連休は読書を優先しつつの〜んびり過ごしちゃたんで、
こんなに遅くなってしまいました( ̄∇ ̄;)
だもんで、今回はささっと・・ね。

 明治38年春、金之助(長谷川博己)が「夏目漱石」というペンネームで
書いた初めての小説『吾輩は猫である』は評判となり、作家として
世に知られる存在となった。

 そんな時、鏡子(尾野真千子)は家を覗いている奇妙な男を発見。

 部屋の中から見つからないように男を確認する金之助、
木戸のあたりから様子を伺う男、
少し離れた場所から男を警戒する鏡子・・・
3人三様の距離感がユーモラスででもあったのだが・・・
インクが染みだすように何やら嫌な予感がじわり。


 家に入った鏡子は棚の上にあるものだけでなく押入れの中にしまってある人形も
すべて横に倒した。
占い師の先生に「起こしておくと上向きの運を台無しにする」と言われたんだって。
それを直す金之助と、また倒す鏡子・・・
元に戻すんだけど、結局倒しておく金之助・・・(* ̄m ̄)プッ


『小説を書き始めて以来、金之助さんの神経は穏やかさを取り戻していました。
しかし、この2,3日は違いました。
落ち着かない様子なのです』
 語り・従妹の房子(黒島結菜)

 夫婦の関係はどんなもんだったかというと・・・
金之助は引っ越しを機に二つで38円(大学からもらう給料より高い)もする書棚を勝手に購入し、鏡子にキレられとる・・・
さらに新聞社から小説家として迎えたいという話しをもらった金之助は大学を辞めようと画策していた。

 もちろん鏡子は大反対。
育ち盛りの子供が4人いる。書生たちの面倒も見なきゃならない。
毎月180円は必要。質屋の世話にもなっている。
確実な収入を捨てるなんてとんでもない!
もちろん夫婦ゲンカですワ・・・

「新聞社が潰れることはあっても帝大が潰れることはありませんから!!」
「つまり・・・金か!生活か!
「そうです!」
ふんっ、くだらん・・・わかった!
いつも思うことだが君は本当に夢の無い人だね!
新聞社を断る!!
ったく!ポンポンポンポン子供産みやがって!

「・・・・・ポンポンポンポン?!( ̄皿 ̄;; 」

 一人じゃ子供は作れませんっての・・ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ
ひどい言いぐさだけど、夫婦ゲンカも年期が入り堂々としたもんだね。
てか、金之助はこういう場合強行したりはしないんだね。


 新聞社転職問題は2年後に決着がついた。
この頃から房子は花嫁修業のため夏目家に入っていた。
新聞社の主筆・渡辺が入社の説得に来たのさ〜。
シブイ顔をしていた鏡子だが房子から「月給200円」と聞き、いつのもように手のひら返し。新聞社いいじゃん!

 でも、大学を辞めちゃダメ!ってあんなにキツク言っちゃった手前、
今更新聞社に入りなさいよとは言えない。
小説家としても認められてきたし、月給もかなりいい額だし、そろそろ大学辞めてもいいよね?と思いつつ、鏡子に頼みたくはない金之助。
二人の表面的には折れてないぞ!とアピールしつつ、探り合いながら意見のすり合わせをしようとする駆け引きに笑えた〜


「これ以上は・・・・・お好きなように」
「じゃあ好きにするぞ!新聞社に入るぞ!」
「どうぞ!」
「いいんだな?!ホントにいいんだな?!」

HPはこちら

漱石の思ひ出――附 漱石年譜道草 (新潮文庫)吾輩は猫である (宝島社文庫)
 さて、少し前に家を覗いていた男は金之助の養父・塩原昌之助(竹中直人)でした。
金之助は二度養子に出されたけど、これは離婚しちゃった2番目の養父の方。
昌之助が夏目家にコンタクトを取って来たのは2年後の明治40年のことだった。

 2年もうろうろしてたんかい・・・( ̄∇ ̄;)

 昌之助は榎本という代言人を伴い夏目家に現れた。
禍々しい予感に例によって人形を寝かせる鏡子・・・

 目的は金だとわかっていた。
でも榎本によると昌之助の言い分は違った。
「縁は切れていない」・・・

 7歳で生家に戻って来た金之助だったが実父と養父の対立のせいで夏目家の籍に
戻ったのは21歳の時だったらしい。
昌之助は実父から240円の金をもらい、やっと金之助を手放した。

 昌之助は元通りのお付き合いをお願いしたいとつぶやいた。
年を取ると心細くなる、こちらにおじゃまさせていただいて昔話のひとつでもできれば心が休まる・・と。

「ご存じの通り私は忙しい。
来ていただいても私はお相手できるかどうか・・・」金之助
「そうおっしゃらずにお相手願いたい・・・
お前様は夏目に戻る時、こういう念書を私に書いたんだからね」

 恭しく榎本が出してきた念書には夏目家が昌之助に養育料240円を支払い、
金之助は夏目家に戻った上で、今後『不実不人情にならぬよう致したい』と記していた。

「つまり互いに助け合い、不人情にならぬよう生きていこうと
約束されているのです」
榎本
「・・・・・・・・」金之助
「・・・・・・・・」鏡子
「・・・・・不実とは何か・・・不人情とは何か・・・私はず〜っと考えてきた。
そしてそれがようやくわかった。
不実とは、見て見ぬふりをすること。
不人情とは昔を忘れることだ」
昌之助

 金之助の目の形がまた違ってきちゃったよ・・・
穏やかな口調ながら確実に決して逃がさないぞとでも言うような確信に満ちた昌之助の表情・・・が金之助を追い詰める。
「人情」という真綿でじわじわと首を絞められているよう・・・

 竹中直人さん、ぞっとするような圧のかけかたがすごかった。
きれいな布で包もうとしても見えてくる嫌らしさがなんともいえん・・


 耐えきれず退席した金之助は胃痛に必死で耐えた。

「あなた!」
「金だよ!金が欲しくてきたんだ!
こういう日が来るのを塩原の奴、待ってたんだ!
追い返してくれ!胃が痛いんだ!そう言って帰ってもらえ!」


 鏡子は金之助の兄・直燵(津田寛治)に相談に行き、
その頃の事情を教えてもらった。
そもそも実父・直克が金之助の籍を戻したがったのは愛情からではなく
金之助の兄たちが次々と病死し跡継ぎがいなくなりそうだったかららしい。

「親父は金ちゃんに冷たかった。
金ちゃんはそのまま家に居続けて、結局親父が買い戻したんだが
俺は子供心に思ったね、金ちゃんは本当は塩原にいた方が幸せだったって・・・
親以上の親だった。
あの塩原から離れて、金ちゃんの居場所が無くなった」直燵

 かわいがってくれたのは確かだったようです。
その頃羽振りの良かった昌之助は甘やかすだけ甘やかし金之助を育てた。
かわいくてしかたががなかったそうな。
金之助にとっても「父」と呼びたい人は昌之助だけだったはず。
夏目家に帰ってからも「子供」として頼ったことがあったらしい。

 親子の関係(血は繋がっていなくても)はホント不思議なもんだよね。
親だから見返りを求めず面倒を見て愛情を注ぐ、子供も親だから従い、その愛情を遠慮なく受けとる。
だからこそ「親であること」「子であること」を武器に使っちゃいけない。


 昌之助はその後も金之助と鏡子に自分が親であることを忘れさせないようにプレッシャーをかけ続けた。
そして身の上話で哀れを誘うように嘆くのだった。
裕福な名主の家に生まれた昌之助は何不自由なく育ち、父の財産を受け継ぎ余裕のある生活をしていたが、御一新で変わった世の中の流れに付いて行けず没落し、
240円で金之助を売り渡すはめになってしまった・・・

「わかりますか?落ちぶれるということのいまいましさが」昌之助
「・・・・・・わかります。私の父がそうでしたから」鏡子

 金之助に借金の保証人になるよう頼んで欲しいと頭を下げた父の姿と昌之助が重なる。
重一(舘ひろし)にみじめさを味合わせてしまったことは生涯忘れられない傷になったと思う。
金之助が昌之助から愛情をもらったのは確かなんだから、できれば力になってあげたいけど、こっちだってカツカツだからね。
それに昌之助の存在が不安定な金之助の精神を脅かしているのも事実。
葛藤の答えは誰も出してくれない。


「だったらおわかりでしょう。
『溺れる者は藁でも掴む』という気持ちが」昌之助
「でも夏目はか細い小さな藁です。
掴めばすぐに沈んでしまいます」鏡子
「・・・・・一緒に沈むのなら本望だ

 一人で沈むのが嫌だからって子供も一緒に引きずりこもうってのかい?
それを親心と呼んじゃ、この世の中の理がおかしくなっちまうよ。

 昌之助を見送る時の鏡子のなんとも言えない表情・・・
嫌悪感と悲しみと怒りが混ざりあったような。
人間らしい顔・・・


 金之助の胃痛はますますひどくなっていった。
ある雨の日、昌之助はまた夏目家にあがりこんでいた。
仕事を理由に放置していた金之助だったが2時間も待たせた末、追い払うこともできず、しかたなく会うことにした。
鏡子はもう一度縁を切って、あの念書を取り戻すよう伝えたが・・・・

 それができる金之助ではないんだよねぇ・・・
『情に棹させば流される』どころじゃない。
大きすぎる情の川を前に恐怖心で立ちすくみ怯えている。棹さす余裕なんてない。


 昌之助は金之助が持っているというパナマ帽を見せて欲しいと頼んだ。
でもそれは金を借りるための前フリだった。
高価なパナマ帽を持っている、大層な構えの家に住んでいる、新聞社からは800円の月給を持っているのだろう、それに引き換え私は・・・引け目を訴えながら、200円都合して欲しいと懇願していた口調はいつしか脅しに変わっていた。

「断る!!」
「ほお〜お前は学生の頃、もう夏目の家に戻ったにも関わらず、
何かというと家に来て『肉が食いたい、羊羹を食わせろ』、
はては『今日一日家を貸せ!』『友達と酒盛りをする!』
俺がそれが嫌だと断ったことがあるか?!
カツがそれを断ったことがあるか?!」


 胃痛に耐える金之助と、その回りを歩きまわり追い詰める昌之助の地獄の淵に立っているような戦いがすさまじかった。
精神的にも肉体的にも極限状態にある金之助の目の前に昌之助はあの念書をつき出した。


「不実不人情とはお前のことだ!!」

 鏡子がパナマ帽を手に部屋に入ったら金之助が倒れようとしていた。
なのに昌之助はパナマ帽を見ると大喜びで被って見せるのだった。

「どうです、奥さん・・似合いますか?」

 狂っている・・・鬼になっている。
この時の三者三様の立ち位置が絶妙だった。
昌之助の悪意に討ち倒れている金之助と
それでもな正義であるかのようにお金の要求を止めない昌之助、
そんな二人の様子にショックと恐怖で呆然と立ち尽くす鏡子。


「奥さん、金之助はね、こんな高級な帽子を被りながら、
たった200円の金が融通できないと言うんだ
これは・・世間に言いふらさなきゃいけない!
夏目金之助は不実の男だと!
こんな男の書く小説に一文の値打ちもないんだと!」昌之助
「・・・・そんな事言う筋合いは・・あっ!・・・鏡子・・・
胃が・・・胃が・・・胃が痛いんだ・・・」

 苦しみのたうつ金之助を前に仮病を疑う昌之助。
ニヤニヤしながら金之助をのぞく姿に鏡子もキレちまったさ。

「塩原さん、よくご覧ください。これが仮病?・・・・
よく御覧なさい!!

「鏡子!もう言うな!・・・この人は・・・・いい父親だったんだ・・・・
たった一人の大事な父親だったんだ・・・・」金之助
「でも・・・」鏡子

 この時の言葉にできない懇願するような思いを込めた金之助の目・・・
憎い相手だったら悩まない。
心から父と呼んだ人だから、そんな人がしていることだから心が揺さぶられるし苦しむ。

 金之助の言葉に怯えたように昌之助は部屋を出て行った。
自分がどんなにあさましいことをしているのか、やっと気づいたのか・・・
そんな養父も人間、そして金之助も同じく弱くて情けない人間の一人なんだよね。

 竹中直人さん、このどうしようもなくいやらしい養父の役、楽しんで演じたんだろうなぁ・・
こういう役好きそうだもん (* ̄m ̄)
この後のオノマチさんとの傷をむきだしにしたような人間同士の戦いの図はすごかった。
互いの存在感を感じ合いぶつかり合う姿に見ているこちらも胸もヒリヒリしたべよ。


 鏡子はなけなしのお金100円を手に雨の中、昌之助を追いかけた。

「持って行ってください。
これで私たちは一文無しです。明日から質屋通いです。
見てください。質札がこんなに。
私たちには子供が4人います。お腹の中にも一人います。
小説を書きたい若者もたくさん集まります。
毎日どうやって賄っていくか・・・
小説を書いても、まだ質屋と縁が切れないんです!

でも、塩原さんは今、お金が必要なのでしょ?
急場をしのがなきゃならないんでしょ?!
そういうお金でしょ?!!
でしたら・・その100円、差し上げます。
その代わり、念書を返してください!夏目の書いた念書を!」

「だめだ・・・念書はダメだ・・」

「じゃあ、これは差し上げません。
必要なんでしょ?今、これが必要なんじゃありませんか?!
だから恥を忍んで来られたんでしょ?!」

「・・・・そうだ・・」
「夏目がああやって倒れてしまえば、この念書はただの紙切れじゃありませんか。
おぼれて掴む藁ほどの値打ちもありませんよ!」

「・・・・・・・」
「念書の中に互いに不人情はよそうと書いてあるでしょ!
うちの人は人情はありますよ。
あなたはどうなのですか?!


 泣きそうになりながら昌之助は懐から念書を取りだした。
「もってけ」
それを鏡子がむしり取る間に昌之助はお金の入った封筒を掴んだ。

 二人ともずぶぬれになっているのに、せめてものお返しに壊れた傘を置いて行く昌之助が悲しい・・・
悪い人ではないんだよね。
いい時代にはいい人でいられた。
こうなってしまった自分を一番責めているのは自分だろうに。

 ざんざん降りの雨、光の射さない道、窓の向こうに見える幻のような、でも確かな鏡子の姿・・・
創り方がうますぎる。


 鏡子は腑抜けのようになって青い顔で座っている金之助に念書を渡した。

「多分・・・あの方はもういらっしゃらないと思います・・・そんな気がします」

 金之助は静かに念書を破った。

「これでまた一人・・・身内が減った・・・
身内というのはやっかいだが・・・自分が生きて来た証拠のようなものだからな」
「おさみしい?」
「君はどうだった?
中根の親父さんを自分の手で切った・・・残念だが俺は君ほど強くはない・・・」

 念書は塩原にとって金蔓であったのは確かだけど、作家になった自慢できる息子と自分を繋いでいるか細い糸であり希望でもあったはず。
それをまた金で売り渡さねばならない塩原の無念と情けなさ・・

 そして大切な父であったはずの人に裏切られ、結局金で縁を絶ち切った金之助。
でも死ぬまでずっと心の奥に引っかかっている人だったんだろうなぁ・・

 必死に戦ったのに「君ほど強くない」と言われちゃ立つ瀬ないけどさ・・・
生きていくため、家族を守るためという鏡子の思いにブレはないはず。
いつのまにか強い母、妻になっていたんだね。

 来週はついに最終回。
文豪と呼ばれた男とその妻の物語だけど、これは特別な夫婦ではない。
闘いながら生きている普通の人間たちなんだなぁ・・と思う。
その姿が愛おしいし、とんでもなく魅力的だ。


 第一回 夢見る夫婦
 第二回 吾輩は猫である
 最終回 たたかう夫婦

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