「おバカついでにひとつ聞いてもいいですか?
ひとつだけでいいんです。
たくさんの夢の中の一つを教えていただけませんか?
あなたの夢を・・・」
「・・・・・・・・作家になりたい。小説を書きたい。小説家になりたい・・
ふっ・・・夢だがね・・・ただの夢だ」

 面白かった。
見終わった後、『夢見る夫婦』というサブタイトルがしみじみと心に浸みた。
お互いの存在に夢を重ねた二人の手が繋がり、やっと夫婦として心も繋がったような。

「ただの夢だ・・・」と金之助は笑ったけど、
夢は口に出すことによって現実世界に舞い降りる。
鏡子に問われ、口に出したことによって、その夢は二人が気づかないうちに一歩踏み出した。

 鏡子という妻がいなければ「文豪 夏目漱石」はいなかった・・・かもしれない。
今まで自分の中にあった「夏目漱石」や「夏目漱石の奥さん」のイメージが消えて
新しいものが創られていく清々しい快感・・・
この純粋さを抱えた奇妙にかわいらしい夫婦が大好きになりました。
次回が楽しみだす。
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 さて、振り返ってみますかのぅ・・
明治28年、自室でごろごろとお菓子を食べながら読書する19歳の鏡子(尾野真千子)の姿から始まる。
東京虎の門の邸宅で女中のたか(角替和枝)に世話をされながら自由闊達に明るくのびのびと育ってきたのがすぐわかる。

 そんな鏡子に貴族院書記官長を務める父・中根重一(舘ひろし)がお見合いの話を持ってきた。
「今度の相手は」と言っていたから、何回か断ってきたのかしら〜?
帝大卒、松山で中学の教師をしている夏目金之助(長谷川博己)、29歳。

 写真を見た時の印象は悪くなかったみたい。
占い好きの鏡子は真夜中に屋根裏部屋でこの相手でいいのか鏡に尋ねておりましたぞ。

 懐かしいのぅ・・・(* ̄m ̄)
よく夜中の0時にトイレで鏡を見ると将来の結婚相手が見えるってのあったよね?
わたしゃ、怖くてできなかったけどさ。


 占いの結果は妹たちには話さなかったけど、鏡子は乗り気でお見合いの席に臨んだようです。
金之助が詠んだ『乗りながら馬の糞する野菊かな』という句にバカ受け。
その3日後、人力車に乗った金之助とすれ違った時、無視されるも、
妹に「私、あの方のお嫁になると思う」と言っておりました。

 普通ならムカーっとするかと思うが、鏡子は金之助のそんなツンとすました様子が
かわいいというか、おもしろく感じたのかねぇ・・・


 でも実は金之助もお見合いでおおらかな笑い顔を見せ、
お正月のカルタ会で金之助に全く気を使わず札を取りまくった鏡子に好印象を抱いた模様。

 金之助みたいな神経質なタイプにはおおらかな鏡子のような女性がいいよね。
親友の正岡子規をして「なかなか門の開かん城」と言わしめる気難しい男。
一緒になって細かいことで悩む女性じゃ相乗効果でますます気が滅入るもんな〜

 って、正岡子規は四草兄さんこと加藤虎ノ介さんでないの〜!
豪胆で優しい雰囲気がいい感じ。
でも、来週も出てくれるのかしら・・・


 金之助には鏡子の父の縁故を頼りに東京で新しい職を得たいという思いがあったようだが、うまくいかず熊本の高校へ転任。
二人は熊本で新婚生活を送ることになった。

漱石の思ひ出――附 漱石年譜道草 (新潮文庫)吾輩は猫である (宝島社文庫)
 重一は金之助の将来性は見込んでいたが、かなり気難しい男だということもわかっていた。
知り合いもいない熊本でお嬢さん育ちの娘がやっていけるのか・・・
汽車の中で「引き返すなら今だぞ」と尋ねたが鏡子は「決めたことですから。
自分でこの人がいいって決めたんです。私、迷いませんから」とほほ笑んだ。

 清々しいが幼さも残る素直な表情。
この顔を見たとき、鏡子の成長を見守りたいと思いました。

 こういう決意って『あさが来た』の時も思ったけど、選んでくれた父親への信頼なのかしら・・・
それとも健やかな家庭で育ってきた人間が持つ勘のようなものなのかな。
心の中に自分の決めた道を信じる強さがある。

『婚礼は夏目さんの家で媒酌人もお客様もなく、
簡素を通り越した奇妙なものであったそうです』


 暑さに弱い重一はとっとと済ませよう感ミエミエだし、
三々九度の杯は一枚足りないし、台所ではなんか焦げとるし・・
ほんわかと生きてきた子供時代からいきなり現実が目の前に現れたって感じですな。

 ところでドラマの語りをしているのは鏡子の従妹・房子(黒島結菜)。
幼い頃の姿があったけど鏡子と一番気の合う子だったのかな。
のちに夏目家で花嫁修業することになるらしい。


 婚礼を終えると金之助は鏡子にこげな宣言をした。
「僕は学者で勉強しなければならないのだから、君にかまってはいられない。
それは承知しといてもらいたい」
「・・・・・・( ゚д゚) ・・・・・はい」

 いやいやいやいや・・・「よろしくお願いします」でもなく、
「疲れただろう」でもなく、こげな言葉を言い放つとは・・・( ̄∇ ̄;)
でも、ま・・・変な期待を抱かずにすむか・・・


 でも鏡子の方もアレだった。
一日目から寝過ごして、気づけば金之助は出勤した後。
おたかが3度声をかけても起きなかったらしい。
小言を言うおたかに明日は自分がやると啖呵を切っても、また寝坊。
金之助は朝食抜きで職場に行くはめに。

 鏡子が人より多く寝ないと頭痛と吐き気がするといい訳をしたら早く寝ろと言われ、
そばの墓が気になって眠れないと訴えたら引っ越しをしようと返された。
そしてその通りに引っ越し遂行。

 ( ̄∇ ̄;)ハハハ・・・いぢわる・・・
おまけに同僚の長谷川(野間口徹)を勝手に下宿人にするって決めてるし。
しかもタダで。友達から金は取れないとか言っちゃってさ〜。


 んが、鏡子がうまいことやって月5円下宿代をもらう算段をつけた。
お嬢様でもこういうのは上手なのね。
そういう意味でも現実世界から逃避しがちな金之助には合ってるわ。
でも、その後に徳利にハエが入っていたと激高していたのは、一本取られた仕返しか?
謝らせずにはいられなかったのかしら。


 代わりにおたかが平謝り。
鏡子も手をついて謝ったけど収まらなかったらしい。
やんわりとたかを東京へ戻すよう命じた。

「さみしいかい?」金之助
「・・・・子供の頃からずっと家族のようにいましたから・・・」鏡子
「わかるよ。たかには良きにつけ悪しきにつけ中根家の匂いがする。
見ていて君が羨ましいと思うことがある。
そういう家族がいるということがね。
・・・・僕には縁のない世界だ」

 仕送りはしていても金之助は「あれは家族じゃない」と言いきった。
五男坊の金之助が生まれた頃、生家は没落しつつある状況で、両親共に望まない出生だったらしい。
生まれてすぐに古道具屋に養子に出されたが、そこでは全くかまわれず放置された状態で哀れに思った姉が連れ帰ったほどだった。

 その後、別の家に養子に出されたが養父母の離婚で7歳の時に生家に戻ることに。
その時の実父の冷たい態度は金之助に一生の傷を残したらしい。

 家族に憧れつつも、どう家族を作っていったらいいかわからない。
そんな金之助にとっては、たかと鏡子の間に入っていけない寂しさと嫉妬があったのかもしれないし、家族を作ろうと思っていた出鼻をくじかれたようにも感じたのかもしれない。


 しかし現実問題、たかがいないと家は回らんぞ!と思ったら、ちゃんと別の女中さんは雇ってくれたんだね。
でも、ただでさえ慣れないおさんどん、段取りは悪いし、準備も中途半端。
学生たちを呼んだ宴会ではきりきり舞いだった。

 でも不手際に怒鳴る金之助に鏡子は歯向かっていくから、ほっとするわ〜
気の強さも、めげないパワーもある。


 明治30年、金之助の実父が亡くなり、東京へ向かう汽車の中、鏡子は体調不良で倒れた。
妊娠に気づかぬまま流産してしまったのだった。

 その後、鏡子は実家の家族と共に鎌倉で過ごしたのち1ヶ月ほど東京で静養した。
金之助は教師を辞め東京で働ける場をを重一に頼んだが、またしてもうまくはいかなかった。
望まない仕事に金之助は従事し、回復した鏡子もやむなく熊本に戻った。

 しかし家はいつのまにか書生が住んでおり、女中のテル(猫背椿)も神経を逆なですることを言うし、書生たちの噂話で金之助の昔の恋人の名前を知ってしまった鏡子は穏やかじゃいられない。
金之助を問い詰めるも、気がおさまらん。

 お弁当を忘れて出勤した金之助に走って弁当を届けてもお礼も言われないどころか、流産のことを蒸し返され立ち尽くしてしまった。

 青々とした竹藪の奥にある道を歩いて行く金之助の元へ一生懸命走って行く鏡子・・・
竹の隙間から見える金之助を追いながら高まって行く鏡子の思いが見えるようでした。
それだけに金之助の言葉に深く傷つき、動いていた心が止まってしまう鏡子の衝撃が重く伝わってきた。


 そんなことがあったあとの明治31年正月、金之助は友人と温泉へ行ってしまい
鏡子は一人で正月を迎えた。
書生たちにカルタ遊びに誘われても抜け殻のよう・・・

 金之助は教師の仕事が忙しくなり留守がちになっていた初夏のある日、
思い立って鏡子は金之助のいる学校へと向かった。
校舎の中で金之助を見つけた鏡子は手を振った。
必死で手を振った。
でも金之助は気づいたのに無視して去って行った。
最後の糸がぷつん・・・と切れてしまった。

 雨の中、輝くような思いで走ったあの竹藪の小道を絶望だけの思いで歩く・・・
鏡子は橋の上から身を投げた。

 余計なものが無くなった二人の蚊帳の中での会話が心に響きました。
金之助は初めて心を開いて鏡子に自分の思いを伝えられた。


「君を助けてくれた釣り船の人に僕は感謝しなくちゃならない。
君に謝るチャンスを与えてくれたんだ。
僕は・・・学校の外に立っている君を見たんだ。
君は手を振っていた。
なのに僕は見ないふりをして君に背中を向けてしまった。

君が走ってきて弁当を僕に渡してくれた時も・・・・
素直にありがとう・・・そう言えば良かった・・・
それが僕にはできない。
僕は自分の家族が欲しい。誰よりも。
だから・・・死んでしまった赤ん坊が・・・
やっぱりそうか、僕は家族に縁がない人間だって・・・

君は失うものがない。
あの中ね家に戻って行けば、いつでもみんなが温かく迎えてくれる。
僕は一人で熊本に戻ってきて、つくづく思った。
僕には家族がない。一人なんだって・・」

 父親に捨てられたという思いがある金之助は人間が信じられない。
家族というものも信じられない。
家族が信じられない人間は自分自身も信じられない。


「しかし今日わかった。
そういう僕に弁当を届けてくれる人がいるんだ。
さみしくて学校まで顔を見に来てくれる人がいるんだ。
子供はだめだったが、そういう君がそばに居てくれるんだ。
その君をもう少しで失うところだった。僕のせいで」

「私ね・・・あなたとお見合いする前、鏡の占いをしたの。
鏡にあなたと自分の行く末を聞いてみたの。
そしたらこう言われたの。
お見合いする人にはたくさんの夢がある。
その夢のひとつひとつを果たしていく人だって。
そういう人だから、一緒にいると幸せの雲に乗れるって。
よし、その雲に乗ってみようって・・・
だから、川になんか入っちゃいけなかったのに・・・」
「そうだよ。おバカだね・・・」
「そうです。私はおバカです・・」


 繊細な劇伴が鏡子と金之助の心の中にそれぞれ言葉が静かに降り積もるようでした。
軽やかな「ピアノソナタ第21番」も、この二人のドラマにぴったり。
この二人がどんな家庭を作っていくのか・・
苦さがあってこそ甘さ見えるような夫婦の物語に興味深々だす。
全四回、かなり遅れるとは思いますが記事を書いていきます。

 第二回 吾輩は猫である
 第三回 やっかいな客
最終回 たたかう夫婦

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