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2015年06月

留守かあ……。
返事がないので去りかけた時、私が来た道と反対側から女性が歩いてきた。

「家に御用ですか?」

家主らしい。
私はチラシを手渡しながら挨拶した。

「実は私、迷子になっているこのシニア犬の飼い主さんを捜しておりまして。何か手がかりをとご近所を尋ね回っている次第です」
「迷子ですか。かわいそうに……」

女性は手に取ったチラシに目を落とすとつぶやいた。

「そっくり……」
「ひょっとして、何かご存じですか!?」

はやる私の言葉に、女性は首を振った。

「紛らわしい言い方してごめんなさい。あまりにもそっくりだったのでつい……」

聞けば、以前女性が飼っていた犬に似ているとのことだった。

「晩年は自力で歩けなくなってしまったんです。それでも気候と犬の体調が良い日はスリングで抱っこしながらのんびり散歩したものです」

想いを馳せて語る女性に悲壮感は感じられなかった。
人間の場合と同様、介護の日々に流れる時間は全てがポジティブな出来事ではなかっただろう。
それでも、看取り、見送り、かけがえのない瞬間を授けてくれた犬に感謝を贈り、女性は今を生きている。
私にはそう映った。
誰もが物質的な生命である以上、いつかはサヨウナラがやってくる。
人間を含めた動物の誰にも時間は平等だ。
そう。
かなしみに暮れていようが、怒りを抱えていようが、よろこびに寄り添っていようが、平等に時間は流れる。
それならば私は喜びに寄り添っていたい。
そよぐ風を気持ちがいいと感じていたい。
花を見てキレイだと思える自分を忘れないでいたい。
大切な人の微笑みに、大切な人との時間に、いちいち感動していたい。
幸せな瞬間に身をゆだねて、幸せだと思わせてくれた人や出来事に『残された時間』を捧げたい。
やがていつの日にかに訪れる大切な人とのサヨウナラ。
どんなカタチであれ、それはやっぱりさみしいし、かなしい。
だから私はこれでもかって泣く。
その後にこれでもかって感謝して、最後の最後は笑っちゃう。
願わくば、未来の私はそんな自分でいたい。
いちいち感動を覚えた日々なのに、私が悔恨の情に溺れたりかなしみに執着して人生の迷子になることを、大切な人はきっと望んでいないだろうから。
女性と犬の暮らしはそれに似通ったものだったのであろうことは想像に難くない。
そっくりだと言ったチラシの中のシニア犬に向けた微笑みがそれを物語っている。
そうだ。
ポジティブな意味で、私には『残された時間』をどう生きるかの選択の自由がある。
そうなんだ。
自分の意志で、辿りたい未来に歩いて行ける。
そうだよね。
今現在収容されているキミには、ネガティブな意味の『残された時間』しかない。
問答無用で、自分の意志は未来に反映されない。
急ぐよ。
キミがキミらしく生きれる未来を繋ぐ為に。
私が私らしく在れる未来の為にも。

「ところで、お一人で捜索をなさっているんですか?」
「いえ。ありがたいことにご協力してくださる方々もいて」
「チラシって、余分にお持ちですか? ご迷惑でなければ、私にもお手伝いをさせてください」
「ご迷惑だなんて。助かります!」
「それにしても、皆様お優しいですね」
「本当にそうですよね。自分の飼い犬でもないのに」
「ご自分もそうでしょう? まるで他人事みたい」
「え……あ……まあ……言われてみれば……そういうことになるんですかね」

女性はくすりと笑いながら頷いた。

「お節介ついでにもう一つ。このチラシの写真、もう少し大きい方がわかりやすいかと思います。自分だったら、文字よりも写真の印象の方が強く残ると思うので」
「なるほど。確かにそうですね」

女性は他にも、色や文言等のアドバイスをくれた。

「残りのチラシを配り終えたら増刷する予定だったので、早速参考にさせて頂きます」
「でしたら、今から作りますよ。その方が少しでも時間を有効に使えますでしょう?」
「いいんですか!?」
「はい。これ」

女性から、メモ書きを受け取った。

「ワンちゃんの写真データ、このアドレスに送ってください。出来上がり次第お電話差し上げますので」
「本当にありがとうございます!」
「いえいえ。これも何かの縁ですから」

縁。
この女性に導いてくれたあの猫に今一度感謝して、私は捜索の続きを開始した。
アスファルトに注ぐ容赦のない夏の陽光。
じれったい温風。
うだる草木に逃げ水。
紫外線による肌荒れに湿疹。
そのどれもにくらくらする夏が私は苦手だった。
けれどキミと出逢った夏の眩しさは煩わしくなかった。
そう笑って話せる未来を信じて待っていて欲しい。
私はチラシの中のシニア犬に向かって強く想いを伝えた。

〈続く〉

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富山桃吉




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翌朝から早速、シニア犬と出逢った場所を中心に飼い主さん捜しを開始した。
捜索の手がかりとなるシニア犬の写真は、動物愛護センターに運ばれる前に彼が警察へ赴き撮影してきてくれた。
シニア犬の毛色や体格等の特徴と写真、私の連絡先を記したチラシは午前中の内に完成した。
そのチラシを通行人に渡しながら、彼と手分けして一軒一軒訪問する。
けれども聞き込みの努力はなかなか実を結ばず、あっという間に数日が経過してしまった。
今日までに知人を含めた幾人もの協力者のおかげで、捜索範囲はすでに近隣数市に及んでいる。
それでも有益な情報は一件もない。
シニア犬が移送された動物愛護センターに毎日問い合わせをしているが、期待とは裏腹に飼い主さんからの届け出もまだない。
シニア犬だから難しいと覚悟はしていたが、案の定、動物愛護団体関係からの引き出し申請の問い合わせもゼロらしい。
動物愛護センターのホームページに掲載されているシニア犬の姿を見る度に焦燥感に駆られる。
もちろん収容中は最低限の飲食には困っていないはずだ。
だからといっていつまでもそれが続くわけではない。
収容期限は刻々と迫っているのだ。

「とりあえず次のエリアまで聞き込み広げてくるよ、オレ」

連日の猛暑による疲労が相当なもののはずなのに、彼は足を休めようとはしない。
時間はまだ残されている。
私も負けてはいられない。
滴る汗を拭って足を進めた。
その先の公園の生垣で、下涼みをしているネコを見かけた。
……ひょっとして迷子?
そうじゃないといいなあと思いながらチラシを差し出した。

「はじめまして。暑いね。あのさ、このシニア犬の飼い主さんを捜しているんだけど……」

猫はじいっと私を見上げている。

「そっか。知る訳ないか」

自嘲しながら汗を拭って、もう一つ尋ねた。

「じゃあさ、このシニア犬が処分を免れる為にはどんな解決策があると思う?」

猫は引き続きじいっと私を見上げていたが、やおら伸びをしながら立ち上がった。
立てた尻尾の先を少し前に倒しながら私に近寄ってくる。

≪猫の手も借りたいってことか≫
「まあ、否定は出来ないかな」
≪オマエ、猫と住んでるだろ?≫
「えーと……うん。住んでるけど」

猫は鼻をひくひくさせている。

≪その猫達、イケメンだねえ≫
「うーん……猫から見るとそうなのかなあ」
≪まあいいや。ついてきな≫

そんな会話をしたつもりになって、歩き出した猫の後を追った。
途中、塀の上や軒下等の猫道を通られたらどうしようと思ったが杞憂だった。
私が通れる道で案内された先に一軒の家が建っていた。

≪この家の奴も動物好きだ≫
「そうなんだあ」

どうやら『解決策』に繋がるかもしれない場所まで案内してくれたらしい。

「暑い中、わざわざありがとう」
≪じゃあな≫

猫を見送って、私はインターフォンに手を伸ばした。

〈続く〉

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富山桃吉

 


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「どうした迷子? 泣いてるのか?」

しばらくして到着した幼馴染の彼の問いかけに、私は俯くだけの返事をした。

「で、もう一人の迷子はどこにいるんだ?」
「……連れて行かれた」
「飼い主が見つかった?」
「まだ」
「だよな。ってことは……だよな?」
「だよね」
「だよなあ」

これだけの会話で通じ合える間柄の私達。
言葉にするのをためらう時はいつも、彼はそうしてくれる。
そんな存在のありがたみを再認識し、ちゃんと伝えたくなった。

「ありがとう」
「いいってばよ。わかってるって」

いつも変わらないあっけらかんな優しさが身に染みる。

「それにしても、オレの方を見てもいないのによくわかったな」
「そりゃあ、わかるってばよ」
「さすがオレ達の仲! テレパシーってやつだな、うん!」
「テレパシー?」

振り向いた私に、彼は得意げに差し出してきた。

「じゃあーん! ほれっ!」

カップラーメンを二つ握りしめている彼の満面の笑顔に、私はあっけらかんとした。
伝わらないこともあるよなあ……。

「ちゃんと伝わってるぞ! やっぱりテレパシーだ! 今、どっちの味を選ぼうか迷っているだろう?」

通じ合えない時もあるよなあ……。
だからこそ人は言葉を覚えたのかもしれない。
遠い昔の人も、こんな風に伝わらないもどかしさを幾度となく経験したのだろう。
例えば遠い昔のある時、仲良しのBを引き連れたAは背中で『こっち』だと伝えながら進んだ。
Aは当然自分についてきてると思って振り向くが、Bは『あっち』に進んでてぽっつーん……。
いくつものぽっつーんを繰り返して、時に腹を立てたり、がっかりしたり、かなしくなったり。
言葉の過不足で関係をこじらせて、簡単なことをわざわざ難しくしたり。
それでも人は孤独が苦手だから、結局誰かと関わりを持つ。
独りじゃないって安心させてもらったその誰かに感謝を抱く。
その誰かを大切に想い、幸せな気分を覚えるから伝えたくなる。
『ありがとう』って。
『好き』って。
シンプルな想いをシンプルな言葉で伝えられたらやっぱり私は素直にうれしい。
だから私は共に暮らす兄弟猫の二人にも毎日想いを伝える。
『いつもありがとう』って。
あのシニア犬は今まで、飼い主さんに何回『ありがとう』を伝えてもらったのかな……。
目を閉じると、ふいに彼が言った。

「だよなあ」
「え?」
「いやさ、動物はシンプルに生きてるから言葉がなくても普段は困らないだろうけど、迷子になった時はやっぱり困るよなあと思って」
「だよね」
「けどまあ、言葉にしなくちゃ伝わらない想いもあるし、言葉にしなくても伝わる想いもあるか」
「言葉にするのと言葉にしないのって、相手からするとどっちがうれしいのかなあ」
「どっちもうれしいんじゃね? 伝えたい相手がいるってだけで」
「だよね」

私は深く頷いた。
言葉を持たない動物にも言葉で伝える想いはきっと届くと信じているし、言葉を発しない動物の想いだって痛いほど伝わる時もあると実感しているからだ。

「なんにせよ、伝えたい時に伝えておかなくちゃな」
「そうだよ」
「わかった!」
「なにが?」
「伝える!」
「なにを?」
「オレの気持ちを!」

彼は真剣な眼差しで私を見た。

「私に?」
「そう」
「……なに?」
「オレは……」

彼が大きく息を吐いた。
すると、ぎゅるるるる。
お腹が鳴った。

「伝わったか? オレの気持ち」
「……まあね」
「よかった! じゃあカップラーメン食おうぜ」

当然、麺はのびのびだった。

「うーん、美味! お湯を吸ってのびたおかげで麺が増えた気がして、なんだかお得感があるよな」
「そう?」
「そう! だって、どうせ同じ時間を過ごすなら、ネガティブよりもポジティブに捉えた方がお得感があるし!」

本当にその通りだ。
私とシニア犬の物語にまだ幕は下りていない。
あのシニア犬が飼い主さんと再会できる為に、私にはまだやれることがあるはず!
相談しようと横を向いたら彼が宣言した。

「とりあえず、オレ達で飼い主さんを捜すぞ! だよな?」
「だよね」

私の想いは伝えたい相手にちゃんと伝わっている。
私は幸せ者だ。
この幸せをあのシニア犬にも繋いであげなくちゃ!
だって、キミには幸せが似合っているから。

≪ありがとう≫

伝わった!

「いいってばよ、キミ」

〈続く〉

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富山桃吉

 


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車から降りてきた二人の男のうち、若い方の男が見事に平坦な声で話しかけてきた。

「こんばんは」

残念だ。
現れたのはシニア犬の飼い主ではなく警察官だった。
おそらく例の住居人達の誰かが通報したのだろう。
続けて、若くない方の警察官が話しかけてきた。

「あなた、その犬の飼い主さん?」

声色こそ穏やかなものだったが目が笑っていない。
私を怪しんでいるのが見え見えだ。
適当な理由は通じそうにないので、私は観念して事の成り行きを話した。

「このシニア犬、どうなるのでしょう?」

私の切なる問いかけにも平坦の答えは淡々。

「時間が時間なので今晩は署で預かりますが、明日には動物愛護センター行きです」
「飼い主さんから迷子犬の届出はないのですか?」
「今のところは」
「警察の方で飼い主さんを捜すことは?」
「できません」

簡単に答える平坦にイラッとした私の様子を見て、若くない方の警察官が付け加えた。

「あなたの気持ちもわかりますよ。でもね、この犬、首輪もついていないでしょう? 随分と年老いているようだし、おそらくは遺棄の可能性が高い。もしマイクロチップも未装着となると、飼い主を捜すのは余計に難しい」
「そういうケースって、よくあるんですか?」
「少なくはないねえ。特に最近は」

一昔前と比べてペットは長生きになった。
良質なフードやワクチンの普及が背景にあるという。
ところが長生きをするようになった分、シニア期特有の症状を見せるペットも増えてきていると聞く。
認知症等で夜泣きをするようになったり、それまではちゃんと排泄できていたのに粗相をしてしまったり。
万が一に備えたペット保険だって今や耳に新しくはない。
それだけペットの存在を大切に思う人が増えたということだろう。
それなのに……。
家族同然に暮らしてきたペットを、年老いたからといって遺棄する飼い主が本当にいるのだろうか?
少なくても、息するペットを遺棄する選択肢は私の中に存在しない。
確かにこのシニア犬は病を患っているだろう。
けれども、飼い主さんとこのシニア犬は沢山の微笑ましい時間を共有してきたはずだ。
飼い主さんはこのシニア犬から、かけがえのない癒しを沢山もらったはずだ。
それなのに遺棄という別れの手段を選ぶ訳がない!

「あの……仮にこのまま飼い主さんからの届出がないと、このシニア犬はどうなるのですか?」
「収容期限内に飼い主さんか動物愛護団体関係が引き出さない限り、行く末は殺処分でしょうね」

平坦が淡々と言う『殺処分』の響きに目眩がした。
私と共に暮らす兄弟猫がもしも迷子になって、気づかぬうちに殺処分されてしまったら確実に悲嘆する。
そうだ!
そうだ!
飼い主さんにはきっと届出を出せない何らかの理由があるに違いない。
例えば、高額な治療費を払えない?
例えば、ペット不可の住宅で飼っていたのがバレて一緒には暮らせなくなった?
例えば、介護に疲れた?
例えば、飼い主さんも高齢で思うようにこのシニア犬を捜せていない?
あるいはまだこのシニア犬が迷子になっていることに気づいていない?
他に、届出を出せない、もしくは出さない理由があるとすれば何が考えられる?
見つからない答えを巡らせている私に平坦が告げる。

「そういう訳で、この犬は我々が連れていきます」
「ちょっと待って……」

一端は言いかけたものの、このシニア犬の飼い主が私ではない以上どうすることも出来なかった。
せめてお願いするしか出来なかった。

「このシニア犬、喉が渇いてて、お腹が空いてて、疲れてて……。それから、飼い主さんに再会出来る事を諦めてなくて……だから……」
「わかりました」

最後まで平坦な返答だった。
シニア犬が咳をした。

「キミ……」

ふがいない。
肝心な時に私の想いはそれ以上の音にならなかった。
間もなく、シニア犬は警察車両に乗せられた。
私はただ見送ることしか出来なかった。
警察車両が動き出し、やがて見えなくなった。
私は手荷物を拾い上げても直ぐには歩き出せなかった。

「……キミ」

夜のしじまに私の頼りない声が溶けていく。
マーブル模様に溶けきると、シニア犬の声が聞こえた気がした。

「キミ!」

今、鳴いたよね?
ううん。
泣いたよね……。

〈続く〉

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富山桃吉


 


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疲労が気力を追い越したのだろう。
ほどなくして、シニア犬の歩みが止まった。

「大丈夫、キミ? 私は大丈夫じゃないけど……」

原稿提出の締め切り日に迫られていた私は連日の徹夜続きがたたり、既に体力の限界をむかえていた。

「キミも喉が渇いたよね……」

とはいえ、迷子のシニア犬から目を離して水を買いに行くわけにはいかない。
とはいえ、シニア犬に一刻も早く水分を取らせてあげなければ!
どうしたものか……。
最上の解決策を求めて、私の思考が迷子になっている。
……ん?
迷子……?
迷子……あっ、そうか!
私は携帯を取り出し、履歴から馴染みの番号を表示して耳を押し当てた。

「はいよー。どうした?」

幼馴染の彼はいつもそうやって電話に出る。
何年経っても変わらない。

「あのさ、実は迷子になっちゃってさ」
「は?」
「だから、迷子に……」
「だから?」
「だから……」
「あのさ、今ちょうど三分経ったんだ。麺がのびちゃうから切るぞ。暇つぶしの電話ならカップラーメン食った後に付き合ってやるから。じゃあなー」
「ちょっと待った!」

慌てた私はシニア犬とのあらすじを伝えた。

「で、オレにどうしろと?」
「水を持って、直ちに迷子の私達を助けにくればいい」
「今すぐに?」
「今すぐに。車で」
「で、その後は?」
「私と一緒に、このシニア犬にとっての最上の解決策を探せばいい」
「で?」
「……で?」
「最上の解決策が見つからなかったら?」
「より良き解決策を探せばいい」
「それも見つからなかったら?」
「程よい解決策を探す!」
「で、それすらも見つからなかったら?」
「まあまあな解決策で」
「わかった。とりあえずカップラーメン食ってから向かう」
「いや、今すぐで」
「いや。嫌」
「いや。嫌」
「じゃあ、食いながら向かう」
「それなら『まあまあな解決策』だから許す」
「わかった。待っとれ」
「わかった。待っとる」

電話を切って、『まあまあな解決策』をシニア犬に報告した。

「とりあえず、彼が来るまで座って待ってなよ」

シニア犬がそっと腰を下ろした。
私はほっと胸を撫で下ろした。

「キミもお腹減ったよね……」

シニア犬が上半身をすっと地面に下ろした。
私は手荷物をだらっと地面に下ろした。
束の間、シニア犬が振り返って立ち上がった。
車のハイビームが私達を狙う。
彼がもう助けに来たのか……いや。
距離を考えると、いくらなんでも早すぎる。

「……誰だろうね? あっ、ひょっとしてキミの飼い主さんだったりして!?」

シニア犬が吠えた。
途端、運転席と助手席のドアが同時に開いた。

〈続く〉

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富山桃吉

 




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