2016年09月

 当社の近くには、横浜中華街があり、本来が食いしん坊の私はひまを見つけては、社員や職人たちと食べに行くのが楽しみになっている。徒歩圏内であるのがうれしく、いつもついつい食べ過ぎてしまう。先日、「中華懐石」という珍しい看板を見つけ、値段も手頃であったので、店内に入ることにした。
 
 この際、「懐石料理」の語源についての解説がテーブルに書いてあったので、ぜひ紹介したくなった。

 懐石料理は、日本では、もとは茶の湯の席で濃い茶を楽しむために、空腹を満たすよう供される軽食だった。濃い茶の刺激を和らげるためのもので、千利休が活躍した16世紀後半に誕生したという。

 だが、中国では、「修行中の禅僧が空腹と寒さをしのぐため、温めた石を懐に抱いた」といわれ、その禅寺に客人が訪ねてくると、何ももてなす食事もないときは、禅僧が抱いて温めていた石を客人に渡して、寒さと飢えをしのいでもらったいう。こうした人間の奥深いもてなしの心が「懐石料理」の語源だ。

 
 懐石料理は、「吸い物」に向付、煮物、焼き物の「一汁三菜」が基本。さらに客をもてなしたいとの気持ちから「強肴(しいざかな)」や、酒のさかなとして「八寸」が並べられる。
 茶事の一環だったので、亭主がすべてを取り仕切り、客の好みや体調まで考えて出していました。もともとは不特定多数のお客に出す料理ではなかったのですが、心を尽す姿勢に人を感動させるものがあったためか、いつしか料理屋で供されるようになったとのこと。

 お客様に「心を尽くす」ことは、どんな商売でも基本は同じ。建築工事やリフォーム工事で、どのように心を尽くすことができるかは、まさに永遠のテーマ。中華懐石をおいしくいただきながら、今、仕事をいただいているお客様にどのように心を尽くすか、改めて考えさせれた。

 当社で働く大工さんに、Sさんという50代後半の人がいる。彼の自慢は25歳になる美人の娘さん。
いつも財布のなかに娘の写真を入れているというから、相当の親バカぶり。銀座の美容院に勤務
する娘さんは仕事上からも、いつもきれいにしていて、先日も現場の休憩時間にその写真を見せ
てもらうと、確かに「超」のつくほどの美人。
 
 銀座という場所がらもあって、さまざまな「誘惑」もあるようだが、「私は職人の子。私は美容の職人
として生きるし、人生の伴侶も、職人の中から探す」といつも毅然とした姿勢を取り続けているという。

 朝は午前6時に起床し、帰宅はまっすぐ帰宅しても、深夜12時になることもしばしば。休みもほとん
どなく、それでも収入は月額・額面16万円にしかならず、大好きなおしゃれもできないらしい。

 そんな娘を持つ大工さんの夢は、娘のために、小さくても素敵な美容院を作ってあげることだという。
私もあれだけの美人はそうそう見たことがないが、ふと50を過ぎた大工さんの顔を見ると、日焼けし
て年輪の刻まれた顔のどこかに、かつての「美男子」の面影がある。私が「大工さんもきっと若い頃は
相当、女性にもてたでしょう?」とからかうと、まんざらでもないような笑顔で返してくれた。娘のための
美容院が実現できる日が待ち遠しい。

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