流星ワゴン


面白かったッス。

以前のエントリで、森絵都の作品を「リアル」だと評しました。
確かにリアルなんですが、すごくよくできたジオラマを見るようなリアルさで、どこか作られたような、無味無臭のリアルっていう印象でした。

一方で重松のリアルは別種の物です。

もうね、行間からすごく生活臭が漂ってくるの。
貧乏臭いんですよ。主人公の生活のディティールがいちいち。

あと、主人公の父親の造詣もすごく良く出来てて、田舎には確かにこういう強権的で押し付けがましいマッチョな男っています。こちらの田舎臭さの描写も秀逸。

こういう描写の巧さって、ちょっとした取材でどうこうできるレベルのリアルじゃないです。重松の実体験や作家としての地力だと思います。


あ、お話はですね、妻の浮気、リストラ、引きこもる子ども・・・と生活にくたびれて生きることに絶望した主人公が、5年前に交通事故死した父子の幽霊に導かれて、自らの過去を旅するって話。
こう書くとなにやら暗くて、陰惨な話に見えますが、差し込まれるユーモアと展開のテンポが絶妙ですごく「読ませ」ます。


昔はね、こりらっくま「後悔」は「後」で「悔やむ」から後悔なんだとかわけのわからんことを嘯いていましたが、最近「ほんとにそうだろうか?」と思うことがあります。

後悔することになる原因にさかのぼったとき、後悔の予兆というか予感はあって、あとで「やっぱり・・・」っていうパターンの方が多いような気がします。

いや、むしろ「やっぱり」と思うからこそ悔やむのかもしれません。


本書は、そうした「後悔」のポイントを主人公が幽霊父子と過去にさかのぼって旅するというしかけになっているのですが、せっかく過去にさかのぼっても主人公は未来を変えることはできず、絶望にさいなまれます。

結局、幽霊親子との旅を終えた後も、妻はテレクラに明け暮れ、子どもはグレたままです。

でも、そうした「後悔の過去」を追体験することで、主人公は自分を見つめなおし、父や、妻、子どもとの関係を見つめなおし、惨めな現実と立ち向かう勇気を得ます。
かすかな、しかし非常に力強い救いのあるラストには本当に救われます。

人生なんて選択と後悔の連続かもしれませんが、不本意な死を迎えた者(本書では橋本親子)からすればその「生」こそが最大の羨望であり、やっぱ「生きているだけでまるもうけ(明石屋さんま)」かなぁなどと思うこりらっくまでした。


あと、30歳以上40歳未満で、お子さんのいる方はちり紙必須です。
凄まじい破壊力です。
浅田次郎ほどあざとくはない、「泣き爆弾」が大爆発しますので、電車の中で読むことはお薦めしません。

それと映画化されるらしいんで、チュウさんの役は寺島進兄貴でよろしく。