2006年07月22日

ラブ★コン

ウエンツ瑛二を探せ!第521回

★★★☆(劇場)

 古より「恋の障害」には王道のパターンがあった。

「ロミオとジュリエット」がそうであったように、家柄や身分はその代表例であり、他にも国籍、思想、学歴、年齢、最近では同性愛の一般化によって「性別」という「恋の障害」も珍しくなくなった。

 また異質な作品作り続けている「メリーに首ったけ」(1998)のファレリー兄弟は、「愛しのローズマリー」(2001)で「肥満」、「ふたりにクギづけ」(2003)で「身体障害」、「2番目のキス」(2005)で「趣味」という少し変わった恋の障害を描いてきた。

「障害」があればこそ盛り上がる恋。それは「いけない」と言われれば言われる程覗きたくなる「鶴の恩返し」の如く人間の性であり、世間への後ろめたさや嘲笑が「恋」の活力へと変換されるからにほかならない。

 所詮「恋のさやあて」は、恋をする当事者同士の「共通語」でしかない。

 つまり他人にとっては意外と大したことがない「障害」を、男女二人の間にだけに存在する悩みとして感情を共有し、二人で「障害」を転がしているだけなのである。

 人気少女漫画を映画化した「ラブ★コン」の障害もまた少し変わっている。

 それは三浦みつるの漫画「Theかぼちゃワイン」の如く男女の「身長差」が「恋の障害」になっているからだ。

 身長の高い小泉(藤澤恵麻)と身長の低い大谷(小池徹平)は、お互いに身長に対するコンプレックスがあるのだが、周囲も認める「ボケとツッコミ」の見事なコンビネーションを見せている。そんな犬猿の仲の二人だが、ふとした事をきっかけに小泉が大谷に恋をしてしまう。

 だが気になるのは二人の身長差、というのが本作の大筋。

 本作が不思議なのは、物語らしい物語がないにもかかわらずそれなりに面白い点にある。映画全体を見渡すと、本作はエピソードの羅列で構成され、小ネタを間に仕込む事でエピソードを連結し、全体が物語らしきものに仕上がっている事が判る。

 つまり「恋」を成就させることによって起こる主人公二人の感情樹曲線を起承転結に求めるのではなく、エピソード内の何気ない描写によって観客の中にある過去の思い出の中の感情曲線を揺らそうと試みているのだ。

 この「ラブ★コン」における少し変わったアプローチは、脚本を手掛けたのが放送作家の鈴木おさむであり、監督の石川北二以下多くのスタッフが映画初挑戦であるところに「目論み」と「成功の秘訣」が隠されている。

 映画の常識に囚われない映画らしからぬ映像表現の数々には、昨今のバラエティ番組やPVのような手法が使用されている。大胆な文字スーパーやイラストをCGで挿入するなど、この斬新さが「あざとさ」と紙一重なのは、出演俳優陣の徹底したデフォルメされたキャラクター作りがあるからこそである。

 谷原章介や温水洋一、寺島進、田中要次、南海キャンディーズのしずちゃん、はたまた畑正憲までがショートコントのような「漫画的」演技を披露し、フォトグラファー飯田かずなによるアートディレクションが「漫画の世界」と「現実世界」の狭間らしきニュートラルな世界観を構築させているのが見事。

 さらに十代に絶大な人気を誇る小池徹平が「ちび」な大谷役を潔く演じる事で、本作がコメディとして成立しているだけでなく、NHK連続テレビ小説「天花」での演技が酷評された藤澤恵麻が「奇談」(2005)に続いて演技開花して好演しているのが本作の成功に繋がっている。

 また適度に原作のエッセンスを詰め込みながらも、舞台を高校3年間に特化し、弟を姉に変更したり、二人の身長差を微妙に調整し直して原作ファンのイメージを崩さない点も好感が持て、関西弁の台詞がいいリズムを生んでいる(が、大阪出身の小池徹平、香川出身の藤澤恵麻、和歌山出身の玉置成美という関西周辺出身者をしても、やはり関西弁台詞は難しいようだ)。

 惜しむべきは終盤のバスケ対決で失速してしまっている点。

 急にデタラメぶりが影を潜め、二人の恋愛感情が高ぶる訳でもなく、全体の流れからするとクライマックスとして少し弱いのだ。

 それでも何とか観客に楽しんで欲しいというスタッフの意気込みは十分伝わり、昨今乱立する漫画原作映画化作品の中でも出色の出来となっている。

 本作の音楽を手掛けているのは川口大輔。ケミストリーや中島美嘉に楽曲提供している彼にとって初の映画音楽だが、その気概を感じさせず川口節も封印したキャッチーなスコアを披露している。

 また「風音」(2004)で加藤治子の少女時代を演じて個人的に注目していた加藤未央が主人公の元カノ役で出演。彼女は現在東京農大在学中で来年卒業予定。これからの本格的女優活動が期待できる。

「ラブ★コン」の上映館で印象的だったのは、若い女の子たちの「ため息」だった。

 まるでかつての「たのきん映画」=「田原俊彦・近藤真彦・野村義男主演のアイドル映画」の如く、小池徹平の表情の変化に騒ぎ、藤澤恵麻とのキスシーンでは悲鳴が上がる始末。

 本作のような類の作品が支持されることは、若者の間で援助交際などがもてはやされても、やはり誰もが「純愛」を求めている証拠でもある。

 僕はスクリーンの中のスターに陶酔する女の子たちを傍から眺め、何とも純粋で昔ながらの映画鑑賞する姿を微笑ましく思うのであった。



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加藤未央の壁紙は…【加藤未央応援ブログ】at 2008年11月04日 15:30
この記事へのコメント
こんばんは。

ぼくもこの映画は高く買っています。
まつさんご指摘のとおり、
クライマックスであるべきバスケット対決から失速したのが
とても残念でした。
Posted by えい at 2006年07月23日 21:45
唯一玉置成実の関西弁と演技は違和感がなかったのではと。
ただ、関西のオバちゃんを意識したようなファッションのせいで
ホントにオバちゃんキャラになってしまったのは
ちょっとかわいそうだったかなと。

どうも大阪弁というのはせりふとしてしゃべると
不自然になるようで。
・・・あ、でもその不自然さも「コント」として
計算のうちだったとしたら鈴木おさむさんってやっぱりスゴイ?
映画の前ふりに主演の2人のコメントがおまけ映像でついてましたけど
あのおっとりさからしたら藤澤恵麻ちゃんの苦労が想像できます。

娘が鑑賞に行った時は、悲鳴も笑いも大きくて
おまけにキスしちゃった事がそないにショックだったのか
泣いてる子までいたそうで。びっくりです。(笑)
Posted by Ageha at 2006年07月25日 11:27