前回読んだShall We Tell the President?に登場した女性大統領Florentynaの親世代の話し。

Kane and Abel
Jeffrey Archer
St Martins Pr
2009-11-03


英語難易度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★★★

時代的には1906年~1967年頃。タイタニック号沈没、第1次大戦、世界恐慌を経て第二次大戦に突入し、ケネディ大統領暗殺付近の内容。長編、年代記と言ってよいと思います。アメリカ経済界をけん引した頭脳明晰な二人の男の生涯。誰かが主役という書き方ではなく、KaneとAbelそれぞれの人生を双方から描くような形式。特に歴史背景が興味深く、厚みのある作品でした。

Kaneは祖父の代から銀行家のアメリカ人。父親をとても尊敬していて将来、父と同様にハーバードを卒業し銀行家になる夢を持っている。ところが、幼い頃にその尊敬する父をタイタニック号沈没事故で亡くしてしまい母と祖母の手で育てられる。その後、母はヒモのような男と再婚してしまい愛に飢えて育つ。

一方、Abelはポーランドの森で出生間もなく捨てられていたところ、猟師に発見され貧しい家庭で育てられる。抜群の頭脳を買われ領主の養子となるもポーランドはドイツに侵略され領主は殺されてしまう。その後、Abelはロシアの強制収容所に送られ命がけの脱出を経て、アメリカに亡命する。アメリカに上陸時の年齢は13歳。Plazaホテルで給仕の職に就いていたところ、働きぶりを気に入られ新進気鋭のホテルチェーン店のオーナーにスカウトされる…猟師に拾われ、領主に見いだされ、オーナーに気に入られ…Abelは生まれながらに親父キラーなのかもしれない。

全体の半分に差し掛かる付近で、二人の人生が交錯し始める。あまりいい出会い方ではない。何かと対立する二人だが、二人のそれぞれの子どもたちが、ひょんなことから恋愛関係に陥り駆け落ちしてしまう。駆け落ちした父への書置き‘Never seek the wind the fieldーit is useless to try and find what is gone.’が何だかオシャレ。こんな文章がサラリと書けたら、いいのにな。

ストーリー本体もさることながら、歴史背景も興味深い。

例えば、フォード社がまだ小さな会社だった頃、どこの銀行も投資を出し渋っていたのだが、颯爽と駆け抜けていくフォード車のカッコよさに思わず振り返る通行人たちの反応を見て、Kaneの父が「これはいける!」と融資を決めるシーン。当時のフォードの車は黒のみだったので「色の種類を増やしたらどうか?」との銀行家のアドバイスに対してフォードが「いや、価格を抑えてとにかくたくさん売りたいので黒だけにする」と言ったというエピソードが面白い。

また、TVが普及する以前「あんな箱の中から声が聞こえてくるものが流行るわけがない」と多くの投資家が見向きもしない中、KaneのみがTV局に融資。やがて大きな放送局へと成長していったりする。こういった目利きの銀行家に見込まれると「そうか、この人が資金を融資してくれるということは、私はやれる人間なんだ」と自信につながりそうだ。

果たして、対立したKaneとAbelに和解の時は訪れるのか?
駆け落ちしたし子どもと再会せずに終わってしまうのか?

知性と素直さは、もしかしたら相いれないものなのかもしれない。プライドが高かったり、知力が感情に勝りすぎてしまうと、気持ちが置き去りにされてしまいそうだ。結末は、良かったとも言えるが少し淋しい。物語の終盤でAbelとKaneが少し離れた距離にいながら、決して言葉は交わさないけど帽子をとって目で挨拶する場面はジーンとしてしまった。何だかんだ言ってこの二人は互いを認め合っていて同時代を生き抜いた戦友。時代が時代だったら、いい関係を築けていたのだろうなあと思い巡らすと切ない。ここ一番の素直さって大事ですね。でも、自分の気持ちを軽々しくペラペラ喋らないのも、この時代の男の渋さであり、魅力なのですよね。

親の世代では対立したものの、駆け落ちした子どもの人生については、続編The Prodigal Daughterに書かれているそうなので、そちらも併せて読んでみたい。