ジェフリー・アーチャーの処女作。タイトルを直訳すると「1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく」。一体、何が言いたいのか…意味不明なタイトルですね。因みに邦題は『百万ドルをとり返せ!』となっていて、こちらの方が取っつきやすい気がします。しかしながら、読み終えてしまうと「なるほど!原題のほうがいい!」と思ってしまいました。


 

英語難易度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★★

北海油田の投資話しに騙され財産を失った著者の実体験をヒントに描かれた作品。本作のヒットにより、アーチャーは借金を完済できたのだとか。

オックスフォード大学の数学者、画商、開業医、貴族の4人は北海油田の投資話にまんまと乗せられ、大金を騙し取られる。しかし、このままでは終わりたくない!4人はそれぞれ得意分野を生かし「1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく」騙し取られた金を取り戻そうと知恵を絞るが…と言った内容。

騙された4人はいわゆる育ちの良いサラブレッド。「生まれも育ちも良く、学歴もあるようなキラキラ輝いている人の弱点って何だろう?」と意地悪な私はつい邪推してしまうのですが、彼らの弱点はご本人たちは意識してないかもしれないけれど、揺るぎない自信をお持ちになっている点ではなかろうかと思うわけです。成功体験と相まって「自分が騙されるわけない。自分が人生の敗者になるわけがない。」と無意識に思っている。加えて、経済的にも恵まれているため投資するための資金を十分に持っている。貧乏人は投資しようにも無い袖は振れませんからね。また、地位も名誉も手に入れてしまうと退屈になってしまうらしく本書に登場する開業医のように「ゲームとして楽しみたい!」と上手い話しに首を突っ込むことになる。いずれにしても、自己の選択に絶対の自信があるのでしょう。「頭のいい人が、一体どうして?」と言うような事件が起こるのもこのためのような気がします。私のような自信のない人間は、上手い話しが転がってきたとしても「そんな幸運が私なんかに巡ってくるわけないよね?」と訝ってしまいます。第一、数字に弱いので投資とか無理です。こわいです。こわいから近づきたくありません。そういった意味でバカはバカなりに不幸にならずに済んでいるのかも。

サラブレッドはやはりサラブレッドらしく、騙されたとしても誇りは失わない。血で血を洗うようなえげつない報復は行わず、あくまで騙された分をきっちり取り戻したいだけ。それ以上でもそれ以下でもない。つまり「1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく」。最後までジェントルマンらしく、ユーモアたっぷりに、スマートに。因みに、騙した側は無学の叩き上げ。酸いも甘いも知りつくていて一枚も二枚も上手。こういった人間のほうが地獄を見ているぶん、サラブレッドより強い。果たして、サラブレッドたちは金を取り戻ることができるのか…。多少強引な展開もあったものの、最後のオチにはニヤリと笑わずにはいられない。

オックスフォード、エリザベス杯、ウインブルドン、貴族社会など「アメリカ人が憧れるであろうイギリスのイメージ」をイギリス人である著者のアーチャーがアメリカ人の心情をあれこれ慮って描いているように感じた。「歴史のあるイギリスって、すごいでしょ!」と言わんばかりの著者の声が聞こえてきそうな…。いや、すごいと思いますよ。その自信と誇り、私にもわけて欲しいです。