第24回「EZ!TV」で大泉洋さん特集されてましたね、スゲー!でも、いつまでも北海道限定タレントであって欲しいと願う“どうバカ”の一人です。というわけで、今回は大泉さんも出演しているミスターの初監督作品をプレビュー。
★★★☆(DVD)
「水曜どうでしょう」の最新作「ジャングル・リベンジ」でミスターこと鈴井貴之は、板敷きの簡易ベッドで背中が痛いと嘆くディレクターに、やわらかくなるから、と自分の寝袋を差し出した。が、その夜。ミスターはあまりの寒さに芋虫状態でシーツにくるまって眠っていた。
その姿を見た大泉洋はこう語った。
「あの人は人の犠牲になって、黙って死んでいくタイプだよ。(中略)寝れない寝れないと言って、人から寝袋を借りて、最後にはゆっくり寝た者。寝れないなら、僕の寝袋を使いなと言って人に貸し、自分は寒くて寝れず、最後には死んでしまった者」
監督・鈴井貴之はそういう男だ。この映画にはそんなミスターらしいシニカルな視線と、それを受け入れる温かさが溢れている。
「水曜どうでしょう」という北海道ローカル番組の人気者が製作した映画、ということで偏見もあるようだが、これはコメディではない。「水曜どうでしょう」の旅の道中のようなお気楽さとグダグダ感はない。人生を真摯に見つめ、人よりも真面目なばかりに不器用にしか生きる事の出来ない人々を、ミスターらしい視点で優しく描いている作品なのだ。
今や監督第3作「銀のエンゼル」が全国公開されているミスターだが、全ての始まりはここにある。初監督、自主制作、地方発、低予算。不利な条件の中、人とは違うものを作ろう!という意気込みが十分感じられ、トリックショットも多数見られる。そして、そんなミスターを応援しようと、三輪明日美、北村一輝、田口トモロヲ、小池栄子、本田博太郎、小野寺昭、金久美子、高瀬春名、きたろう等々、メジャー映画と見違うほどの俳優陣がキャスティングされている。
監督が意図して狙ったのかどうかは定かではないが、時折ローアングルが印象的に使われている。それは常に、映し出された人物の押し殺していた不穏な感情が表に出た時に使われている。タイトル「マンホール」から見上げたようなショットだ。
マンホールは字の如く「人が入れるくらいの穴」という語源がある。つまり、人が入れるくらいのサイズに設計した結果、ではあるのだが、逆に言うと「人が落ちてしまうギリギリのサイズの穴」ともいえる。
つまり、ここでのマンホールとは単なる「穴」ではなく、人が落ちてしまいそうになる心の闇の象徴でもある。
この映画では「夢のマンホール」なるものがあって、そこに願い事を書いて流すと願いが叶う、という都市伝説がモチーフとなっている。マンホールが心の闇の象徴だとしても、それは決して底なしではない。そこを流れる水路はいつか必ず、川か、海へと流れて行くはずだ。流れ着いた先は大きく広がった世界、心の闇もそこで解放されはしないか。
願いが叶う、とは、夢が叶う、とイコールではない。夢は叶えるためにあるが、願いは叶うためにすること、その心の持ちようは同じように聞こえるが、実は大きく異なる。
「夢のマンホール」を見つけた主人公達は、その先に何を見るのか?穴の先に必ずある出口、そこから射す光。「光」は希望の象徴である。夢であれ、願いであれ、その光に向かって進むことが重要であると説いている気がする。要は心がけ一つ。待っていても始まらない。「穴」=「暗闇」から抜け出すには、自分自身で動き出さねばならない、ということではないだろうか。
予定調和ではあるが、ラストでは全てが救われる。それはそれぞれが再び歩き始めたことでやっと始まる。Re:スタートではあるが「願いが叶う」というのは、そのスタート地点に立てる、ということ。そこからは自助努力、全ては自分次第なのだ。
実はこのメッセージには「水曜どうでしょう」での旅に通じるところがある。この番組での旅は常に過酷を極める。それでも大泉洋と鈴井貴之の二人+ディレクターの二人はゴールまでストイックに旅を続けるのだ。その姿に爆笑しつつも、なぜか静かな感動を感じるのは「自分自身で動き出さなければ何も始まらない」という彼らの姿があるからだ。
この姿勢は「man-hole」のラストと符合する。映画は願いを叶えるための再スタートで終わるが、「水曜どうでしょう」での旅は、願いを叶えるためにゴールへ向かうその過程だと捉えることが出来る。
だとすれば、この映画は鈴井貴之の映画製作の原点であって、「水曜どうでしょう」の旅の原点、つまりスタートへ向かうまでの試行錯誤と苦悩を比喩しているのではないだろうか?鈴井自身は「現代の若者の悩める姿」を描こうとした、と語っている。しかし人生を見出せないその姿は、かつての鈴井本人の姿ではないかと思う。だからこそ無感動な若者にも優しい視線で見つめ「歩き出せばいいんだよ」と語りかけている気が僕はしたのだが、どうでしょう?
「水曜どうでしょう」とは別物と言いながらも、ちゃっかりファンサービスがある。例えば、どうバカの聖地であり前枠・後枠トークを収録している「平岸高台公園」や粗大ゴミで家を作った「宮の森」でのロケがあり、onちゃん人形がさりげなく置かれてあり、「どうでしょう」のスタイリスト小松が衣装担当にクレジット。
何だかんだ言って、どうバカたちを見捨てないミスター。さすがだぜ。