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2016年12月

捜索による体力低下は、旦那様だけではなく、奥様にも当てはまるだろう。
今日の日中は捜索をできていたからといって、専業主婦とは限らない。
仕事をしているが、Mちゃんのことが心配で心配で欠勤したのかもしれない。
はたまた、元々休日だったのかもしれない。

いずれにしても、空いた時間は捜索に費やしているであろうから、充分な休息をとれていないことは容易に想像がつく。
そんなことを考えているぼくに、旦那様がいった。

「それで……Mの捜索依頼を引き受けて頂けますか?」

一刻の猶予もないといった感じで、W様は懇願なさった。
気持ちは痛いほど理解できる。

だが、ぼくは軽々に捜索依頼を引き受けない。
先ずはヒアリングが先決だ。

それは、同業他社のように、ヒアリング状況によって依頼を断るつもりでいっているのではない。
飼い主様それぞれの心理状態・生活サイクルや状況・費やせる捜索時間や捜索人数などを把握しなければ、それぞれに適したアドバイスを差し上げることが難しいからだ。

経験上、電話相談での入念なヒアリングを行った結果、その後のアドバイスが功を奏し、無事な発見・保護に繋がったケースがある。
だからこそ、ぼくはヒアリングを重要視しているわけだ。

迷子ペット様の発見が難しそうなケースは『別の捜索中でスタッフに空きがない』と断るが、発見が容易そうな案件には『今から、または明日から行けます』と飛び付く業者が、この業界には確かに存在する。
また、迷子ペット様を発見できようができなかろが、金になると踏んで、やみくもに捜索依頼を受ける他業者も数多い。

そういったスタンスに辟易して立ち上げたメビー・ラックの迷子ペット様捜索は、飼い主様とパートナーになって、共に捜すスタンスを大前提としている。
それは、飼い主様とのコミュニケーションをしっかりと築き、真のパートナーとして捜索にあたることが大切だとの経験に基づく。

飼い主様によっては、仕事で捜索時間を思うように取れない方がいる。
捜索の進展が望むようにいかず、体調を崩してしまい、捜索の継続が困難になってしまう飼い主様も少なくない。

それらに付け入り、言葉巧みに飼い主様を誘導しながら捜索に着手し、安くはない金をせしめる不誠実な業者は、今も平然と営業を続けている。
そのような業者の捜索がほとんどすべてのケースでいい加減であることは、いうまでもない。

ぼくは、上記のような自分の体験談と事実を交えた正直な考えをW様に伝えた。

「ですので、捜索に着手するにしても、捜索アドバイスを差し上げるにしても、もう少し詳細なヒアリングをお願いしたいのです」

〈続く〉

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富山桃吉

 

ぼくは店についてすぐ、ライク(詳細につきましては、『「はじめまして」が繋ぐもの 1』シリーズを参照)の写真に手を合わせた。

”ただいま。また戻ってきた”
”どうしたの?”
”Mちゃんていう猫様が迷子になっちゃってるらしいんだ”
”かわいそうに……無事に見つかるといいね”
”うん”

束の間、ライクに報告をしていると、W様からの折り返し電話がきた。

「もしもし。Wです。お待たせしてすみません」
「いえいえ」

折り返し電話がかかってくるまで時間を要したのは、おそらく、Mちゃんが未発見である以上、捜索現場を離れることに躊躇があったのだろう。
一刻も早く発見したいという想いが募るのは当然だ。

しかしながら。
ぼくの立場からすれば、Mちゃんを無事に発見・保護できるまでの間、W様ご夫婦の身を案じることも無視できない。
同時に、無料相談電話とはいえ、ぼくの言動一つで捜索の行方を左右してしまう責任に、あらためて気を引き締め直した。

「それでは。早速ですが、Mちゃんの逸走状況をお聞かせください。先ず、捜索は今日で何日目になりますか?」

あえて、”迷子に気づかれた”とか”迷子になった日”いう表現を用いないのには訳がある。
今現在のW様ご夫婦の心理状況を鑑みれば、言葉選びは慎重にならざるを得ないからだ。
加えて、ほんの少ししか会話をしていないW様ご夫婦とぼくはまだ、お互いのことを充分に分かり合えているとはいえない。
そんな中、御二人が”自分たちが迷子にさせた”という負い目を感じるような表現は避けたかった。

「ええと……捜しはじめてから、今日で五日目になります」

カレンダーをちらりと見やり、ぼくはペンをさっと走らせ、ヒアリングシートに記入した。

「では、さっきまで捜索をなさっていた場所は、W様のご自宅からどのくらいの距離でしょうか?」
「正確な距離は……ちょっと分かりません」
「時間で表して頂いても構いません。たとえば、”徒歩で何分くらい”ですとか」
「ええと、十分くらいです。妻の方は……。あのさ、クリーニング屋の近くにいたんだっけ?」

受話口から顔を離し、奥様に確認しているようだ。
少しして、旦那様が答えた。

「二十分くらいの距離だそうです」
「ありがとうございます。ところで、そちらの今のお天気はどうでしょう?」
「曇っています」
「一日中、曇っていましたか?」
「いいえ。妻がいうには、午前中は曇っていたけれど、午後から夕方にかけては小雨が降っていたようです」

奥様の言葉となると、旦那様はきっとお仕事かなにかで、捜索現場付近に一日中いらっしゃったわけではなさそうだ。
日中から夜にかけて働き、帰宅してすぐから深夜帯に至るまで捜索に着手しているとすれば、この五日間は充分な睡眠時間をとれていないと推測できる。

〈続く〉

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富山桃吉

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「もしもし。夜分にすみません。迷子になっているMという飼い猫のことで、Nさんから電話番号を教わったWといいます」

声の主は、W様の旦那様だった。
予想通り、緊張と焦りの色が漂っている。

このままだと、W様の心身を浸食する疲労とストレスの悪影響で、適切な捜索の継続が危ぶまれてしまう。
そう感じたぼくは、少しでも落ち着いてもらおうと、あえてゆっくりと対応した。

「W様。お電話お待ちしていました。今、Mちゃんの捜索中ですか?」
「はい。歩き回っていたところ、Nさんからお電話を頂いたもので」
「そうですか」
「あの、是非とも捜索依頼をさせて頂きたいのですが」

歩きながら電話しているのだろう。
W様の呼吸が激しく乱れている。

ぼくは引き続き、ゆっくりとした口調で話した。

「W様。今、お一人で捜索をなさっているのですか?」
「さっきまで妻と一緒でしたが、今は、それぞれ別々の場所を捜しています」

Mちゃんを一刻も早く見つけたい気持ちは重々承知しているが、深夜帯の女性の一人歩きは決して安全だとはいえない。
もしも、W様の奥様がなんらかの事件や事故被害に遭ってしまったら、Mちゃんの捜索は継続困難になってしまう可能性があるし、それこそ旦那様のメンタルが心配だ。

だからといって、直接的にその危険性を伝えて、いたずらに不安を煽るのも得策ではない。
よって、さり気なく誘導するように、ぼくは話した。

「今捜索なさっている場所がどういった立地なのか、ぼくには分かりかねますので、詳しくお伺いさせて頂きたいのですが」
「あ……ごもっともですよね」
「できれば、旦那様が行っている捜索地域だけではなく、奥様が行っている地域についてもお教え頂ければと存じます」
「分かりました。一旦、電話を切らせて頂き、妻と合流します」
「そうして頂けると助かります。では、逸走時のことなどを含めたその他諸々についても知りたいので、奥様と合流し次第、折り返しのお電話をください。それと、メモのご用意も願いたいので、一度ご帰宅くださいますか」
「はい。では、のちほど」

一先ずは、誘導に成功した。

さてと。
ぼく自身もメモを取らなければならない。
インターネットを利用して、捜索場所の詳細を調べる必要も出てくる。

加えて、捜索アドバイスのご相談電話は、大概が短い通話で終わらない事情がある。
最低でも一時間はかかることが常で、長い場合は三時間越えに及ぶことも珍しくない。

ぼくはその場から引き返し、店に戻ることにした。

〈続く〉

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富山桃吉

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Nさんが口にした開業経緯は、ぼくがメビー・ラックを立ち上げた経緯(詳細は、当ブログ「はじめまして」が繋ぐもの』シリーズを参照)とそっくりだった。

誠実さのかけらもなく、詐欺まがいの捜索が横行するペット探偵業界。
その現状に対して我慢ならず、必死に汗を流した日々が、”今”に繋がっている。

メビー・ラックは”今”、おかげさまで、たくさんのペット様たちから愛くるしさという癒しを頂戴している。
メビー・ラックは”今”、おかげさまで、たくさんの飼い主様方から感謝を頂戴している。

そのすべてが、ぼくたちメビー・ラックのスタッフのやりがいであり、よろこびである。
同様の想いは、Nさんの会社のスタッフの方々も抱いているということを、昔聞いた。
だからこそ、ぼくらは信頼のおける間柄なのだ。

「じゃあ、こちらから飼い主さんに連絡入れますわ」
「分かりました。お待ちしてます」
「はい。よろしくお願いします」

Nさんは、ぼく直通の電話番号をW様に伝えるといって、一度電話をきった。

W様からの折り返し電話を待つぼくの身体を、冷たい北風が撫でるように通り過ぎていく。
その行く末を眺めていると、立ち並ぶマンションの脇から、一匹の野良猫様が顔を出した。

”寒いね”

それとなく発したぼくの語り掛けに、猫様は立ち止まった。

”なにしてんの?”

野良猫様がそう訊ねてきた気がして、ぼくは答えた。

”電話がかかってくるのを待ってる”
”ふーん”
”そっちは? どこ行くの?”
”とくに、行くあてなんかないけど”
”そっか。なんにしても、車に気をつけて”
”お気遣いどうも”

野良猫様はぼくから視線を外して、再び歩き出した。
どうやら、車道を渡って、べつのマンション脇を目指しているようだ。

その後ろ姿を眺めながら、迷子中のMちゃんのイメージを頭に描いた。
まだ、どんな猫様かを詳しく聞いたわけではないが、その姿をなんとなく思い描けた気になっていると、さっきの野良猫様が振り向いた。

”なにしてんの?”
”想像してる”
”なにを?”
”迷子になっちゃった、Mちゃんって猫様のこと”
”ふーん”
”どこ行っちゃったんだろうね……”
”どこにも行ってないんじゃない”
”なんで?”
”だって、とくに行くあてなんかないから”
”そうかな。飼い主様の元へ帰ろうとしてるんじゃ?”
”あ、室内暮らしの猫か”
”おそらくは”
”じゃあ、余計にほかに行くあてなんかないだろうね”
”……いわれてみれば、そりゃあそうだ”
”まあ、そういうこと。見つかるといいね”
”お気遣いどうも”

野良猫様は結局、マンションの脇に入って行って、そのまま姿を消した。

冷たい北風が、再びぼくを撫でるように通り過ぎた時、携帯電話の着信音が鳴った。

〈続く〉

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富山桃吉

 

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「飼い主さんのお名前はW様で、迷子になっている猫の名前はMちゃんだそうです」

このようなきっかけでW様ご夫婦やMちゃんと知り合うわけだが、そのきっかけはNさんだったのが実だ。

とにもかくにも。
Nさんを介して知り合うことになるW様を、前ブログ『たとえ離れていても 8』で綴ったような不健康状態にさせてはならない。
Mちゃんを未発見のままにさせてはならない。

ぼくはもう一度深く息を吐いて、ポジティブ思考に決意を注入した。

「わかりました。W様と直接お話することは可能ですか?」
「はい。こちらでも、一応の状況は伺ったんですが、そうして頂けると助かります。なんせ、今回は大阪からも近くない距離なんで……」

Nさんは自分が捜索現場に顔を出せないことを、心底悔しそうにもらした。
飼い主様と深い愛情を結んで暮らしていたペット様の葬儀に、日頃から携わるNさんらしい想いだ。

ぼくはふいに、Nさんの人柄とシンパシーを覚えた瞬間を思い出した。
それは出逢ってから間もなくの頃だった。
お互いに、なぜこの仕事をしているのかという話の流れの中で、Nさんはこんなことをいっていた。

「ペットと飼い主さんの別れの場面に立ち会う度、思うんですわ。何年やってても、火葬炉のスイッチを押す瞬間が一番しんどいって……」
「それは、想像に難くないですね……。ぼくも、捜索や介護などでたくさんの飼い主様とペット様のパートナーを担わせて頂いてますが、いざ火葬を行う瞬間に立ち会う際は、いつも込み上げるものがあります。いくつもの別れの場面に立ち会ってきたものの、未だに慣れることはありません」
「そうなんですわ。というより、ジャンルに関係なく、ペットに関係する職業に就いている者は、絶対に慣れたらあかんことちゃいますかね」

職業柄、Nさんもぼくと同じく、ペット様関連の不誠実な業者を、これまでに数多く見てきたそうだ。
それにまつわるNさんのお話の中でも、ぼくが驚いたのは、ペット葬儀業者の不誠実さにである。

「燃料経費の削減を優先して、複数の亡骸をまとめて火葬する業者がいてましてね。そういった業者が火葬したペットの骨は、しっかりと焼けないケースがあるんですわ。逆に、お骨の形がきれいに残らない場合もあったりして。複数のお骨がごちゃ混ぜになってしまっても、奴らは適当に骨壺に入れてしまえばバレやしないと平気で知らん顔してるから、ほんまに許せません」
「ふざけてますね」
「クソ以下ですわ。だからね、一つくらい、まともなペット葬儀屋を作ろうと、仲間誘って始めたんですわ」

〈続く〉

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富山桃吉
 

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