先日、大磯町在住の79歳のお客様Iさんからお手紙(封書)をいただいた。
当社で数十年前に工事をしていただいたお客様で、当社のことを覚えていていただいて、お住まいの老朽化がさらに進んだことで、雨漏れが止まらないため、ぜひ相談に乗ってもらいたいとの内容だった。お電話やメールでのお問い合わせがほどんどすべての現代に、封書の手紙でご相談を受けることは稀有に等しい。
早速、大磯町のIさん宅を訪問させていただいた。Iさんのお宅は、増築に増築を重ねているため、屋根の接合部に隙間と割れが出来てしまい、そこから雨漏れがしている模様。居室にも被害が出ていて、廊下や天井、押し入れも水をかぶって
床もぶかぶかな状態。Iさん(おばあちゃん)は「もう老人ホームに行って暮してもいいのだけど、できるならこの家で最期を迎えたい」と自分の思いを語ってくれた。
お話好きのようで、30年前にご主人を亡くし、女で一人で2人の子どもを育てたこと、故郷秋田から駆け落ちのようにご主人と神奈川県に出てきたこと、2人のお子さんのことなどを、とつとつと話してくれた。リフォーム工事のことより多くの時間を
費やして自分の半生を語ってくれた。別れ際には、「お酒好きなんでしょう」と日本酒を手土産にいただいた。そして先月から雨漏れ補修と屋根葺き替え工事が始まっていた。

突然、Iさんのお宅で工事をしていた職人から電話があった。どうも家の様子がおかしいとの連絡だった。本当に悲しい知らせだったが、工事中に急に体調を壊して
入院していたおばあちゃんが急死したとのこと。今までとてもお元気だったのであまりの衝撃に愕然としてしまった。当然、工事は中断し、ご遺族のご意向に従うつもりだったが、息子さんのご意見では「この工事の完成を母はとても楽しみにしていた。遺志を引き継いで工事を進めてほしい」とのことだった。確かにおばあちゃんは、亡きご主人を苦労を重ねながら、増築を繰り返し、少しづつ家を大きくしていった大磯の家に住み続けることを切に願っていた。現在、供養だと思って、完成を急いでいる。業者の立場で僭越かとも思ったが、生花を送り、告別式にも参列させていただいた。雨漏れの心配のない家に、おばあちゃんの魂が戻ってくることを
祈りながら、リフォームの最終局面を迎えている。おばあいちゃんの慰霊でもう一度、手を合せたい。