2005年03月15日

ロング・エンゲージメント

e31c43b3.jpg第32回

 貸切、貸切状態ですよ!月曜のレイトショーはいつも観客が少ないとはいえ、約450人入る劇場にたった一人。贅沢と言えば贅沢ですが・・・複雑な心境です。そもそもジュネ作品は全国拡大ロードショー向きじゃない。製作費高騰で買い付け額高かったんだろうな〜、拡大公開しないと回収できないのでせう。まさか打ち切りとかならないよね?

(以下、核心に触れる文面あるのでご注意あそばせ)

★★★★(劇場)

 恋人の死を受け入れられない。それが戦死ならどうするだろう?

 主人公のマチルド(オドレイ・トトゥ)は周囲の静止に耳を貸さず、運命を信じ、執念と自己中なワガママを武器にその真相を探ろうとする。その姿に共感できるか否かで、この映画の賛否が分かれそうだ。テンポよくストーリーが進み、登場人物が多くてなかなか覚えきれず、時折頭の中で整理しないとついていけないのが難。

 それでもジャン・ピエール・ジュネの織り成す魔法のような映像の数々に酔うこと間違いなし。オドレイ・トトゥとの「アメリ」コンビ復活で、「アメリ」以来なかなかハマリ役のなかった彼女の不思議ちゃんキャラも光っている。

 ストーリーはミステリー仕立てで展開し、事実は二転三転する。しかし真実を解明することよりも、愛する人への思いやり、戦場での仲間への思いやりが判明してゆくことで、主人公以外の登場人物の気持ちにも変化が訪れるようになる。そこには「誠実さ」こそ報われる、というメッセージが込められている。

 ファーストカットは、破壊されたキリスト像が半身をもがれ、打ち付けられた片手で宙に浮いている姿から、雨でぬかるんだ戦場が映し出されるクレーンショットだ。これは明らかに、十字架に磔になったキリストが釘を掌に打ち付けられた=手を故意に負傷させた兵士たち、のその後を象徴するものだ。

 手を撃ち抜いた者(ノートルダム、マネク)は生き残る=キリストの復活。手を負傷しただけの者(バストゥーシュ、フランシス)は死ぬ=復活に値せず。では、もう一人のアンジュは手を撃ち抜いたのに、なぜ生き残れなかったのか?それは彼が罪人だからだ。そう考えるとバストゥーシュが死んだのも姦淫のせいだとも考えられる。

 神の思し召しの元に生死を分けた、というのは考えすぎかもしれない。しかしこの映画では罪深き人々がみんな死に至っているのが興味深い。恩赦を却下した大隊長とアンジュを射殺した伍長はティナ(マリオン・コティヤール)によって復讐の裁きを受け、殺めたティナ自身も切首刑になる。

 だからこそ「誠実さ」がこの映画のメッセージだと思うのだ。結果、「主人公の執念」=「誠実さ」が希望の光を絶やさないことにつながっているように思う。

 アンジェロ・パダラメンティによる音楽は、この映画のようにセピア調であったり、デビット・リンチのような少し変わった映像によく似合う。ジュネのノイズを大音量で聞かせる演出も健在で、主人公が移動する際のスピード感のある空撮は場面転換にいい効果を与えている。

 またジョディ・フォスターが流暢なフランス語を披露。その力のこもった脇役ぶりに驚くはず。レオス・カラックスの分身とも言うべきドニ・ラヴァンの老けっぷり、マリオン・コティヤール、チェッキー・カリチョなどのフランス映画界の人気俳優が顔を出し、ドミニク・ピノン、ティッキー・オルガドなどのジュネ組も大挙出演し、ファンには嬉しいところ。

 そしてここには反戦の意も込められている。激しい戦闘シーンは壮絶で残虐。その恐ろしさは十分伝わってくる。今なお世界のどこかで戦闘が繰り返され、誰かが「死」を悲しんでいる。戦争賛成派の方は是非今一度考えてもらいたい。自分が戦場に行けばどうなるか?それだけではない、残された家族や恋人の気持ちは?声高ではないけれども、この映画ではそういう心の痛みもちゃんと描けている。

「戦争で多くの兵士が血を流しているって言うじゃな〜い」

 ギター侍こと波多陽区はこう斬った。

「でも子供達はみんな涙を流してますから」

 クライマックスでは「希望の光」がほのかに射し込みながらも、未来を照らし出そうとしている。それが予定調和であっても、意外と「信じる」気持ちが心地よい。

 マチルドは映画の前半で未来を予見するかのように、こんな台詞を言っている。

「奇跡はおこるんです」


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「歩くとき、痛くない?」恋の始まりを予感させる最後が良かった。ジョディ・フォスターは素敵だし、美しい映像、セリフも面白かったです。「君の微笑は、幸せの幕開け」「希望がないなんて、死んだほうがまし」「犬がオナラをするのは幸運の印よ!」でも、登場人物がやや...
★★★「ロング・エンゲージメント」オドレイ・トトゥ、ギャスパ...【こぶたのベイブウ映画日記】at 2005年03月17日 01:49
こ、これは・・・ デリカテッセンのジュネでもないし、アメリのジュネでもない。 どちらかというと、エイリアン4のジュネに近いのかなあ。資金の大半をアメリカが出資したからというわけではないだろうが、それにしても冗長な映画になったものだ。それとも、わたしがこの世
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アメリの監督&主演による新恋愛ミステリー。予告をみて、観てみたくなった作品。レイトショーにギリギリ間に合って着席。かなりガラガラ。 最初のうちはフランス語で混乱しながら、さらに登場人物がたくさん出てきてわけが分からなくなる。これは失敗だったかなとTの反応
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☆一途な女の子が白馬に乗った王子さまを迎えにいくミステリ調の物語☆海辺の村。灯台。マチルドのお家。こういった絵葉書のようにかわいい映像を楽しむというのもいいですね。でも戦場のシーンなど残酷なシーンもあります。このふたつのギャップの幅がかなり広くなっていま
ロング・エンゲージメント(UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES )【中高年のための映画案内】at 2005年03月17日 22:21
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ロング・エンゲージメント【そーれりぽーと】at 2005年03月19日 00:28
「直感? うーん、何だか共感できなくて、世界に入れず。こんなに凄い戦争のシーンまで描かれていただけに、この不完全燃焼は悔やまれる。」 今日4本目は「ロング・エンゲージメント」です。オドレイ・トトゥ主演。そこそこ期待はしています。これが今年45本目の鑑賞です。
ロング・エンゲージメント【30歳独身男Kazuakiの映画日記】at 2005年03月20日 17:32
「ロングエンゲージメント」を見ました。 アメリのオドレイ・トトゥが忘れられなかったので、 本当は戦争映画なんて、あんまり見にいく方では ないのですが、私は主演・男優とか、女優で映画に行っちゃうミーハー なんですよ。(^_^;)
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この映画、10点満点なら何点ですか(^^)? ※自分が観に出かけて・・・・・・ ← 後 悔  /  満 足→                    0点□□□□□□□□□□10点 ※友達が見るか迷っていたら・・・←止める / 薦める → ずっと上映時間のタイミン
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`直感`を信じる。      それは`奇跡`に耳を澄ますこと。 早速、見に行ってきましたよ! 「ロング・エンゲージメント」(原題:Un long dimanche de fiançailles){/hikari_pink/}{/hikari_blue/} えっと、出来る限り、この映画を見てLilyが感じたことを書き
ロング・エンゲージメント【- Fleur-de-lis -】at 2005年04月30日 22:05
昨日に引き続き映画を見てきた。 今日は「ロング・エンゲージメント」。「アメリ」大好きな者としては見ないわけにはいかない。 でも,ちょっとすぐには感想が書けない。かなり圧倒されました。ジュネらしい色彩やフラッシュ・バック,さりげない笑いのセンスや意味不明...
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評価 80点 「アメリ」のスタッフが再集結、オドレイ・トトゥ主演のラブロマンス映画。 もうとにかく感動の一言!!オドレイ・トトゥの演技にはほれぼれしますし、こんな純粋な 愛を見せられたらもう涙腺緩みまくりですよ。 (ネタバレになるので反転) 戦争で死んだと
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この記事へのコメント
手を撃ち抜いた人と、負傷の人とで
キリストの復活にひっかけるとは…さすがまつさん。
Posted by chishi at 2005年04月06日 10:24
こんにちは☆
TB&コメントありがとうございました!

Lilyが見に行ったときも、公開1週目のレディースデーだったのですが、わずか4〜5人しかいませんでした(^^;

すごくいい作品なのに、ものすごく早く公開が終わってしまって残念ですが、その分早くDVDが出るかな!?と今はDVDを楽しみにしています^^

ところで、すごくシンプルで素敵なBlogですね☆
Lilyも映画大好きなので、また見に来ます^^
Posted by Lily at 2005年05月01日 13:26
こんばんは。
私もキリストの復活と引っ掛けたところにすごい!と思いました。
言われてみれば…。面白い発見です(笑)。
戦争の痛みも確かにきちんと描けてましたよね。
まつさんのご意見はいつもなるほど!と思わせてもらえて楽しいです(笑)。
Posted by sachi at 2005年05月05日 22:38
はじめまして!TBありがとうございました。
DVDが発売されたとこなので、もう一度劇場では気づけなかった
細かい部分まで注意して見返してみたいと思ってます^^
Posted by にゃ〜 at 2005年08月15日 11:06