司法書士事務所の補助者とは、司法書士が、その業務の補助をさせるために置く人員のことです。(司法書士法施行規則§25-Ⅰ)。

司法書士事務所には、司法書士だけでなく、その業務を補助させるための事務員を雇っている場合が少なくありません。この事務員のことを司法書士法施行規則の用語をそのまま使って「補助者」と呼んでいますが、わかりにくいので司法書士業界外の人に対しては「事務員」と呼称することもあるでしょう。

司法書士事務所の補助者の仕事内容を知りたいという方は、イメージを掴むために民事法研究会から発行されている「司法書士法務アシスト読本」(大崎晴由著) をご一読いただくとよいかもしれません。具体的に業務の内容が書かれていて、わかりやすいと思います。もっとも、司法書士事務所はたくさんあり、それぞれに雰囲気がちがいますので、そこに書かれている事務所は、比較的ありそうな一例を取り上げたものという理解でいいと思います。

司法書士事務所の補助者になりたいという方は、みなさんそれなりの動機があるのだと思います。よく言われる注意点をここでも述べておきましょう。

1.司法書士になることを目指しており、メリットがあると考えたから。

注意点 メリットはあります。いざ、司法書士として仕事をしようとするときに、実務経験があると当然ながら実務能力が、そうでない合格者よりも優れていることになります。たとえば、勤務司法書士として経験を積みたいと考えたときに、補助者として在籍していた事務所に、そのまま雇用してもらえることも多いと思います。しかし、司法書士試験の合格ということを考えた場合、補助者として勤務することは必ずしも合格の近道ではありません。補助者となった場合に、どれくらい勉強時間が確保できるのかを、きちんと考えておいたほうがいいと思います。 事務所によっては、残業をしなくてもよいように気を遣ってもらえたり、本試験前に休みを取らせてもらえたり、模擬試験費用を出してもらえたりということもありますが、事務所の責任者の人柄や、人的信頼関係、事務所の経営状態に依存するところが大きいものです。

2.法律に詳しくなることができる、と考えたから。

注意点 詳しくなることはできます。しかし、詳しくなるのは、その業務で取り扱ったきわめて実務的な部分(添付書類の原本還付するときは、事前にコピーを取って、「原本還付」と朱書きして、その近くに、「原本に相違ありません。司法書士○○○○」と書いて、申請印を押印し、複数枚にわたる場合は割り印する、など。)についてであって、法律を体系的に学ぶ機会は通常業務の中では少ないのではないでしょうか。朝4時から、補助者を交えて学習会を行う、という事務所も存在するようですが、一般的ではありません。 また、一般の方が「法律に詳しい。」いうのは、実務ではあまり役に立つことが少ない小ネタのようなものであったり、それぞれの専門分野を担当する法律実務家(社会保険労務士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など。)でないと、わからないような細かい規定であったりするので、司法書士事務所の補助者だからといって、法律に詳しくなるかというと、本人の興味しだいであって、普通に業務をしていても世間でいうところの法律に詳しくなる、という状態にはならないことが多いと思います。司法書士自身でも、「この土地の上に建物を築造できますか?建築基準法や関係法令に規定されていると思いますが。」と質問されても、専門外なので回答不能なのです。先例や通達、関係法令を自分で確認するような姿勢のある補助者であれば、司法書士業務についての法知識は相当蓄積されるでしょう。

3.雇用が安定していそうな気がするから。
注意点  事務所によりけりです。今後、債務整理の補助という業務が少なくなってしまいますので、むしろ補助者の数は減らしたいという事務所が多いかもしれません。廃業しない限り事務所は存続しますが、雇用が維持できるかどうかは別問題です。

4.法律に関する仕事ができてかっこいい気がするから。
注意点 実際そう思われているということですから、イメージとしては間違いではないかもしれません。しかし、現場は、イメージと違うかもしれません。個人事務所では、トイレ掃除からお茶くみ、コピー、お客様の接遇、その他司法書士本人でなければできないことはすべて業務となることが多いでしょう。移動も多いですし、「事務員」という言葉のイメージからはかけ離れています。とにかく大変です。「裏方」ではなく、「実働部隊」だという意識が重要です。

ざっと、思いつくものを挙げてみました。

では、司法書士事務所の方では、いったいどのような人間を採用したいのか、あるいは実際にどのような人間が補助者として勤務しているのか。列挙してみましょう。
1.親族
 配偶者や親兄弟などです。特に配偶者は、生計を一にしているので、司法書士としては、給与面についてプレッシャーがありません。また、職務に対する忠実性が高度に担保されているからです。

2.司法書士になりたい人
 一般的に、モチベーションが高いと思われ、業界内で将来生きていくことを考えると無茶もしないだろうという安心感があります。また、すでに勉強をある程度重ねているなど、基礎的な法律の素養があることが多く、実務と試験がきわめて親和性の高い司法書士制度のおかげもあり、実務の理解が早いのではないか、という期待もあります。

3.その他資格試験などを目指している人
 2.に準じます。

4.不動産業、金融機関、司法書士事務所、他士業事務所、関係官庁などで実務経験のある人
 年齢的には、若い人が採用されるケースが多いですが、そうでなくても経験値のある人は、なにかと役に立ちそう、という事務所の期待が働きます。特別に能力の高い補助者を俗にに「スーパー補助者」などと言ったりしますが、スーパー補助者は、在籍している事務所が廃業しても、就職は引く手あまたです。

5.その他実務経験のある人
 4.に準じます。全くの畑違いであっても、履歴書の職務経歴として、信頼できるものは好まれそうです。

6.ここまで読んでも補助者になりたいと思っている人、その他、薄給と激務に耐えることができそうな特別の事情のある人
 熱意がすべてです。熱意ある人材なら、とりあえず雇ってみるか、という事務所もあるでしょう。
司法書士会に赴いて、どうしても補助者になりたい旨を司法書士会事務局の方に切々と話して、採用する余裕のありそうな事務所を聞きだし、何度も頼み込めば……あるいは……

ほかは一般的な採用基準と変わらないと思います。たとえば、愛想があって、賢そうで、誠実そうな人は採用されやすいとか。まあ、司法書士事務所に限った話ではないでしょう。

また、個人事務所では所長司法書士(以下、ボス司)との相性は、極めて重要です。採用された後、 多くの時間を共に過ごします。 ボスと相性が良くなければ、かなり仕事に支障をきたします。実際、早く辞める人も少なくはないと聞きます。

最後に、求人についてですが、企業のように定期的に求人の募集をかけるところは少ないと思います。司法書士会の事務局に、補助者になりたい人の履歴書を置かせてもらえることが多いと思いますので、司法書士会に置いてもらいましょう。それなりに目に留まるはずです。司法書士のほうから、電話をかけてきますので、ひたすら待ちましょう。そのほか、ハローワーク、求人誌にも載っていることがあります。ただし、募集は短期間であることが多いと思います。小規模な事務所では、人がいなくなりそうになって、補充のために募集をかけるので、急募であることが多いのです。ですから、運の要素もあります。受験予備校や、大学の就職支援課なども当ってみるとよいかもしれません。求人があることもあります。あとは、ひたすら人を伝っていくしかありません。司法書士でなくても、とりあえず司法書士を知ってそうな人を伝って、司法書士を紹介してもらい、頼み込むという方法です。