Soraの本棚

2022年05月05日

開成・東大卒が教える大学受験 「情報戦」を制して合格する勉強法

51YHZzfjhnL最近、気がついたこと。
それは、
  ・読書していない
ということ。
最後のブックレビュー更新が、まさかの4年前って…。
マジかよ…。

ま、いいや(開き直り)。
久々のブックレビューは、
開成・東大卒が教える
大学受験 「情報戦」を制して
合格する勉強法
」(小林尚・著)です。

ご存じの方なら知っているはず。
Youtubeの「CASTDICE TV」にて、
大学受験やキャリア形成に関する配信をされているのが、著者である。
現在の大学受験の仕組み、その実情などが著書の中で触れられている。
業界の端くれ中の端くれである自分も、
「そうだよね」とうなずくものが多かった。

おそらく、Youtubeで配信されている内容よりも、
さらに深掘りした内容が書かれている。
現役の受験生のみならず、受験生を持つ親御さんも読んで損はない。
親世代がやってきた大学受験と、今の大学受験には大きな差がある。
例えば、センター試験と共通テストの違いはあるものの、
英語は、長文だけでも単語数がバカに増えに増えまくり、
「これ、速読大会かな?」と思うレベルになっている。
数学でも、花子さんと太郎さんのディスカッションから、
数学的考察を深める内容が出題されている。
昔からでは想像のつかないレベルで、大学受験は「進化」している。
その「進化」を、自分1人で網羅するのは難しく、
この著書は、それをコンパクトにまとめてくれている。

また、大学受験では、
「それを知らないだけで、ほぼ負け確定」な情報がたくさんある。
例えば、
「みんなが思っている以上に、逆転合格はかなり難しく、
 (世間一般で言うところの)難関大学の合格は、
 ほとんどが有名私立中高一貫校や、超進学校で占められている」
「学校から与えられる宿題、学校から指示される補習は、全てが悪ではないが、
 自分のためになっていないことが多い」
「そもそも難関大学に合格するのに必要な勉強時間は、
 累積で4,000時間(但し、学校の授業を受けている時間を除く)」
「高校受験の偏差値50と、大学受験の偏差値50は意味が違う」
など。
大学受験に挑むにあたっての常識を、
わかりやすくまとめているのも、この本の良いところである。



そういえば、うちの塾のバックヤードに、
先生用の本棚ができたから、
この本を、こっそり置いておく予定。


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2018年03月09日

小説・非正規 ~外されたはしご~

小説非正規小説・非正規
 ~外されたはしご~

(北沢栄・著)です。

普通であれば、非正規雇用の問題は、
評論として扱われることが多い。
このブログでも、そういった評論モノは
いくつか紹介している。
確かにデータとして、
「なるほど」と思うものがあるのだが、
非正規雇用で働くことのメリット・デメリットは何かを、
ドキュメンタリー形式で語っているものは、あまり見たことはない
(…と言っても、デメリットばかりだけど)。
まぁ、テレビなどといった映像では、
ドラマなどでも見かけないこともないと思うが、
小説として描いているものは少ない。

主人公である弓田は、東大卒であるにも関わらず、
非正規労働という立場に甘んじている。
普通であれば、考えられない。
非正規なので、カネはあまり得られない。
しかし、彼は働く中で、「体験資産」を獲得する。
弓田のいう「体験資産」は、はじめのプロローグでは、
「ただの強がりか?」と思ったのだが、
読んでいくと、弓田のしたたかな生き残り術と戦略に驚かされる。
最後は、小説ではありがちなのだが、
痛快な逆転劇が待っている
(半沢直樹の「倍返し」的な感じではないけどね…)。

もちろん、これは小説だ。
彼のように、したたかな生き残りができる人は、そうそういないし、
そこまで戦略を立てられる人もいないだろう。
どんなに「体験資産が…」と叫んだところで、
「え? でも、所詮は非正規でしょ?
 お前は何を今までやってきたの?」
と笑われるのも、なんとなくイメージできてしまう。

しかし、そうした中でも、希望はある。
やり方次第で、何とでも。
少しだけ、救われた気分になったし、
明日からまた前向きに、
やれること・やるべきことをやろうと思った。


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2018年02月22日

責任に時効なし ~小説巨額粉飾~

責任に時効なし責任に時効なし
 ~小説巨額粉飾~

(嶋田賢三郎・著)です。

この小説のモデルになっている企業は、
カネボウである。
そもそも、カネボウの倒産の遠因は、
「ペンタゴン経営」という多角経営である。
どうしても化粧品のイメージが強いのだが、
戦前に紡績会社として出発している
(鐘ヶ淵紡績、東武伊勢崎線の鐘ヶ淵駅あたりに創業地があった)。
戦後に、非繊維事業を分社化(鐘淵化学工業、現在のカネカ)、
その後、鐘淵化学工業から化粧品事業を買い戻している。
のち、食品企業・薬品事業を企業買収したことで、
紡績、化粧品、食品、薬品、日用品の5大事業を柱とした。
これが「ペンタゴン経営」(ペンタゴンは「五角形」という意味)と
呼ばれている理由である。
しかし、化粧品事業が好調だっただけで、他の事業は赤字が続き、
化粧品部門が赤字を埋め合わせるような形となっていた。
新規参入を図るも、それは全て借金で補い、
また、労使協調によって、
赤字部門のリストラも不徹底だった。
いわゆる「債務超過」の状態である。
債務超過がバレれば、上場廃止ということにもなりかねない。
そこで選択したのが、粉飾決算であり、
この小説では、その粉飾決算の顛末が記されている。

会計の知識があれば(たぶん、簿記1・2級くらいの知識があれば)、
粉飾決算のカラクリは理解しやすく、楽しめる内容だと思う。
それにしても、こういった小説を読んでいると、
「コンプライアンス」や「企業統制」だとか、
便利な言葉だけが先走りになっており、
重要な倫理感というものが、
経営トップに育っていない実例があることに、
歯がゆさを感じてしまう。
そんな経営トップの暴走を、
管理部門(経理部だとか)が阻止することができないのも、
なおのこと、歯がゆさを加速させている。
読んでいて、何度もその歯がゆさを感じた。

そして、思えば、どこかの格安旅行会社も、
粉飾決算で倒産したんだっけ?
過ちは、まだ繰り返される…。



なお、カネボウの倒産劇に関しては、
Youtubeのカカチャンネルの「しくじり企業」シリーズ
Chapter 10にも詳しい。
いわゆる「ゆっくり解説動画」で、ふざけているところもあるが、
それを差し引いても非常に理解しやすい。



そういえば、山一證券の倒産劇を描いた
「しんがり」を読みたいんだが…。


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2018年02月09日

おまかせ! 数学屋さん

おまかせ数学屋おまかせ! 数学屋さん
(向井湘吾・著)です。
第1巻~第3巻まで続く小説です。

八百屋でもなければ、魚屋でもなければ、
電気屋でもなく、数学屋である。
何なんでしょう、これ…?
僕は、数学が大好きな人間なので、
簡単に手が伸びるのだが、
「数学って、なんか小難しいアレでしょ?」
と敬遠してしまう人も多いはず。
それもそのはずで、(仕方がないとはいえ)中学・高校では、
勉強しても勉強しても、点数がなかなか上がりづらい科目の筆頭で、
「あーあ、自分には数学のセンスなんかないもん」
「自分には、数学とは無関係だからどーでもいいし」
と思い込んでしまうのがオチであるのだ。
確かに、数学は難しい。
だけど、身の回りに数学は隠れている。
保険数理は確率・統計がベースになっている。
第1巻にも書かれていたけど、
代数学をベースに、暗号理論というのができている
(どうでもいいけど、僕が通っていた私立中学校の過去問に、
 暗号理論の初歩的なことが書かれていたのを、読みながら思い出した)。



転校生である神之内宙は、
「数学で世界を救うこと」を夢として宣言した。
主人公である天野遥は、
その宣言に戸惑い、振り回されながらも、
ドタバタな学校生活を、数学を駆使して過ごしていくことになる。
その中で、毛嫌いしていた数学のおかげで、
1つ1つの困ったことを解決していく。

数学の知識があれば、読みやすいとは思うが、
知識がなくとも、主人公と同じようにうんうん言いながら、
楽しみながら読めると思う。
というか、やはり学校生活をテーマにしているから、
そりゃ、恋の1つや2つはあるわけなので、
かえって、難しいことは考えない方が楽しめると思う。



ずっと読んでいく中で、
第3巻の最後の方で、「ゲーデルの不完全性定理」が出てきている。
この定理は、一言で言えば、
「数学の理論体系は実は不完全で、
 理論体系の中で矛盾がないことを証明することはできない」
というものである。
正しさを積み上げれば、いつかは真理にたどり着くと信じてやまない人には、
天地がひっくりかえってしまうような衝撃を与えるものである。
ということは、「数学で世界を救うこと」は、
嘘であるということになるのかもしれない。

このあたりで、僕は涙が止まらなくなった。
なぜと言われれば、神之内宙の思いが純粋だったから。

それでも、あのドタバタした学校生活の中で、
「自分の理論の中」では偽であっても、
「誰かの理論の中」では、いや「宇宙全体の理論の中」では
真であることに気がついた。
こんな結末だったら、
もっと涙が止まらないじゃないですか!(いい意味で)



読書のペースが最近落ちているのだが
(「仕事が忙しい」という、もう聞きたくないであろう言い訳…)、
こういう小説に出会うと、
本当にこういう時間が貴重であることを思い出す。


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2018年01月25日

「使い捨てられる若者たち」は格差社会の象徴か ~低賃金で働き続ける若者たちの学力と構造~

使い捨てられる『使い捨てられる若者たち』は
 格差社会の象徴か
 ~低賃金で働き続ける若者たちの
 学力と構造~

(原清治、山内乾史・著)です。

ニート・フリーター問題を語るときに、
一定の「像」が存在する。
すなわち、「ニートとは○○するものだ」のように
語られることが多いということだ。

しかし、実際のニート・フリーターの実像は、
画一的に語れるようなものではない。
少なくとも、ニートに関して言えば、
自主的にニートになったケース
(「働いたら負けだと思う」と語った人のように)もあれば、
やむなくニートになってしまったケース
(例えば、病気で会社を退職せざるを得ない場合のように)が、
非常にイメージしやすいだろうか。

著書の中では、もう少し細分化しており、
分かりやすい言葉で、
「迷路で迷う」「結果的に使い捨てられる」
「迷路にたどり着かない」と記述している。
その上で、それぞれの性質を持つ若者に対して、
どういう対応が望まれているのかを論じている。
おそらく、ニート・フリーター論を、
一意的にではなく、多角的に論じている著書はなかなかない。
そういった意味では、非常に参考になるものが多かった。

そして、本書の中で、
われわれ日本人が、同じコミュニティーに住んでいながら、
他者への思いやり・共感が欠如しつつあること、
そして、人材は資産ではなく費用としか見ていないことに、
著者は警戒感を示している。
随所に温かい視線が感じられたのは、
個人的には、読んでいて安心感があった。


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