当社で働く大工さんに、Sさんという50代後半の人がいる。彼の自慢は25歳になる美人の娘さん。
いつも財布のなかに娘の写真を入れているというから、相当の親バカぶり。銀座の美容院に勤務
する娘さんは仕事上からも、いつもきれいにしていて、先日も現場の休憩時間にその写真を見せ
てもらうと、確かに「超」のつくほどの美人。
 
 銀座という場所がらもあって、さまざまな「誘惑」もあるようだが、「私は職人の子。私は美容の職人
として生きるし、人生の伴侶も、職人の中から探す」といつも毅然とした姿勢を取り続けているという。

 朝は午前6時に起床し、帰宅はまっすぐ帰宅しても、深夜12時になることもしばしば。休みもほとん
どなく、それでも収入は月額・額面16万円にしかならず、大好きなおしゃれもできないらしい。

 そんな娘を持つ大工さんの夢は、娘のために、小さくても素敵な美容院を作ってあげることだという。
私もあれだけの美人はそうそう見たことがないが、ふと50を過ぎた大工さんの顔を見ると、日焼けし
て年輪の刻まれた顔のどこかに、かつての「美男子」の面影がある。私が「大工さんもきっと若い頃は
相当、女性にもてたでしょう?」とからかうと、まんざらでもないような笑顔で返してくれた。娘のための
美容院が実現できる日が待ち遠しい。