雨宮 鳩子(多部未華子)は「ツバキ文具店」を営んでいた祖母のカシ子(倍賞美津子)が亡くなり、8年ぶりに故郷の鎌倉に戻って来た。
雨宮家は江戸時代から続く由緒ある代書屋(依頼人の代わりに手紙を代筆する)で代々女性が家業を継いでおり、祖母が十代目、鳩子が十一代目になるはずだった。
鳩子の母は鳩子が生まれてまもなく家を出ていたため祖母に育ててられた鳩子は小さい頃から有無を言わせず跡取りとしての修行をさせられていた。

 修行は厳しく友達と遊ぶことも許されなかった。
高校生になった鳩子はついに不満を爆発。カシ子と大喧嘩になり、わかりやすい形でグレたのち、高校卒業を機に家を飛び出したのだった。

「こんな家、もう二度と帰ってこねぇよ!!」

 カシ子のいなくなった家・・・
鳩子はもちろん「ツバキ文具店」を継ぐつもりはなく、この家を売り払う手続きを
終えたら出て行くつもりだった。

 ドラマや小説で舞台になることも多い鎌倉。
昭和の風情が残っているどこか懐かしい風景。
住んでいる人達もそれを愛し大切に守っていこうとしているのが伝わってきます。
ツバキ文具店の前には守り神のような大きな椿の木があり赤い蕾がたくさんついておりました。

 実家は子供だった自分を思い出させられる場所。
いい思い出も哀しい思い出もそこここに残っている。
どうしても過去と向き合わざるを得ない。


『この家にいい思い出なんてない』

 鳩子もそんな自分に戸惑っていた。
昔から台所の柱に貼ってあった『春苦み、夏は酢の物、秋辛み、冬は油と心して食え』という一文。
剥がそうとするけど剥がせない。
祖母の生活の息吹を消し去ることができない。

 大げんかの時、祖母に突き飛ばされて破いた障子を鳩子が修理した拙い痕。
祖母が代書に使う道具をしまっていた蔵。
毎日風を入れるよう言われていたが鍵が見つからない


 葬儀を終え、なんとなく手持無沙汰に過ごしていた鳩子の前に祖母が亡くなる前に
代書を頼んでいたという婦人(冨士眞奈美)が現れた。
サイダーのような細かい水玉のワンピースを身に着けたその女性を
鳩子は心の中で「マダムサイダー」と名付けた。

 彼女は孫の鳩子が責任を持って手紙を完成させるよう強引に言い置いて行った。
内容は亡くなった砂田さんのうちの権之助さんへのお悔やみの手紙。
権之助さんとは心臓に持病を持っていたお猿さんだった。

「心を込めて!お願いね!」
『この威圧感・・・・断れない・・・』
HPはこちら

ツバキ文具店

多部ちゃんにはきちんと躾をされて育った子というのがしっくりなじむ。
姿勢、立ち居振る舞い、言葉遣い、普通になされる気遣い。
乱暴な言葉を放っても上品さが残るから安心してドラマの世界に没頭できる。


 鳩子は適当にさらっとペットを亡くした飼い主に向けての手紙を書き、
マダムサイダーに渡した。
すると・・・マダムサイダーは激怒。

「あなた!権之助さんを何だと思ってるの?!
おばあ様だったら、こんな失礼な手紙は絶対に書かないわ!
もう一度やり直してちょうだい!!
一度引き受けた仕事はやり遂げるのがプロというものよ!」


 そう言われても鳩子にはどう直したらいいのかわからない。
様子を見に来てくれたバーバラ婦人にグチってしまった。

「最愛の人を亡くした人に対して他人ができることなんて何にもないのよ。
何かできるとしたら、相手の心に寄り添うことだけ」B婦人

 鳩子は権之助さんと一緒に暮らしていた砂田夫婦に会いに行ってみた。
権之助さんは6年前山の中で親猿とはぐれていたのを砂田さん夫婦が見つけ、
それ以来砂田家に引き取られたそうで、ご近所の皆さんからも愛されていた。

 妻の京子(原日出子)は温かな笑顔で鳩子を迎えてくれたが、
まだ権之助さんの死を受け止められずにおり、夫の久雄(小林隆)も
妻を思いやりながらも深い悲しみの中にいた。

「権之助は私たちの天使だったんです」久雄

 権之助さんと一緒に写っている原日出子さんの表情がとても生き生きとして
愛情に溢れていたよ。
3人で過ごす様子も喜びに満ち溢れていて幸せそうだった・・(´;ω;`)ブワッ
子供に恵まれなかった砂田さん夫妻にとって偶然出会った権之助さんは
大切な大切な家族だった。


 鳩子は自分の書いたお悔やみの手紙にはなんの心もこもっていなかったことに気づきました。
そして『こんなのニセモノじゃない!』と罵倒した代書屋の仕事と祖母がどんな気持ちでその仕事に向き合ってきたのかを初めて考えた。

「正直、私・・・たかが手紙一通って思っていましたから・・・」鳩子
「一通の手紙が人の人生をまったく別のものに変えてしまうことがある。
おばあさんがそうおっしゃっていたことがあったなぁ・・・」清太郎(高橋克典)

 清太郎が蔵の鍵の在り処を思いだしてくれて、蔵の扉を開けることができた。

『あの頃の匂いがした
蔵は部屋にしまいきれなくなった祖母の代書道具入れ。祖母の宝箱』


 蔵は祖母そのもの。
代書屋として生きて来た祖母の矜持が感じられる。
祖母の声が聞こえた。


「鳩子、その手紙に合った一番の道具を選んで、身を清め、
まっさらな気持ちで筆を握る。
お前の心がまっすぐならば、自然と筆は動く。
それが、代書屋だ」


 夜、鳩子は身なりを整え文机に向かった。

 不祝儀の手紙は決まり事が多いそうな。
お悔やみの場合、墨はいつもと逆に左回りにする。
墨の色は濃くなってはいけない。
封筒も通常は2枚重ねの封筒を使うが弔辞の場合は不幸が二度重ならないように
一重を使う。

 マダムサイダーの心に寄り添い、彼女と権之助さんを思い精神を統一すると・・・
降りてきた降りてきた・・・
鳩子の筆は自然と動き綴っていた。


『誰かに操られているかのような不思議な感覚だった。
それがマダムサイダーだったのか祖母だったのかは分からなかった』


 鳩子の書いた手紙はHPのこちらからご覧になれますョ〜

 新しく書きなおした手紙にマダムサイダーは大満足。
にゃんと筆跡までマダムサイダーに似ていたらしい。
マダムサイダーは初めてのラブレターを祖母に代筆してもらったこと、
そのおかげで夫と結婚できたことを嬉しそうに告白しておった。

「私はあなたのおばあ様のおかげで幸せな人生を送ってこられたの

『一通の手紙が人の人生をまったく別のものに変えてしまうことがある。
あの、古くて狭い部屋の中で祖母はそんな大それたことをしていたなんて
私は・・・知らなかった』


 鳩子が書いた手紙を読むことによってマダムサイダーの悲しみも癒され、砂田夫妻の心には幸せだった権之助さんとの思い出が悲しみと共にではなく楽しく蘇るかもしれない。

 メールが当たり前となった世の中だけれど、鳩子ほどの能力がなくても手紙は特別なものだと思う。
大切なことを伝える時、やはり便箋を出し、心を整え、どうやって伝えようかと悩みながらペンを持つ。
そこにはいないけれど、相手と向き合っている自分を感じる。
そして祈りと共に投函する。


 家を壊し土地を売り払う算段が進んでいたけれど、鳩子は「ツバキ文具店」に残り、代書屋をやってみることにした。
「むぎカフェ」の蜜朗(上地雄輔)の娘はーたん(新津ちせ)との手紙のやりとり、
祖母との生活がオーバーラップする鳩子の目覚まし時計、
清太郎を通して伝えられた祖母の言葉、
静かに咲いている椿の花・・・
小さなエピソードがきれいに繋がり、鳩子にその決意をさせた。


『どうしてあんなことを言ったのかわからない。
先のことだって全然わからないけど・・・
今、私はここに居たい』


 自分の心の奥から聞こえる声、その声に鳩子はずっと聞こえないふりをしてきたけれど、今、素直な気持ちでそのかすかな声に耳を澄まそうとしている。
新しい自分への期待が感じられる清々しい表情・・・
鳩子のこれからが楽しみだす。

 お隣の優雅なマダム・バーバラ婦人 (江波杏子)、
なにかと鳩子を気遣ってくれる観光ガイドの白川 清太郎(高橋克典)、
気のいい魚福の奥さん(大島蓉子)、
カシ子と親交の深かったらしい謎の「男爵」と呼ばれている老紳士(奥田瑛二)、
それぞれ何かを抱えていると思われ・・・ミステリーとしても期待が高まります。


 第二話 幸せの修了証書
 第三話 けじめの断り状
 第四話 最後のラブレター
 第五話 母へ贈る文字
 第六話 愛するチーちゃんへ 
 第七話 話せなかった思い 

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