いや〜5、6年ぶり?7,8年ぶり?に小説を読みましたよ。
なんか小説が読めなくて(家にあるものを再読はしていたんだけど新しいものは買ってもなぜか読めなかった。実用書とかノンフィクション的なもんばかりになってた)
もう新しい小説は読むことないのかもな・・なんて思ってたさ( ̄▽ ̄;)

 この本はどこかで講評でも読んだんだったか。
メモしておいたのを図書館で借りてきました。
久しぶりにページを捲るわくわくと、読むのが止められない興奮を味わいました。
そして読み終えたあとの充実感と寂しさ。余韻に浸る幸せ。
懐かしい感覚。

 5編からなる短編集なのですが、そのうちの2作品は著者が小学生4年生と6年生の時に書き「12歳の文学賞」で大賞受賞作品を改稿したもの。
読む前は、早熟な才能・・・きっと鋭いナイフのような・・
あるいは少女の冷めた目で大人を?・・・なんて思ったりしていたのですが

 あるがままを受け入れる力強さと柔らかい目線の心地よさ。
穏やかな光の中にいるような絶妙の軽さとぬくもりを感じました。
そして登場人物一人一人、地に足がついてるから言葉が生きている。

 すごいなぁ・・・作家に年齢は関係ないんだね。
わたしゃ、すっかりファンになっちまったよ。
って、ツイッターじゃタイトル間違ってつぶやいちまって、
『ヤバ!!』と、すぐ削除したけどさ( ̄▽ ̄;)

 どの作品も小学生の花実と工事現場で働いているお母さんとの日常をベースに
花実が出会った人生の事件が描かれている。

お父さんは亡くなったと言われているが、どうもはっきりしない。
お母さんは自分についても父親についても語ろうとしないし
訳ありなのを感じて花実も訊ねなくなっている。

「いつかどこかで」

 自分の父親の謎、偶然関わってしまった友達の優香ちゃんとお父さん(お母さんが離婚して再婚したため何年も会っていなかった)の再会、その後日談。

 読みながら、あ〜私も小学生の頃の方がもっといろんなことが見えていたかも・・なんて思ったよ。
現象を正確に見て、その奥にあるものも感じられた。
しょーもない自我が拡大して感覚がにぶくなっちゃったのかしらね( ̄▽ ̄;)

 子供というのは自分が子供だということを知っている。
花実の小学6年生という時期は、子供でありながらいずれ大人になっていくことがわかっている、子供と大人の世界どちらもクリアに見られる時期なのかもしれないなぁ。

 「花も実もある」

 母の再婚話と、その顛末。

 悩みがありながらも花実の日々はどこか軽やか。
多分、お母さんとの生活で生きる力を蓄えてきたから。
大人の事情に直面しながらも花実からは未来への不安よりも、受け入れながら歩いていくのだという覚悟のようなものが伝わってくる。

 大家さんの息子でニートの賢人との関わりは風で羽毛が動くような緩やかなものだったけれど、二人の人生の点と点がきれいの重なる様子にじわっときたよ。
親子で桃の花見に行ったことを思い出し涙を流す賢人に、人は一瞬でもいい、
心から感動した幸せな瞬間があれば、必ずまた歩き出せるんだな・・と思った。
美しい思い出が種となって、その人の心に根付き、いつかは必ず花が咲くんだと。

さよなら、田中さん14歳、明日の時間割

 「Dランドは遠い」

 友人達と一緒にドリーミングランドに行きたい!
中学では離れ離れになる彼女達と思い出作りがしたい!
でもDランドに行くには大金がいる・・
花実はなんとかお金を作ろうとするが・・・

 悲壮感がないのが花実のいいところ。
お金がない惨めさも貧乏の辛さも知っているけど、だからなんだという強さがある。
気持ちの切り替えもド根性ではなく、明るい陽ざしの中楽しく泳いでいるような
清々しさがある。

 「銀杏拾い」

 自然と映像が浮かんでくる、枯れ葉や秋の匂いも感じる作品。
銀杏拾いという花実とお母さんの毎年の行事、
そんな何気ない日常こそ、後になって愛おしく思い出す場面なのかもしれない。

 「さよなら、田中さん」

 同級生で隣の席の三上信也の目を通して花実と花実の母の姿が
描かれる。「さよなら、田中さん」の田中さんとは花実のことだったのだ。

 望んでもいない中学受験のための塾通い、受験の失敗を受けての母親の錯乱、
島流しのように山梨の全寮制の中学に行くことになった信也は自分を責め、
死のうとする。

 葛藤の中で信也は初めて父という人、母という人を知り、
兄や姉の心に触れ、怯えて縮こまっていた「自分」が目を覚ましたのを感じる。
まだまだか細いけど、その芽に自分で水をあげようとする信也がいた。
美しいラストでした。

 花実が信也の中で温かな灯りのような存在になり
生きていく上でのエネルギーを生んでいく。
それは生活の中で花実が母から受けてきたものだ。

 花実にとっては普通の、なんてことない行動や言葉が
信也の中で輝く光となっていくことに泣けてきた。
花実の母の『悲しいときにはメシを食え』という言葉にも。

 いや〜この本に出会えて良かった。
もちろん『14歳、明日の時間割』も借りてくるわ〜(←買えよ!ゞ( ̄∇ ̄;) )

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