「夏目漱石の妻」

2016年10月17日

「夏目漱石の妻」 最終回 たたかう夫婦

「あなたがお書きになった『坊ちゃん』・・・
あの中に清というばあやが出てきますでしょ?
性格は生一本で、男っぽいところがあるけど、優しくて。
四国に行った坊ちゃんに恋文のようなながーい手紙を書いて、
ああしろこうしろってお説教して・・・
・・・ふふっ・・アレ・・・・私でしょ・・?」

 鏡子の本当の名前は鏡と書いて『キヨ』と読むそうな。

「清はばあやだけど性格は私によく似てる。
死ぬ間際に同じ墓地に入りたいと頼むでしょ?
そこで坊ちゃんを待っていたいって。
あそこを読んで、コレ私だって・・・そう思ったんです。
アレは坊ちゃんの理想の女の人でしょ?きっとそうよね?」鏡子
「・・・・・・・・・だから清さんは私だって・・?」金之助
「・・・・・(大きくうなづく)」
「君はどこまでも君だね」
「え?」
「そういうことにしておこう。清さんは君だ」

 本当のところはどうだったのか・・・真実を問うのは野暮というものでしょう。
でも、その思い込みは鏡子を幸せな思いにし、
そういう鏡子を見ることで金之助も幸せな気持ちになれたはず。

 鏡子の思い込みは時に金之助を圧迫し苦しめるてきたかもかもしれないが
この大いなる楽天的な思い込みがあったればこそ金之助は『漱石』になれたし、
誰もが匙を投げるような気難しい男は人生の戦いの中で溺れることなく生きてこられたのかもしれない。

 人間関係はいろんな誤解で成り立っている。
大切なのは真実じゃない。
失望を繰り返してきた鏡子が、自分は坊ちゃんの理想の女性である清だと確信できた。それだけでいい。
その思いはきっと、鏡子が今後このうちを守る支えとなったでしょう。
そしてその誤解は鏡子がこの世を去る時まで続いたのだと信じたい。


『この旅は鏡子さんと金之助さんが結婚して15年目の
初めての波風のない安らぎに満ちた時間でした。
このあと金之助さんは『行人』『こころ』『道草』『明暗』などの名作を書かれ
明治の文豪と称えられました。
それらの作品は鏡子さんと共に戦った記録でもあると、私には思えます。
明治という熱い時代は終わりをつげようとしていました』


 そんな「明治の男と女」の奇妙だけれど、人間らしく生きた夫婦の物語。
二人の時間は、このあとも回りの人たちをも巻き込みながらも続き、
きっちりとエンドマークがついたのでしょう。

 漱石が死ぬ場面を描かなかったのも良かった。
夏目漱石の妻・鏡子を主役にしたことで常に軽やかでありながら
時に苦く、切なく、おかしく、閉塞感の中にも力強い光が感じられた。
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 さて、ちょこっとだけ振り返ってみますかのぅ・・・
小説のネタを提供した足尾銅山の元坑夫・荒井(満島真之介)は夏目家に
頻繁に顔を出すようになっていた。
鏡子(尾野真千子)はおもしろくない。

 そして穏やかに見えて突然大荒れになる夏目家。
自分の出張中にかわいがっていた文鳥が死んだのを見つけた金之助(長谷川博己)は
鏡子を責め、文鳥の葬式をすると騒いだ。
相手にせず「たかが鳥のために」と言った鏡子に手を上げた。
「無神経女め!!」

漱石の思ひ出――附 漱石年譜道草 (新潮文庫)吾輩は猫である (宝島社文庫)
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matakita821 at 19:15|PermalinkComments(12)TrackBack(4) このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年10月11日

「夏目漱石の妻」 第三回 やっかいな客

 連休は読書を優先しつつの〜んびり過ごしちゃたんで、
こんなに遅くなってしまいました( ̄∇ ̄;)
だもんで、今回はささっと・・ね。

 明治38年春、金之助(長谷川博己)が「夏目漱石」というペンネームで
書いた初めての小説『吾輩は猫である』は評判となり、作家として
世に知られる存在となった。

 そんな時、鏡子(尾野真千子)は家を覗いている奇妙な男を発見。

 部屋の中から見つからないように男を確認する金之助、
木戸のあたりから様子を伺う男、
少し離れた場所から男を警戒する鏡子・・・
3人三様の距離感がユーモラスででもあったのだが・・・
インクが染みだすように何やら嫌な予感がじわり。


 家に入った鏡子は棚の上にあるものだけでなく押入れの中にしまってある人形も
すべて横に倒した。
占い師の先生に「起こしておくと上向きの運を台無しにする」と言われたんだって。
それを直す金之助と、また倒す鏡子・・・
元に戻すんだけど、結局倒しておく金之助・・・(* ̄m ̄)プッ


『小説を書き始めて以来、金之助さんの神経は穏やかさを取り戻していました。
しかし、この2,3日は違いました。
落ち着かない様子なのです』
 語り・従妹の房子(黒島結菜)

 夫婦の関係はどんなもんだったかというと・・・
金之助は引っ越しを機に二つで38円(大学からもらう給料より高い)もする書棚を勝手に購入し、鏡子にキレられとる・・・
さらに新聞社から小説家として迎えたいという話しをもらった金之助は大学を辞めようと画策していた。

 もちろん鏡子は大反対。
育ち盛りの子供が4人いる。書生たちの面倒も見なきゃならない。
毎月180円は必要。質屋の世話にもなっている。
確実な収入を捨てるなんてとんでもない!
もちろん夫婦ゲンカですワ・・・

「新聞社が潰れることはあっても帝大が潰れることはありませんから!!」
「つまり・・・金か!生活か!
「そうです!」
ふんっ、くだらん・・・わかった!
いつも思うことだが君は本当に夢の無い人だね!
新聞社を断る!!
ったく!ポンポンポンポン子供産みやがって!

「・・・・・ポンポンポンポン?!( ̄皿 ̄;; 」

 一人じゃ子供は作れませんっての・・ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ
ひどい言いぐさだけど、夫婦ゲンカも年期が入り堂々としたもんだね。
てか、金之助はこういう場合強行したりはしないんだね。


 新聞社転職問題は2年後に決着がついた。
この頃から房子は花嫁修業のため夏目家に入っていた。
新聞社の主筆・渡辺が入社の説得に来たのさ〜。
シブイ顔をしていた鏡子だが房子から「月給200円」と聞き、いつのもように手のひら返し。新聞社いいじゃん!

 でも、大学を辞めちゃダメ!ってあんなにキツク言っちゃった手前、
今更新聞社に入りなさいよとは言えない。
小説家としても認められてきたし、月給もかなりいい額だし、そろそろ大学辞めてもいいよね?と思いつつ、鏡子に頼みたくはない金之助。
二人の表面的には折れてないぞ!とアピールしつつ、探り合いながら意見のすり合わせをしようとする駆け引きに笑えた〜


「これ以上は・・・・・お好きなように」
「じゃあ好きにするぞ!新聞社に入るぞ!」
「どうぞ!」
「いいんだな?!ホントにいいんだな?!」

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漱石の思ひ出――附 漱石年譜道草 (新潮文庫)吾輩は猫である (宝島社文庫)
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2016年10月02日

「夏目漱石の妻」 第二回 吾輩は猫である

 エンディングの軽やかな曲が流れ、当時の夏目家の写真が現れると泣けてくる。
なんでしょ・・
泣いたり、怒ったり、苦しんだり・・・でも大声で笑ったり。
人間の生活ってそういうことだ。

 文豪と呼ばれるようになった男も、そんな男と戦いながら生活をつくってきた女も
ひとりの人間なんだな〜としみじみ思える。
そして人間っておもしろいもんだ。人生って不思議だと思う。
いいドラマだよ。
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 さて、それでは振り返ってみますかのぅ・・
明治32年春、結婚して3年目、金之助(長谷川博己)と鏡子(尾野真千子)は第一子筆子の誕生を迎えた。
家族らしい形を整えた夏目家はほのぼのとした光に包まれていた。

『鏡子さんは幸せでした。
でもその幸せはつかの間の夢のようなものでした』

語り(房子・鏡子の従妹)(黒島結菜)

 こわーーーい!!( ̄□||||!!でもその通りだった。
今回は漱石えげれす留学の回だからね。
漱石と言えば神経衰弱。
もともと人間不信が深く根付いている金之助のことだから当然といえば当然の流れだったのかも。


 明治33年6月、文部省から英語研究の命を受けた金之助はイギリスへ2年間留学することが決まった。
その間、鏡子と筆子は東京の実家で過ごすことになった。

 イギリス出発を控え、準備に忙しい二人は思いっきり夫婦喧嘩ができるほどになっていました。
でもイライラカリカリしていたのは二人とも不安だったから。
離れて暮らす寂しさを感じていたから。

 9月に旅立った金之助は鏡子にこんな句を残していた。
『秋風の 一人をふくや 海の上』


 こういう寂しさを吹き飛ばしながらからっと生きていこうとする女性を演じるのはオノマチさんの真骨頂。
芯の強さとかわいらしさ、ほどよい湿り気が気持ちいい。


漱石の思ひ出――附 漱石年譜道草 (新潮文庫)吾輩は猫である (宝島社文庫)
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matakita821 at 16:43|PermalinkComments(2)TrackBack(2) このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年09月25日

「夏目漱石の妻」 第一回 夢見る夫婦

「おバカついでにひとつ聞いてもいいですか?
ひとつだけでいいんです。
たくさんの夢の中の一つを教えていただけませんか?
あなたの夢を・・・」
「・・・・・・・・作家になりたい。小説を書きたい。小説家になりたい・・
ふっ・・・夢だがね・・・ただの夢だ」

 面白かった。
見終わった後、『夢見る夫婦』というサブタイトルがしみじみと心に浸みた。
お互いの存在に夢を重ねた二人の手が繋がり、やっと夫婦として心も繋がったような。

「ただの夢だ・・・」と金之助は笑ったけど、
夢は口に出すことによって現実世界に舞い降りる。
鏡子に問われ、口に出したことによって、その夢は二人が気づかないうちに一歩踏み出した。

 鏡子という妻がいなければ「文豪 夏目漱石」はいなかった・・・かもしれない。
今まで自分の中にあった「夏目漱石」や「夏目漱石の奥さん」のイメージが消えて
新しいものが創られていく清々しい快感・・・
この純粋さを抱えた奇妙にかわいらしい夫婦が大好きになりました。
次回が楽しみだす。
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 さて、振り返ってみますかのぅ・・
明治28年、自室でごろごろとお菓子を食べながら読書する19歳の鏡子(尾野真千子)の姿から始まる。
東京虎の門の邸宅で女中のたか(角替和枝)に世話をされながら自由闊達に明るくのびのびと育ってきたのがすぐわかる。

 そんな鏡子に貴族院書記官長を務める父・中根重一(舘ひろし)がお見合いの話を持ってきた。
「今度の相手は」と言っていたから、何回か断ってきたのかしら〜?
帝大卒、松山で中学の教師をしている夏目金之助(長谷川博己)、29歳。

 写真を見た時の印象は悪くなかったみたい。
占い好きの鏡子は真夜中に屋根裏部屋でこの相手でいいのか鏡に尋ねておりましたぞ。

 懐かしいのぅ・・・(* ̄m ̄)
よく夜中の0時にトイレで鏡を見ると将来の結婚相手が見えるってのあったよね?
わたしゃ、怖くてできなかったけどさ。


 占いの結果は妹たちには話さなかったけど、鏡子は乗り気でお見合いの席に臨んだようです。
金之助が詠んだ『乗りながら馬の糞する野菊かな』という句にバカ受け。
その3日後、人力車に乗った金之助とすれ違った時、無視されるも、
妹に「私、あの方のお嫁になると思う」と言っておりました。

 普通ならムカーっとするかと思うが、鏡子は金之助のそんなツンとすました様子が
かわいいというか、おもしろく感じたのかねぇ・・・


 でも実は金之助もお見合いでおおらかな笑い顔を見せ、
お正月のカルタ会で金之助に全く気を使わず札を取りまくった鏡子に好印象を抱いた模様。

 金之助みたいな神経質なタイプにはおおらかな鏡子のような女性がいいよね。
親友の正岡子規をして「なかなか門の開かん城」と言わしめる気難しい男。
一緒になって細かいことで悩む女性じゃ相乗効果でますます気が滅入るもんな〜

 って、正岡子規は四草兄さんこと加藤虎ノ介さんでないの〜!
豪胆で優しい雰囲気がいい感じ。
でも、来週も出てくれるのかしら・・・


 金之助には鏡子の父の縁故を頼りに東京で新しい職を得たいという思いがあったようだが、うまくいかず熊本の高校へ転任。
二人は熊本で新婚生活を送ることになった。

漱石の思ひ出――附 漱石年譜道草 (新潮文庫)吾輩は猫である (宝島社文庫)
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matakita821 at 20:27|PermalinkComments(2)TrackBack(3) このエントリーをはてなブックマークに追加