マツさん、すいません 俊輔奮闘も首位陥落…横浜M
http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20110807-OHT1T00038.htm
 ◆J1第20節 柏2―0横浜M(6日・日立柏サッカー場) 横浜Mイレブンが、最後まであきらめずに戦う姿勢を故・松田直樹さん(享年34歳)にささげた。柏に0―2で敗れ首位から陥落したが、MF中村俊輔(33)がポスト直撃のFKを見せるなど奮闘。柏は4節ぶりに首位に返り咲いた。神戸は松田さんと同じ生年月日で親友だったFW吉田孝行(34)が2戦連続となる2ゴールを決め、浦和を下した。

 精魂尽きるまで走り回った。横浜MのMF中村は、後半35分には約25メートルのFKを直接狙ったがポストに阻まれた。終盤には相手を倒し、あわやこの日2枚目の警告という場面も。同44分の交代まで鬼気迫るプレーを続けた。「最後に代えられたのが悔しかった」と振り返ったが、木村和司監督(53)は「気持ちが前に出すぎていてけがも怖かった」と説明。首位攻防戦の敗戦に中村は「マツさんが見ていたら『だせえな。弱っ』って言われるかもしれない」と苦笑した。

 「マツさんと共に―」。ウオーミングアップに登場した横浜Mの選手たちは全員が背番号3のユニホームを着ていた。松田さんが昨季までつけていた背番号だ。松田さんが倒れた2日以降、中村は松本市内の病院を2度訪れた。2日は午後11時に到着後、病室で早朝4時まで、横浜Mで同僚だった松本山雅の木島良輔、安永総太郎さん、JFL長崎の佐藤由紀彦と共に、松田さんの昨年のプレーDVDを観賞。「やっぱりマツさんらしいな」と語りあったという。

 集まった1800人のサポーターも思いは同じだ。過半数が背番号3のユニホームで応援に駆けつけ、約8か月ぶりに「♪ナ〜オ〜キ、ナ〜オ〜キ、ナ〜オ〜キ、ナオキオレ!」と歌った。5日にマリノスタウンに設置された献花台には、この日午後8時20分の終了時点で6052束が届けられた。8日に桐生市内で営まれる通夜には選手も参列するが、関係者によると横浜Mのユニホームに寄せ書きをしたものをささげる予定だという。

 中村は「みんな頑張っていたと思う。リーグ戦が終わった時にいい報告ができるよう頑張ります」と切り替えた。墓前に7季ぶりの優勝を報告するためにも下を向いていられない。

 ◆松本山雅は7日にSAGAWA戦 ○…松田さんが所属していたJFLの松本山雅は7日のホーム、SAGAWA SHIGA FC戦に向け、松本大グラウンドで約2時間の調整。本拠地のアルウィン(松本平広域公園総合球技場)に設置された献花台にはこの日も多くのサポーターが訪れ、冥福を祈った。主将のMF須藤は「マツさんは常に勝ちにこだわり、チームの先頭に立って引っ張ってくれた。つらいけど、勝つしかない」と話した。


横浜M・俊輔無念、マツさんに勝利ささげられず
http://www.sanspo.com/soccer/news/110807/sca1108070505008-n1.htm
 J1第20節第1日(6日、柏2−0横浜M、柏)横浜Mは柏に0−2で敗れ、9試合ぶりの黒星で首位から陥落。昨季まで16年間所属した元日本代表DFの松田直樹さん(享年34)にささげる勝利はならなかった。柏は首位の座を奪回。神戸は3−2で浦和を破った。松田さんと同じ生年月日のFW吉田孝行(34)が2ゴールをささげた。C大阪は10日の韓国戦(札幌ド)でA代表初招集のMF清武弘嗣(21)が1得点などと活躍し、川崎に競り勝った。

 こみ上げそうになる涙を必死にこらえた。無念の首位陥落。MF中村俊は天国から見守る松田さんを思い、声を震わせ、無理に笑い顔を作った。

 「マツさんが見ていたら、『ダセぇ』とか『弱っ!』とかいわれたと思う。こういう大一番で結果を出したかった」

 2日前、昨年まで16年間横浜Mに在籍した松田さんが死去。試合前のウオーミングアップでは松田さんが背負っていた背番号3のユニホームを全員が着用し、敵地は「ナオキ・コール」に包まれた。黙祷(もくとう)もささげられ、イレブンは勝利への意を強くした。

 しかし、前半8分に先制されると、後半21分には懸命に戻った俊輔の左足先を相手のシュートが通り抜け、2点目を奪われた。2度にわたって松本へ、往復8時間かけて車を走らせた俊輔をはじめ、眠れない日々が続いた選手たち。心と体にむち打って走ったが、勝負は無情だった。

 ただ、誰も下は向かなかった。日本代表DF栗原は「強い気持ちだけじゃ勝てない。『まだまだだよ』ってマツさんは思っていると思う。もっと練習して強くなりたい」。俊輔も「リーグが終わったときに、いい報告がしたい」と誓った。

 4日夜、俊輔は松本市の松田さんの部屋を訪れ、壁に貼られた「努力」の文字と、テレビの上に置かれた自身の好プレーを集めたDVDを見つけた。34歳でも向上心を忘れず、サッカーを愛した先輩の心を感じた。

 「最後まであきらめない姿勢、そういうプレーをマツさんもしていた。常に声をかけて、気持ちを高ぶらせる。そういう雰囲気を作りたい」

 笑顔で目を閉じた松田さん。倒れそうな俊輔、そして横浜Mイレブンを支えている。





横浜M:大合唱「直樹コール」/柏戦から
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1108070008/
 選手全員が背番号3のユニホームを着て試合前のアップに臨み、サポーターは試合開始と同時に大音量の「直樹コール」でこれに応えた。突然の悲報からわずか2日。気持ちは切り替えるのではなく、すべてを背負ってピッチに立った。

 後半21分に、柏の秀逸としか言いようのないカウンターで決定的な2失点目。GK飯倉は尻もちをついた体勢のまま、しばらく動けなかった。しかし、戦いは終わらない。

 同35分、ゴール前中央から放たれたMF中村の鋭いFKが右ポストを直撃。直後に再び柏のカウンターが横浜Mのゴール前を襲ったが、最後まで追いすがり、食らいついたのはその中村だった。

 すでに1枚警告を受けていたが、ギリギリの対応で3失点目を防いだ。夏に入ってからは、疲労やけがの可能性を考えた早い時間帯の交代が定番だったが、「本当に迷ったところだが、気持ちも入っていたので」と木村監督の采配までをも動かし、後半44分までピッチに立ち続けた。

 内容は完敗だった。9試合ぶりの黒星を喫し、首位の座も明け渡した。だが、横浜Mにとっての“特別な試合”は「きょうで終わりじゃない」(MF中村)。

 「このリーグ戦が終わった時に、いい報告ができるように」と中村。横浜Mはこの日、満天下に闘う意志を示した。


横浜M:次の負け許されない/柏戦から
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1108070007/
 度重なる好セーブでチームを救ってきた横浜MのGK飯倉。その頼もしさは、大一番でも変わらなかった。

 前半22分、柏MFレアンドロドミンゲスのゴール左隅を狙った鋭いFKをはじき出すと、後半3分にも柏FW沢の至近距離からのシュートを止め、反撃のチャンスを待った。

 だが、21分に痛すぎる2失点目を喫し、尻もちをついたまましばし動かなかった。試合後は「言い訳はしたくない試合でこんな負け方をして情けない。マツさんは病室で闘っていたわけだし、闘わないといけないのに。次、引きずって同じような負けは許されない」と強い決意をにじませた。



神戸・吉田、大親友マツへ魂の2発
http://www.daily.co.jp/soccer/2011/08/07/0004339593.shtml
「J1、浦和2-3神戸」(6日、埼玉)

 4日に心筋梗塞で亡くなった元日本代表DF松田直樹さん(享年34)への思いを胸に、神戸のFW吉田孝行(34)が2ゴールを決め、浦和に3‐2で勝利した。また、J1会場で松田さんを追悼し、キックオフ前に選手らが黙とう、全員が喪章をつけてプレーした。

  ◇  ◇

 マツ、ありがとな‐。ゴールの瞬間、喪章を右手に、親友の背番号と同じ3本の指を天へと掲げた。FW吉田が、4日に他界した松田直樹さんにささげる、魂の2ゴールを挙げた。

 珠玉の2発だった。前半14分、ゴール前のこぼれ球を左足でしとめて先制点。続く19分には、右足で美しいループシュートを決めた。「何も考えていなかった。マツが体を動かせてくれたのかな」。万感の思いを込めた2得点を振り返った。

 松田さんと同じ77年3月14日生まれ。後に大親友となる男と出会ったのは、高校1年生の時だった。世代別代表、横浜M(99〜00年、06〜07年)で共にプレー。「誕生日にはお互い電話で祝っていた。16年間、オフには毎年連絡を取っていたし、本音を話せる仲。大親友やね」。最後の瞬間には立ち会えなかったが、病院で対面した。「頑張れって言われているような気がした。アイツのあんな優しい顔は初めて見たわ」。また、前を向こうと思えた。

 「明日神戸に戻って、(葬儀参列のために)またあさって群馬行かなきゃ。ホンマ、しんどい移動させやがって」‐。そう話した吉田の目頭には、涙が光っていた。


横浜 無念の陥落…「3」を背に決意の一戦も完敗
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2011/08/07/kiji/K20110807001362900.html
J1第20節第1日 横浜0―2柏 (8月6日 柏)

 天国の松田さんに白星をささげることはできなかった。横浜は6日、アウェーで柏に0―2で敗れて、首位から陥落した。昨季まで16年間在籍したJFL松本山雅の元日本代表DF松田直樹さんが4日に急性心筋梗塞のため34歳で死去。悲しみの中、必死に戦ったが、6月18日のG大阪戦以来9試合ぶりの黒星を喫した。この日行われたJ1、J2の全試合で試合前に黙とうがささげられ、全選手が喪章を巻いてプレーした。

 試合終了の笛が響くと、死力を尽くした選手たちは次々とピッチに崩れ落ちた。松田さんが天国に旅立ってから2日後に行われた柏との首位攻防戦に0―2完敗。後半44分に途中交代してベンチで敗戦を見守った中村は「マツさんに“ダセぇ”とか“弱い”とか言われそう」と唇をかんだ。

 試合前には全選手が、松田さんが横浜時代に背負い、永久欠番にする方向で調整中の背番号3のユニホームを着てウオームアップ。誰もが特別な思いでピッチに立ったが、気合が空回りした。前半8分にパスミスからゴールを許すと、後半21分にはカウンターから失点。後半35分の中村の直接FKが右ポストに嫌われ、ロスタイムには大黒がネットを揺らしたがオフサイドの判定。運にも見放され、6月18日のG大阪戦以来、9試合ぶりの黒星を喫した。

 心身ともに試合を戦う状態ではなかった。2日午前に松田さんが松本市内の病院に搬送されると、多くの選手が横浜から往復約8時間かけて病院に駆けつけた。中村は2日、4日と2度にわたって松本へ。兄貴分のことを考えると夜も眠れず、憔悴(しょうすい)しきっていた。4日夜にはかつて横浜に在籍した城彰二氏(スポニチ本紙評論家)、安永聡太郎氏(解説者)とともに、松本市内にある松田さんのマンションを訪問。壁には「努力」と書かれた紙が張られており、中村は「マツさんらしいなと思った。マツさんのように最後まで諦めない姿勢を持って戦ったけど…」と声を絞り出した。

 8日に桐生市内で営まれる通夜には全選手が参列予定。首位から陥落したが、下を向くことは松田さんが一番、嫌うことだった。中村は松田さんと一緒に食事した際に「年下で尊敬できるのはこいつだけなんだよ」と知人に紹介されたことがあり「これからも尊敬されるように頑張りたい。リーグ戦が終わった時にマツさんに良い報告ができるように頑張ります」と前を向いた。リーグ戦は残り14試合。必ず首位の座を奪い返して7季ぶりの優勝を成し遂げ、天国に最高の報告を届けてみせる。


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【J1:第20節 柏 vs 横浜FM】木村和司監督(横浜FM)記者会見コメント(11.08.06)
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00123486.html
●木村和司監督(横浜FM):
「全体的に見ると最後の決定力、決定的な仕事をする外国人にやられたという感じでした。そんなには悪くなかったと思うけど、そこのところで決められるか決めないかというとこかな。そのぐらいです」

Q:前半はサイドの取り合いでしたが、後半はマリノスの方がサイドで上回りました。どのように変えたんでしょうか。
「選手の気持ち。今日はサイドの攻防はひとつポイントになるとは言っていて、そういう練習もしてきた。高い位置で起点ができればもっとよかったが、そこからポケットで仕事をする。何回かあったけど、もう1回やりなおすとか、かなり前半の中盤にかけてこちらが優位に進めていたんだけど、点が欲しかったですね」

Q:試合の前の部分で、気持ちの切り替えはできていたのでしょうか。
「選手に言ってきたのは、ピッチに立ったらそういう言い訳とか、自分自身もそういう言い訳はしたくない。ただ試合に負けただけ」

Q:後半の最後に中村俊輔を代えました。もう少し早く代えようという考えはなかったのですか。
「本当に迷ったところです。気持ちも入っていましたし。悪いなと思ったんですけど、そのへんの判断も最後まで引っ張って、気持ちが前に出ていましたから、怪我が恐かったというのもありますね」

Q:今日試合で出た課題は。
「今日の場合はそんなに悪くなかったです。最後のところ、決定的な仕事する人が向こうにいたってことじゃないでしょうか」


【J1:第20節 柏 vs 横浜FM】試合終了後の各選手コメント(11.08.06)
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00123487.html
●レアンドロ ドミンゲス選手(柏):
「今日はすごく大事で難しい試合の中で、僕たちが先制点を取って、リードして試合を進められたのが大きかったです。得点を取ってからもそうですが、横浜は後ろに下がっているだけのチームではない。攻撃に出てくるのでスペースは普段より見つけることができた。横浜は質の高い選手が多く、自分たちも押し込まれる時間帯はあったが、きっちりと2点目を取れたのでよかったと思う。(2点目のアシストは)自分がボールを持って仕掛けた時に、自分の前に2人の味方がいて、後ろからジョルジ(ワグネル)が上がってくるのを感じた。その中でどのタイミングで誰に出すかは決めていなかったんですが、一番ゴールに近い選手がジョルジだったのでパスを出しました」

●栗澤僚一選手(柏):
「今日は守備から入ることに気を使った。その中で自分たちがスペースを見つけてからの攻撃がうまくいった。守備から攻撃の切り換えのところでスペースを目掛けて攻撃できた。今日はコンパクトにできていたし、やっぱり(中村)俊輔さんはフリーにさせたくない。サイドの選手もフリーにさせたくなかったけど、あまり持たれなかったということは良い守備ができていたからだと思う。前の選手が頑張ってくれてコースを限定してくれていたし、あとは暑くて切り替えの部分で勝っている、一歩うちらの方が出足は早いなとは感じていました。兵働とは仙台戦でもコンビネーションが良かったのでそれを続けることと、レアンドロや攻撃の選手をどう生かしていくかを考えていた」

●北嶋秀朗選手(柏):
「守備については監督から口うるさく言われている。センターバックのところとボランチのところと、俊輔が降りてくるところと、そういうところは気を使った。ボールを奪われる時もありましたけど、チームとして質の高いカウンターを発動させることができたんで、狙い通りでした。今日は内容的にはうまくブロックしながら良いカウンターを出していく、ボールを持てる時はしっかり飛び出していくというのができていた。そこは整理されていた」

Q:向こうの1ボランチの周辺は狙いどころでしたか。
「そこは狙っていた。横にレアンドロがうまく浮いてくれていたので、そこをケアされている場合は俺が降りてスペースを使う。それがうまくできていたと思う」

Q:前回の対戦時ではクロスからニアへのヘッドでゴールを決めていたので、今回は相当警戒されたのでは。
「ニアは消されていましたね。中澤佑二と栗原君にうまくケアされて、そこはさすがだなと思いました。なかなかニアに飛び込むタイミングがなかった分、レアンドロがフリーになって、こっちがダメならこっちという戦い方はできていたと思う」

●兵働昭弘選手(柏):
「勝てない時に球際のところで相手に行かれてしまい、ナビスコカップの仙台戦もそこで負けた。そういう球際の激しさ、セカンドボールを拾うというところをもう一度やろうとみんなで話して、まして相手は首位ですし、局面で負けていたら勝てない。いつも以上に厳しくいこうと思いました。F・マリノスは中盤からFWに良いボールが配球されるんで、自分としてはその出どころを潰すことを今日の役割だと思っていた。あまりフリーにさせないで早め早めにチェックしていければと思いました」

Q:栗澤選手と兵働選手との距離間も良く、2人でセカンドボールをかなり拾えていました。
「そこは(監督から)かなり言われるんで相当意識していましたし、それができないと優位に立てませんから。試合中にもクリとよく話しますし、練習の時も話しますし、良い関係でやれています」


●中澤佑二選手(横浜FM)
Q:首位決戦でもあり、重い意味を持つ試合だったと思いますが。
「いろいろなことがあり、今日は勝ちたいという気持ちで臨んだわけですけど、結果が2−0ということでレイソルの方が強かったということ。しっかりとフィニッシュできる外人が2人いて、そこの精度のところでうちより良かったと思います。今日に関してはレイソルの方が良いサッカーをしたということでしょう」

Q:精神的にも肉体的にも準備をするのが難しい試合だったと思います。
「ショックを受けていない選手なんていない。みんな頑張ったと思う。結果がついてくればよかったですが、ついてこなかったのは残念です」

Q:首位攻防に敗れ、首位を受け渡しました。これから競っていくこの相手をあらためてどのように思われますか。
「レイソルは非常にチームとしてのコンセプトがはっきりしていますし、90分を通して出ているメンバーが何をしなきゃいけないかを理解している。その中で外国籍選手の2人がゲームコントロールできていますし、そこに日本人がサポートして、良いバランスでできていると思う」


【J1:第20節 柏 vs 横浜FM】レポート:注目の首位攻防戦。勝敗を分けたものはわずかな決定力の差。老獪に勝ち切った柏が横浜FMを抜き首位へ躍り出る。(11.08.07)
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00123511.html
「ミスターマリノス 松田直樹3 これからも俺たちと共に」。
横浜FMのゴール裏に掲げられた横断幕、そしてサポーターからは在籍時に歌われた松田の応援歌が日立台に響いた。その歌声に柏サポーターも手拍子を送り、柏のゴール裏からも「松田直樹の熱き魂を忘れない」との横断幕が掲示された。松田直樹への追悼の意を込め、注目の首位攻防戦が幕を開けた。

序盤のペースを握ったのは柏。横浜FMは1ボランチゆえ小椋祥平の周りにはスペースができやすく、レアンドロ ドミンゲスはその周辺で味方からパスを引き出そうとしながら、中村俊輔や兵藤慎剛がそのエリアを警戒すれば今度はサイドのスペースを利用する。柏の先制弾は、そんな外と中の使い分けが顕著に表れたゴールだった。
左サイドのジョルジ ワグネルの対応に小椋が引き出されると、当然中盤の底には広大なスペースが生じる。レアンドロ ドミンゲスはその広々としたゾーンの中でボールを待ち続ける、いわば“どフリー”の状態にあった。8分、小椋のパスミスを北嶋秀朗が拾い、兵働昭弘からレアンドロドミンゲスへ。すでにスペースを得ていた柏の背番号10は狙いすましたミドルシュートを放つ。氷の上を滑るかのような弾道がゴール左下に突き刺さった。
柏と横浜FMには強固な守備とゲームコントロールの妙があり、先制した試合は柏が10勝1敗、横浜FMが8勝2分というともに高い勝率を誇る。したがって、この序盤の先制点は、その後の試合が柏のペースで進んでいくことを意味していた。横浜FMは中村が低い位置まで降り、パスを配ろうとはするものの、柏の作り上げる守備ブロックの前にバイタルエリアでのスペースを得られず、クサビの縦パスなど前線への効果的なボールがほとんど入らない展開が続いた。
ただし、横浜FMには劣勢時や停滞時でも、それを瞬時に無効化できるセットプレーという強大な武器がある。33分、中村のフリーキックから、セカンドボールに素早く反応した大黒将志がシュートを放つ。横浜FMの前半最大の決定機は、GK桐畑和繁が無難に処理をした。
後半は「今日はサイドの攻防はひとつポイントになる」と木村和司監督が勝負どころとして挙げたサイドに起点を置き始めると、谷口博之が両サイドに流れ、そこに2列目やサイドバックが絡むことで攻撃に厚みが出る。60分のキム クナンの投入も、頻度の高まったサイド攻撃からクロスボールを狙う意図があったのだろう。だが「高い位置で起点ができればもっとよかったが」と悔やむ木村監督。サイドから敵陣を深くえぐる攻撃とまではいかず、決定機につながらない。しかも両サイドバックが前目に重心を置くため、自陣は手薄になってしまう。
そんな横浜FMの陣形を見定めながら「切り替えはうちが勝っている、出足はうちの方が早い」と栗澤は感じ、奪った瞬間にはスペースを目掛けた攻撃を意識しながら試合を進めていた。そして、前半から何度か見せていたカウンターが66分、ついに炸裂する。栗澤からパスを受けたレアンドロ ドミンゲスは「ジョルジ(ワグネル)が上がってくるのを感じた」という。左足のワンタッチコントロールで振り向き、右足で左サイドを颯爽と駆け上がってくるジョルジ ワグネルへスルーパスを通す。ジョルジの左足がネットを揺らし、柏がリードを広げた。
終盤は横浜FMがリスクを厭わない姿勢とキム クナンへのパワープレーで嵐のような猛攻を柏に浴びせる。74分、キム クナンの落としから兵藤が放ったシュートはゴール左へ逸れる。80分、中村のフリーキックは右ポストを直撃。アディショナルタイムには大黒がネットを揺らしたかに見えたがオフサイドの判定となる。猛攻実らず、結局試合は2−0のまま柏が重要な首位攻防戦を制した。
90分を通して見れば、おそらく決定機の数は柏も横浜FMも変わりはなかっただろう。「最後の決定的な仕事する人が向こうにいた」とは木村監督の言葉であるが、決定力の差と、より老獪なゲーム運びで柏がわずかに上回ったというだけで、出来自体は悲観するものではなかった。確かにこの敗戦で首位からは陥落したが「マツさんは絶対に諦めなかった」と中村が語ったように、松田の熱い魂を受け継いだトリコロールの軍団が、たったひとつの敗戦で失速するとは思えない。次節、アウェイの神戸戦で巻き返しを図る。
一方、首位を奪回した柏には、前半戦で快進撃を見せていた頃の老獪な姿が戻ろうとしているのは非常に大きなことだが、横浜FMとの勝点差はわずかに1。「これを続けていかなくてはいけない」(栗澤)、「僕らはまだ何も成し遂げたわけではない」(桐畑)と選手たちも首位攻防を制した直後からすでに気を引き締めている。柏と横浜FM、そしてG大阪や名古屋を加えた首位戦線は、今後さらにヒートアップしていくに違いない。





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