第31回
★★☆(劇場)
豪華なセットに優雅なロイヤルライフ。性格のいい主人公に、気のいい仲間。そしてジュリー・アンドリュース久々の歌声。下品なネタもなく、ハートウォミングなお気軽さはファミリー向けとしてぴったりな作品だ。
だから毒っ気など望んではいけない。そういう映画なのだ。
そして驚くなかれ、この映画の製作者は「かつて」の歌姫ホイットニー・ヒューストン!出演シーンもなければ、歌が使われることもない。れっきとしたプロデューサーとしての参加なのだ。ボビー君にキャリアを滅茶苦茶にされた彼女、女優としては成功しなかったが、本気である。
前作から3年が経過しているが、劇中は5年後の設定。大学を卒業したミア(アン・ハザウェイ)はジェノヴィアに帰国するが、王位継承者問題に巻き込まれ、30日以内に結婚しないとその権利を失うことになってしまう・・・。
お気軽な映画と笑ってばかりはいられない。この映画の王位継承問題は、日本の皇室継承問題とも微妙に似ている。いや、いずれは同じ問題に直面するだろう。「女帝」については、海の向こうでも同じような意識で、同じような問題が起こるのだということがこの映画でわかり、対岸の出来事とばかりは言っていられない。
これについては、劇中でもそうなのだが、国民はさほど気にしていない。多くの国民が、男であろうと女であろうと、伝統ある王室をその家族が継承するには何の問題もないと思っている。しかし「問題」を唱える人々、それは周囲の取り巻き達(利害のある人々)であるように思える。なぜか国民以上に「こだわり」がある。
制度とか決まりごととか、人間が決めたことなのになぜかそれに縛られる。それは縛られた方が得する人々の問題であって、外野にはたいした問題ではない。王位を継承するのは血筋であったり、性別ではない。本人の適正、素養、だとこの映画では説いている。それは真っ直ぐな主人公の行動と、それを取り巻く人々を見れば一目瞭然だ。
といってもそれほど堅苦しい映画ではない。そこはディズニー、真っ直ぐなミアの姿に心温まる、ケチのつけられない優等生ファミリー映画になっている。王室問題なら、現実のイギリス王室の方がもっとリアルで深刻、かつスキャンダラスで興味深くあるくらいだ。
サントラにはリンゼイ・ローハン、ジェシー・マッカートニー、ケリー・クラークソン、アヴリル・ラヴィーン、などの人気若手シンガーが参加。中でもノラ・ジョーンズによる「ラブ・ミー・テンダー」はとてもいい!お勧めです。
続編によくあることだが、この映画も前作を見ていることが前提の作品。予習として見ておくにこしたことないのが難点。ジュリー・アンドリュースやヘクター・エリゾンドはもちろん、キャロライン・グッドールやラリー・ミラー、へザー・マタラーゾに至る脇役まで、前作と同じキャストが集結しているのはたいしたもの。
しかしながら、前作の恋模様は全く無視されているのがハリウッドのご都合主義的でいけない。無理矢理ストーリーを作ったのがミエミエなので続編はもう作らない方がいい(といっても本国では1億ドル越えの大ヒットだっただけに、作られる可能性はかなり高い)。だからストーリーは大して面白くない。展開はありきたり、だから家族向けと言えなくはないけれども・・・。
あともう一点。配給のブエナビスタは「プリティ・ウーマン」の成功にあやかろうと、全く関係ないのにゲイリー・マーシャル監督作品を勝手に「プリティシリーズ」として公開してきた。この作品も原題は「ThePrincessDiaries2:RoyalEngagement」であって「プリティ」なんてどこにも付かない。それはどうでもよいのだけれども、「ダイヤリーズ」=「日記」をタイトルに組み込んでいないので、劇中の日記朗読がどうもしっくりこない。これは気になるぅ。
プリンセス・ミアを演じたアン・ハザウェイは、大学進学で前作以来映画界から遠ざかっていた。アメリカ人には少ない彼女の上品なかわいさはこれからのキャリアを期待させる。何といっても日本ではLUXのCMに出ていた。近い将来、LUX・CM出演者オスカー獲得のジンクス(キャサリン・ゼタ・ジョーンズやシャーリーズ・セロン)を実現して欲しい。
頑張れ!ハザウェイ!ハリウッドでも女王になるのじゃ!