新生マリノスの真ん中に天野純。
「何かやりそうな選手になりたい」

http://number.bunshun.jp/articles/-/829841
 元オーストラリア代表監督のアンジェ・ポステコグルーが監督に就任し、新体制でスタートした横浜F・マリノス。

 宮崎合宿ではGKからビルドアップし、つなぐ意識を徹底させる練習が目についた。ブロックを作って守備を固め、鋭いカウンターで勝星を稼いだ昨年とは異なる戦術に取り組んでいる最中だが、そのつなぎの中心になりそうなのが天野純だ。

 昨年、主にトップ下として33試合に出場し、5得点を上げてチームの中核に成長した。今シーズン、齋藤学、マルティノスという強力な両サイドが移籍し、攻撃面の戦力ダウンが危惧されているが、天野は彼らの不在を自らの進化で少しでも埋めようとしている。

監督交代するたびに苦戦してきたジンクス。

 チームには、ボステコグルー監督の新戦術の浸透が進行している。

 システムは、アンカーを置く4-1-4-1(4-3-3)になりそうだ。天野は左のインサイドハーフかシャドーのポジションに入っているが、まだレギュラー確定ではない。天野いわく「選手は横一線」だという。

「監督の中では、昨年の実績とか積み上げはゼロに近いですね。僕も最初の石垣島のキャンプではBチームだったんで。今はレギュラーで出られるように監督にアピールしている段階で、日々充実しています。ただ僕にとっては3人目の監督なんですけど、これまで監督が代わっていいことなかったんですよ(苦笑)。今回は、そうならないように気合を入れて危機感を持ってやっています」

 監督が代わり、戦術的な最大の変化はパスをつなぐサッカーに移行したことだ。GKから細かくパスをつなぎ、インサイドハーフに入った瞬間にスピードアップし、少ないタッチ数で一気にゴール前に迫る。前にうまく運べない時は無理せず、ピッチを広く使って回し、相手の隙を窺う。

「昨年、トップ下をしていた時は左右に自由に移動してやりやすかったですけど、今年はサッカーもポジションも違うんで、まだ整理しながらやっている感じです。まぁシャドーでは、割り切って前に出ていって得点に絡んでいかないといけない。インサイドハーフは攻守両面でやらないといけないですが、ここも前に絡むことが求められる。どっちも監督のサッカーでは肝になるポジションなので、すごくやりがいはあります」

齋藤、マルティノスが移籍した攻撃がやはり問題。

 練習を見ていて、気になるのはやはり攻撃面だ。齋藤学、マルティノスが揃って移籍したことで、新入団選手とともに再構築が求められる。

「痛いですよね。なんだかんだ前線で違いを作ってくれたのはマルちゃんと学くんだった。今年のサイドはウーゴ、イッペイ(シノヅカ)、テル(仲川輝人)、そこに新しく祐樹(大津)君、ユン(イルロク)が入って、そこに自分がどうかかわるか、ですね。

 今のところ左サイドでユンと一緒にプレーする時間が長いので、そこはちょっとフィットしてきてますよ。ユンは中に入って仕事をしたいタイプなので、自分とうまく入れ替わりながらプレーできると面白い。左サイドバックの山(山中亮輔)、匠(下平)くんといい選手がいるので、彼らとも絡みつつ、左サイドで崩して右サイドで仕留めるスタイルができればいいかなと思っています」

昨年秋に始めた体幹トレーニング。

 天野自身について言えば、自分磨きも進んでいる。

 宮崎合宿での全体練習後、天野はマット、ストレッチポールを芝の上に置き、念入りに体幹トレーニングを始めた。地味なメニューを黙々と30分程度つづけ、練習前にも近いメニューを行っているという。

「昨年試合に出続けて、自分の中で体幹は変えないといけないと思ったので、天皇杯の準決勝ぐらいから始めました。自分のポジションは、プレッシャーが激しい中で結果を出さないといけない。テクニックには自信があるんですが、倒れない強さ、相手をはがす力強さが必要だなって思いましたし、テクニックを活かすためにも体幹を鍛えることが一番だと思ってやっています」

 一昨年から始めた筋トレに加え、体幹強化を始めたことにも齋藤とマルティノスの移籍も影響している。

「昨年は、マルちゃんと学くんが攻撃をリードしてくれた。今年は自分がリードしていかないといけないし、自分がなんとかしないといけない。そのための体幹でもあるんです。まだ効果は分からないですが、軸がブレなくなるとパススピードが上がるし、当たりのある中でも質の高いパスを出せる。全体的なプレーの質が変わりそうな予感がしているので、早く試合でその効果を実感したいですね」

「ボールを持たせれば何かをやりそうな雰囲気を」

 ぱっと見るだけでも、体が少し大きくなった。猫背が改善され、背筋が伸びてプレーしている。また、フルコートでの練習ではボールを受けてから強く、速いパスを正確に両サイドに出していた。

 まだどこのポジションに置かれるのか分からないが、新シーズンのチームで天野が攻撃の中核を担うのは間違いないだろう。

「これから開幕まで、練習試合で自分が違いを出してチームのみんなに頼られて、かつボールを持たせれば何かをやりそうな雰囲気を出していきたい。そういう責任を持ってプレーして、チームを引っ張っていきたいと思っています」

 自覚は十分にある。

 そこに結果をしっかりと結び付けられるか。天野にとっては、プレイヤーとしての評価を高める最大のポイントになる。

「昨年は5得点でしたが、今年は7ゴール7アシストで、足して自分の背番号ぐらいの活躍はしたい。そうして俊さん(中村俊輔)のように相手に怖がられる選手になりたいですね。メンバー表に天野純って名前があるだけでそう思わせる選手に」

 天野は、まっすぐに前を見つめて、そう言った。

 攻撃サッカーが浸透するには、それなりに時間がかかるだろう。天野も前監督のやり方が体にしみついている分、回路を変えるのに苦労するはずだ。監督交代がいい方向に働いてこなかったという嫌なジンクスもある。

 だが、それらを乗り越えた時、ひとつ上のレベルの選手になれる。新しい取り組みと大きな責任を背負う姿からは、今シーズンに賭ける天野の強い覚悟が感じられる。
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