論客・佐高信氏『電力と国家』(集英社新書)を読みました。
 
 電力と国家 (集英社新書)
 
 まずは多少、冗長にはなりますが、目次を挙げておきます。
 
はじめに 電力を「私益」から解き放つために
 
第一章 国家管理という悪夢──国策に取り込まれた電力事業
 勲章を嫌った民間人/勲一等とは?/電力国営化の背景/昭和研究会/「官強民弱」の潮流/「電力の鬼」「壱岐の海賊」「財界の共産党」/『学問のす め』との出会い/電力戦争/電力国家管理法のモデルはナチスの「動力経済法」/革新官僚の台頭──奥村喜和男『電力国策の全貌』/電力国策要旨/官か、民か、新聞でも激論/「選ばれた敵役」の松永安左ェ門/統制派 VS 電力業界/抵抗むなしく「電力国家管理法」が成立/近衛嫌い/松永の予言どおり、日発の頓挫/引退か、転向か
 
第二章 誰が電力を制するのか──「鬼の棲み家」で始まった民の逆襲
 銀座電力局で「鬼」の復活/松永、GHQに一発かます/改革ではなく革命/松永案に否定的だったジャーナリズム/国会でも猛反対された松永案/「戦争責任」の不在/二人の援護射撃/青木均一の民営化賛成論/銀座電力局の助っ人/鬼曰く「多数決など存在せず」/ポツダム政令/木川田一隆の苦悩/新しい九電力会社の誕生/再び民間企業の手に/電力料金の引き上げ/「電力の鬼松永を退治せよ」/日本の復興は電力あってこそ/「電力の鬼、命を落とす」
 
第三章 九電力体制、その驕りと失敗──失われた「企業の社会的責任」
 木川田の逡巡と決断/ファウスト的契約/企業の社会的責任とは何か/平岩外四の変質/国家との緊張関係を失った東電
 
おわりに 試される新たな対立軸

 著者である佐高氏も自ら「はじめに」で書いているように、この書の大部分は、「電力の鬼」と呼ばれた松永安左ェ門氏の闘いにページが割かれています。
 松永氏は福沢諭吉門下であり、あくまで在野に生きて、官と闘い続けた企業人だったそうです。
 戦前には、電力は国家が管理運営するべきであるという法案に噛みつき、意が通らないと悟るや引退して蟄居。
 戦後には、電力会社再編のための委員会に招聘され、日本を九ブロックに分割して、それぞれのブロックに民間の電力会社を据える、という現在の電力事業の基礎を築きあげた人物です。
 その生涯を電気業界に捧げた生きざまゆえ、「電力の鬼」と呼ばれたとありました。
 佐高氏の論は、この松永氏の業績にくらべ、現在の東電の在りかたやトップの考えかたが矮小であり、官に媚びを売るようになってしまっている、というところに帰結していましたが……
 
 正直、それで終わりなの? と感じてしまいました。
 
 佐高氏といえば、評論家としても硬派なほうだと認識してますし、歯に衣着せぬ論調で有名なのだと思ってました。
 でも、結局のところ、電力の鬼の評伝や、そのころの電力関連の国会議事録、電気事業関係の論文などを引用し、気骨ある昔の企業人にくらべ、現代の君たち(=企業人)は恥ずかしくないのかね的、説法的な内容に終わってしまっている感が否めません。
 たしかに、この松永という人は凄い人だったようですし、そのことについては、おおいに伝わってきました。
 でも、松永氏の凄さに触れたければ、佐高氏が引用元として挙げている文献にあたれば良いわけで、薄手の新書とは云え、そのほとんどを評伝に費やされても困ってしまう、というのが本当のところです。
 私は、東日本大震災における福島原子力発電所の事故に相対したときの東京電力という企業体の問題点や、国家としての東電への対応について、佐高氏が明確に論じてくれるものと期待して、この本を購入したので、肩すかしを食らった気分になりました。
 現在の東電が、その昔、官から独立したときの理念やら信条やらを何処かに置きわすれてきたらしい、ということだけは解りましたが……
 逆に云うと、戦前から戦後にかけて、日本の電力業界がどのように変遷し、現在の体質を作りあげてきたか、という事柄に関しては、非常に簡潔かつ解りやすく、まとめられていると思います。
 なので、そういう観点で読めば良かったんでしょうけれど、前述のとおり、私は著者の論客としての意見を読みたかったので、ちょっとハズした感がありました。 
 
 やはり、新聞広告だけ見て本を購入するのって冒険ですね。
 実際に本屋で手にとって、ぱらぱらとでも目次を見ていれば、
「あれ? ちょっと違うかな?」
 と思って購入を控えたと思います。
 今回は、本のタイトルと著者の名前に惹かれて、相方に購入を頼んでしまったので、こんなことになりました。
 相方には手間かけちゃって申しわけなかったです。
 相方が、
「読んでみないと解らないこと、あるよね」
 と言ってくれる性格で助かりました(苦笑)
 やっぱり、ちゃんと自分で本屋に行かないとな、うん。
 
 
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