・・・それは母の言葉だと思います。
父と離婚した時、母は私を抱きしめて言いました。
『心配しなくていいの。
あなたはきっと間違えずに正しく生きていくことができるから』・・・
ただ私には、その言葉の意味が理解できなかった・・・」

「藤堂さん、お母さんはあなたを愛していたし、
あなたも、お母さんを愛していたんですね」
「・・・・・・・愛・・?」
「あなたはただ、お母さんのその言葉を証明したかっただけだ。
だから警察官になった。
殺人犯と対峙し、ナイフを手にして、命の危険にさらされ、
あなたがそこで確かめたかったのは自分と人殺しの違いではありません。
それでも相手を殺さずにいられる自分なのかどうかだった。
自分を疑い続けて、試さなければいけないと思い続けたんです。
答えを追い求めて」

 人間の心の底にあるもの、自分を突き動かしているものの正体は
自分自身でもわかっていないことが多い。
『愛』というものを理解できないと思っていた比奈子が
殺人犯たちと向き合い続けたのは『愛』故だった。
自分を信じ、無償の愛で自分を包んでくれた母に応えたかった。
中島の言葉で、バラバラになっていた比奈子の心の中のパズルが整い始めた。
でも最後のピースとなったのは東海林の言葉でした。


 永久に指示された廃工場に行った比奈子はさらに選択を求められた。
「私と東海林巡査長、どっちを死なせるか♪」

 東海林は鉄筋に手錠ごと縛り付けられており、その回りには灯油がまかれ、
手錠の鍵は永久が飲みこんでいた。
助けたければ自分の腹を切り裂くしかないとライターを手に永久は迫りましたぞ。

「どうしてそんなことを・・・」比奈子
「心のないアンタのことは嫌いじゃないから、殺されてあげたくなったの。
あの長野の山の廃屋で最初に会った時からときめいてたんだよね。
私のこと少しも怖がらない、何も感じてないあんたに・・・
私と同じ場所に来て欲しい。
私と同じように、その手を血で汚して欲しいって・・・」

 連続動物殺傷人体埋め込み事件は、やはり比奈子を殺人者に導くための
ものだった。
動物の対象を徐々に大きくしていき最後は人間である自分を殺させる。

「いい訳は立つでしょ?
ただの正当防衛。ただの人命救助なんだから。
あんたらしく人を殺すの。
あんたはそういう人間なんだから。
誰よりも透明で何も感じずに人を殺すことができるんだから」

 鞄からナイフを取りだし手にもった比奈子に永久はにっこり。
これも愛なのかもしれないね。
自分という人間をそのまま受け入れてくれた感情のない少女・比奈子への。
永久は殺人そのものを楽しんでいるけど、その根底には人間に対する強い怒りと憎しみがどろどろと渦巻いている。
自分は汚れきっていると思っている永久は感情がない故に理由なく、聖なる儀式として殺人を行える比奈子に殺されることで清められたいと思ったのかも・・・


 一歩一歩、永久に近づいていく比奈子に東海林は叫んだ。

「ふざけんなよ!
藤堂、オマエ、そんな奴の言いなりになってんじゃねぇよ!」 
「でも、東海林先輩が・・」比奈子
「理由がありゃ人殺していいなんて理屈ねぇんだよ!
だから心がねぇとか言い訳すんじゃねぇ!
藤堂、オマエはちょっと根暗で、悪趣味で、
一人ん時は無表情で、犯罪に興味深々で、何でも七味かけるすげぇ変な奴だよ!
だからってお前は怪物なんかじゃねぇ!!
ただの普通の人間だろ!!


「・・・・・・」比奈子
殺すんじゃねぇぞ!
そっち行っちまったら絶対許さねぇからな!
お前のこと信用している人間裏切んじゃねぇよ!!


 中島が望んでいた通り、東海林の言葉が比奈子を引き戻した。
そしてその中島の言葉も・・・

『あなたが一線を超えないように繋ぎとめていたものは
形見の七味缶ではなく、お母さんが与えてくれたぬくもりです。
お母さんはただ、あなたを信じていた』
 

「ありがとうございます。東海林先輩」比奈子

 ナイフを下した比奈子を見た永久は火のついたライターを投げた。
あっと言う間に火に包まれちゃったけど、地味に手錠を繋いである鉄パイプを破壊しようとする比奈子ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ


 必死に東海林を助けようとする比奈子に絶望する永久。
「結局・・・アンタもそっち側かよ・・・」

 そんな比奈子を殺そうとして走り寄る永久!
東海林が気づいて比奈子に知らせたがどうすることもできん!
と思ったら・・・倉島(要潤)が永久にタックル。捜査一課のみなさんも現れましたぞ。

 永久が都夜に送った手紙に隠されたいた暗号を三木(斉藤慎二)が解読に成功。
示してあったアジトを突き止めたそうな。

 連行されていく永久を引き留めた比奈子は彼女を抱きしめた。
「あなたも誰かにこうしてもらっていたら・・・」

 静かに固まっていた永久は叫び声をあげて暴れだした。
今まで味わったことのない感覚が亀裂のように永久の中に走ったのか・・・
それは封じ込められていた永久の人間としての心の叫びだったのかもしれない。
その姿を見た比奈子は涙を流していた。


「あの女、ずっとひでぇ目に遭ってきたみたいだな・・」東海林
「ええ。ずっと独りぼっちで・・・
彼女は殺すことで人と繋がりを持とうとしていたのかもしれません」比奈子
「そんな理屈、殺される側にしたらたまったもんじゃねぇよ」
「わかっています。
でも私は、母のおかげで・・・ただの・・・普通の人間でいられました」
「あぁ、ただの普通の新人刑事だ。
あのギリギリで踏みとどまったじゃねぇか。
だから・・・とりあえず、信じてみるわ。お前のこと」

 「ただの生理現象です」と比奈子は言っていたけど、
涙は比奈子の心が動いたということ。
人間だから心が動くのか、心が動くから人間なのか。
今はまだ大きな変化は見えないけど、硬く固まっていた比奈子の中に一滴の水が落ちたような。


 辞表は厚田のポッケで火に焼かれボロボロになっちまったそうで、不受理に。
比奈子はこれからも刑事として生きていくことにしたようです。

  比奈子から中島へのメール

『そういう訳で刑事を続けることになりました。
今回は踏み留まれましたが・・・先生が仰るように人間に答えはないので
先のことはまだわかりません。

ただ・・・・・中島先生や東海林先輩、そして母が信じてくれたように
自分を信じたいと思います。』


 ああ〜〜もっと藤堂比奈子という人間を追いかけていたい。
ラストはちょっと甘めの味付けで、今までのテイストから浮いているような気がしたけど、まぁ、いいでしょうゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ
今季、かなり好きなドラマでした。

 波瑠さんという大好きな女優さんが演じているからでもあるけど、
非常に珍しいスタイルのドラマだったと思います。
自分が殺人者になるかもしれないという思いを抱きながら興味津々で
殺人者達と向き合うヒロイン。
凄惨な猟奇殺人を描いているのに彼女の生への渇望が伝わってきた。

 これは血なまぐさい現場でも強い意志と共に清らかな存在感を魅せてくれた波瑠さんだからこそ。
も〜私の中では波瑠さんは松ケンと並ぶ実力の特別な俳優さんです。
作品と共にメタモルフォーゼしていく彼女から目が離せません。
林遣都君と横山裕さんとのコンビネーションも最高でした。

 そしていつもながらにドラマの輪郭を濃く鮮やかに縁取り、物語のさらに奥へ深く誘ってくれる菅野祐悟さんの音楽がすばらしかった。
も〜サントラ、iPodに入れちゃうよ〜♪

 原作がまだあるのなら、ぜひ藤堂比奈子と中島先生や東海林との
その後が見たいです。
 

 第1話 新人刑事が殺人者への探求心で難事件を暴く 型破り捜査班&最高に危ないヒロイン誕生
 第2話 謎の凍結遺体…犯人への危険な興味
 第3話 洋館美女連続殺人・・・奪われた完全美
 第4話 女刑事VS女殺人鬼・・・自死操作の陰謀
 第5話 猟奇自殺事件の謎・・・裁かれる罪人
 第6話 リッチマン殺人事件・・・比奈子の過去
 第7話 毒物死へ誘うAID・・・比奈子の殺意
 第8話 美しき殺人鬼が脱走・・・悪夢の扉開く

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