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2015年07月

「探さないってどういうこと!?」

彼に対する私の声色は感情の乱高下でするどく尖った。
それでも彼はきょとんと返してきた。

「だ~か~ら~探さないってこと! そのまんまの意味だよ」
「それじゃ答えになってない! 大丈夫って言ったじゃん!」
「だ~か~ら~大丈夫だって」
「なにが大丈夫!? 里親さんを見つけられないとあのシニア犬を助け出せないんだよ!?」
「わかってるって~」
「わかってない!」
「わかってないのはそっちだろ~」

私達のやりとりを制したのは女性だった。

「私からももう一度お聞きします。里親さんを探さないで、一体どうやって収容施設からワンちゃんを救い出すおつもりなのですか?」

彼はこれ見よがしに腕を組んだ。

「灯台下暗し! オレ達の誰かが里親になればいいし!」
「あ……そうですね。そうですよね!」

彼につられて私も女性もニカッとした。
これでとりあえずは殺処分を免れる!

「悪くない案だけどねえ。で、誰が里親になってくれるんだい?」

私と彼と女性とが一斉に挙手した。

「くっくっく。あんた達にそこまで想われて、そのシニア犬は幸せ者だねえ」
「そう……ですかね?」

そう言われても、私達三人には実感がなかった。
シニア犬の『幸せ』の為に汗をかこうとしたわけではなく、ただただ『不幸せ』からの脱却だけを考えていたからだ。

「くっくっく。幸せのカタチは一つじゃないってことだねえ」

一つじゃない。
確かにそうだ。
ただキミを想う気持ちがここに四つある。
キミの明日や明後日が在ることを願う私達の四つの想いがここに。

「だったらこうしようじゃないか。そのシニア犬の一先ずの里親はあんた達の誰かってことで引き出し交渉をする。その代り引き出したらそのまま連れて帰っておくれよ。なんせ、家で引き受けられる頭数は限界なんだからねえ」

私の返事は自然と弾んだ。

「もちろんです!」
「それから、もし飼い主が見つからなくても一生面倒みる約束をしてもらうからねえ。シニア犬で病気を患っていると病院代もバカにならない。だからって、やっぱり面倒見きれないは通用しないよ。いいねえ!?」
「私の犬の介護経験を無駄にはしません!」

ゆるぎない決意が込められた女性の言葉が頼もしい。

「それじゃあね、早速、明日にでも収容施設に連絡入れとくからねえ」
「よっしゃ! オレ達は飼い主捜しの続きに向かうとするか!」

それはそれは蒸し暑い夏の夕暮れ空に手を伸ばし、私はニカッとしながらありったけの想いを放った。

「ねえ、キミ! キミは独りじゃないからね!」

再び歩き出した私達の背中に、セミ達が大合唱を奏でながらエールを送ってくれている。

〈続く〉

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富山桃吉




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理由を伺いたくて真っ先に口を開いたのは女性だった。

「引き出せないのはなぜでしょう?」 
「本当に申し訳ないんだけどねえ、今、家で引き受けられる頭数が限界なんだ」
「でもこのワンちゃん、収容期限が迫っているんです。このままだと……」
「本当に申し訳ないねえ……」

やはりシニアや病気を患っている犬猫の里親さん探しはそう簡単にいかないのが現状らしい。
長い間たくさんの命を繋いできたご本人故の歯痒さが痛いほど伝わる。
だからこそ無理強いは出来なかった。
思えば人生のこれまでで、私はいくつの『しょうがない』の前から逃げ隠れし、途方に暮れてきた事だろうか。
悔し涙を流した事だろうか。
その度に臆病で卑怯な自分と折り合いをつけて今の自分が在る事実。
それは決して誇れる事ではないのを私自身は知っている。
今も忘れられないでいる。
後悔が燻る夜を恐れている。
若き日の私は『しょうがない』の向う側の未来を夢見て、無邪気に『大丈夫』という言葉を信じていた。
見上げる空をいつでも近くに感じられていた。
手を伸ばせば届きそうにすら感じていた。
だが今この瞬間の私には空が果てしなく感じられる。
もたれかかる失望に押しつぶされそうで、手を伸ばす気力も湧いてこない。
『しょうがない』で前途を経つ方が簡単だという確信犯の声に誘惑されて、無防備に俯きかけている。
ふがいない。
けれどキミを救いたい。

情けない。
それでもキミを助けたい。

涙も出ない。
私にはキミを救えない?

しょうがない。
私にはもう出来る事はない?

しょうがない……。
もうキミに会えない?

しょうがない……。
しょうがない……。
しょうがない……。

「だからってオレは諦めない!」

彼の声がネガティブな感情の連鎖に絡まりもがいている私の心を鷲掴みにした。

「簡単なことだ。引き算。引き算」

一同が言葉の意味を探っている間もなく彼は続けた。

「引き受けられる頭数が限界なら、今いる一頭の里親を見つければいい。そうすれば一頭引き出せる。ですよね?」
「そりゃあそうなんだけどねえ。里親を見つけるのは簡単なことじゃないんだよ」
「だからってオレは諦めない! 大丈夫! 大丈夫!」

彼の根拠なき『大丈夫』が私のこんがらがった心をほどく。
今の私にとってこれほど信じられるものはなかった。

「それで、どうやって里親さんを探すおつもりですか?」

同じく信じる気持ちを失っていない女性の声に彼はニカッと答える。

「探しませんよ!」

一同の疑問符だけが支配する沈黙に、セミすら鳴きやんだ。

〈続く〉

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富山桃吉


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女性は時間を確認してから、私達を誘った。

「この時間ならまだいらっしゃるかもしれません。ついてきてください。理由は向かいながら話します」

私達は訳も分からず、肩で息をしながら歩き出した女性について行った。
女性が私達を連れて行こうとしている先方との出会いは数年前に遡るという。
女性と暮らしていた犬がまだ生きている頃の話だ。
歩けなくなった犬をスリングに抱えて散歩している途中、突然話しかけられたのがきっかけだったらしい。

「その方、開口一番こう言ったんです。『あんた達、幸せだねえ』って。『ありがとうねえ。わけてもらった幸せは、家の子達にもちゃんとわけておくからねえ』って」

自分の子ども達にという意味だろうか?
首を傾げる私と彼。
女性は一つ呼吸を置いてから続きを話した。

「本当の事を言えば、最初は理解ができませんでした。歩けなくなった犬が幸せなはずないって。最後まで自分の足で歩かせてあげたかった。歩けなくなる前に飼い主として出来る事があったんじゃないかって……。後悔で落ち込む日ばかりでしたから」

適当な言葉が見つからず、私達は黙ったままだった。

「その方と出会ってからしばらくして犬は亡くなりました。ペットロスに陥って、何にも手につかず、ただただいつもの散歩道を独りきりで歩く日々が続きました。そんな折、偶然にその方と再会しまして。そうしたら、その方、空っぽのスリングを見ながら仰ったんです。『あんた達、幸せだねえ』って。『ありがとうねえ。わけてもらった幸せは、家の子達にもちゃんとわけておくからねえ』って。笑われるかもしれませんが、『幸せだった』じゃなくて、『幸せだねえ』って現在進行形で仰るものだから、救われた気がして。おかげで今の私が在ります」

その方はそれ以上何も言わず、クシャクシャの名刺を渡して帰ったそうだ。

「今からその方の元へ訪問します。動物愛護団体の代表の方で、殺処分されてしまう犬や猫を救う活動をなさっています。里親希望者が現れにくいシニアでも病気やケガを患っている犬や猫でも選別なく引き出す方なんですよ」
「へえ。立派な志ですね」

素直な感想だった。
里親が決まりやすい子犬や子猫、血統書付の犬や猫は引き出されやすいだろう事は想像がつく。
けれど皆同じ命だ。
救える命に順位を付けない事を当たり前に行っているその方に対して、私の興味は俄然膨らんだ。

「どこに向かっているかは分かったけど……で、何でオレ達はその人に会いに行くんですかね?」
「万が一、ワンちゃんの飼い主さんが現れなかった場合に備えてです!」

なるほど!
第三者である私達があのシニア犬を収容施設から直接引き出せないのは聞かされていた。
だからこそ、私達は余計に焦っていたのだ。

「公に認められている動物愛護団体ならば引き出しが可能です。だからその方にお願いしましょう! 了承してもらえれば、収容期限になってもあのワンちゃんの命は繋がります!」

飼い主さんを捜す事だけに夢中になっていた私と彼が思いもつかなかった方法を彼女は提示してくれた。

「あの鳥め、本当に運をつけてくれやがった!」

自然、私達は駆け足になった。
キミを救える!
収容施設から引き出せれば、キミの飼い主さん捜しも継続できる!
月明かりが希望の灯りと重なって、私は早くも涙がこぼれそうになった。

けれど……。

「申し訳ないねえ……今、家では引き出してやれない」

その方の予想外の返答に私達は言葉を失った。
希望の灯りは霞み、いつの間にか月明かりは雲に覆われていた。

〈続く〉

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富山桃吉


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夕闇迫る頃、他のエリアで捜索をしていた彼と合流し、チラシ作製を終えた女性の元へ向かった。

「チラシ、こんな感じでいかがでしょう?」
「おお! いい感じですね!」

私と彼の言葉に女性ははにかんで続けた。

「それと、近隣の地図を出しておきました。チラシを配布したエリアや情報提供があった場所を記して捜索の的を絞っていければと思いまして」
「いいアイデアですね」
「じゃあ早速、書き込もうぜ」

彼が地図に記している間、私と女性は今後の対策を練った。

「チラシ配布や聞き込み捜索以外に出来る事って、他にどんな事があるのでしょうかね?」

女性の質問は私もずっと考えていた事だった。

「正直、これといった方法が思いつかない次第で……」
「店舗関係にもチラシ掲示のお願いはしてあるんですよね」
「はい。まあ、お断わりされるケースもありますが、動物想いのオーナーさんがいる店舗にはご協力頂いてます」
「これまでの情報提供って、どんなものが?」
「公園で似ている犬を散歩していたのを前に見たことがあるですとか、どこどこの飼い主さんが捨てたに違いないですとか」
「実際に確認はなさったんですか?」
「はい、一応は。ただ、どれも空振り情報でした」
「となると、飼い主さんは今まで配布したエリア外にお住まいの可能性が高い?」
「否定はできません。あまり考えたくはないのですが、もしも意図的だとしたら、自分が住んでいる近所に犬を遺棄するとは思えません」
「そうですよね。近所すぎると、ワンちゃんが自力で帰宅するかもしれないですものね」
「はい。顔見知りの散歩仲間に保護されることも考えられますし。意図的な遺棄ならば、飼い主さん本人からよりも、そっちの目撃情報の方が期待出来るんじゃないかとは思っています」
「そうかもしれませんね。それにしても、万が一遺棄だとしたら……飼い主さん、無責任すぎです!」
「同感です。けれどまあ、捜索する上でネガティブ思考は邪魔になるので、今は怒りを封印中です。怒りからは何一つポジティブがうまれないですし」
「本当に出来た方ですね」
「そんな褒められた人間じゃないですよ」

実際にそうだ。
経験で分かっているはずなのに私は何度も失敗を繰り返す。
腹を立てたり固執したりして、こじらせてしまう。
本当は簡単な事なのに、わざわざややこしく考えてしまう。
想いを上手に伝えられなかったり、分かってくれるだろうと身勝手に安心して失ったりする。
その度に自省して、今度こそはと誓う。
なのにまた失敗を繰り返して、ちっぽけな誓いだったと自責の念に駆られる。
どうしようもない不甲斐なさに毎度呆れながら。

「だから……そんな褒められた人間じゃないからこそ、自分以外の人には言えるんです。大切なものを失わないように、ポジティブな意見を。言霊ってやつです」
「分かる気がします。汚い言葉を吐くと、なんだか心まで汚れて気が重くなる感じですよね」
「そうです。そうです。だからポジティブにいきましょう!」
「なあ、これをポジティブに捉えろって言われてもオレには難しいぞ」

口を挟んできた彼を見ると、自分の頭を指さしている。

「どこぞの鳥がオレの頭にフンを命中させやがった。なあ、教えておくれよ。オレはこの不愉快な事態をどうポジティブに捉えればいい?」
「それはほら、よく言うじゃん。ウン〇がついたから運がついたってことにすれば?」
「そうですよね〜。そうですよね〜。うん、うんってなるかーい! だってよ、ほら、地図にもウン〇が命中してるんだぜ!」
「それは大変!」
「それはって……オレは!? オレも大変よ!?」

ワナワナしている彼から地図を取り上げた私は女性にお願いした。

「なんでもいいので、拭き取るものを拝借できますか?」
「はい。ちょと待っててください。直ぐに取ってきます」

拝借したウエットティッシュでウン〇を拭き取った地図を女性に預け、私はついでに彼の頭も拭いてあげた。

「ありがとうね〜。ありがとうね〜って、同じウエットティッシュで拭くんかーい!」

彼が憤慨していると、やにわに女性が声をあげた。

「あっ! そうだっ! その手があった!」
「どの手……ですか?」

きょとんと聞く私と彼に、女性は地図上のウン〇を拭き取った箇所を示した。

「この人に頼めば何とかしてくれるかもしれません!」
「何を……ですか?」

ぽかんと聞く私と彼に、女性は笑みを投げかけてきた。

「ワンちゃんのことです!」

〈続く〉

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富山桃吉


 


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