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2017年05月

S君!!!
心の中で叫びながらも、冷静さを失わないよう、懸命に堪えました。
この状況で重要なのは適切な行動判断で、私の歓喜など、どうでも良いからです。

幸いにして、あたかも風景のように溶け込んで動かない私の存在に、S君はまだ特段の警戒心を抱いていないようです。
だからといって、私の動き一つでS君の警戒心を発動させてしまう結果になるのは、火を見るよりも明らかです。

今優先するべき適切な行動の選択とは、なにか――
考えはすぐにまとまりました。

決して諦めずに、ここまでずっと粘り強く捜索をしてきた結果、念願かなってその姿を目視できたS君を、今すぐにでも保護したい想いは山々です。
ですが、私は知っています。
発見した迷子ペット様を強引に捕まえようとして失敗し、その後、彼らを再び行方不明にさせてしまった飼い主様たちの後悔を……。

加えて、S君にすれば、私は見知らぬ人間です。
初対面の人間がいきなり手を伸ばせば、恐怖以外の何物でもありません。
よって、今すぐに保護するという選択は不適切だと判断しました。

先ずは、S君がエサを食べ終わるのを待ちました。
この場所でエサを食べることに、安心と安全を覚えて欲しかったからです。

つぎに起こすべき行動は、S君の姿を撮影することです。
静止画でも動画でも、S君の一応の生存を確認できれば、それまで飼い主様を襲っていた不安感・焦燥感を少しでも和らげることに繋がるからです。

ただし、この状況では、静止画よりも動画の方が適していると思いました。
ただでさえ暗がりの茂みの中、鮮明な静止画を撮ろうとしてブレないように何度もシャッターを切り直す動作が、S君の警戒心を煽ってしまいかねない故です。

私はS君がエサを食べ終わったタイミングを見計らって、予め準備していた動画の録画スイッチを押しました。
細心の注意を払っているとはいえ、私のその動きに素早く反応し、S君はこちらを凝視してきました。
おかげで、その表情と首輪の撮影に成功しました。

S君がこちらを凝視している間、私は微動だにせず、撮影を続けました。
やがてS君は、私から視線を外し、茂みの奥へと歩き出しました。

それをすぐに追いかけることはしないで、S君の足音が聞こえなくなってから、ようやく私は動き出しました。
この日までの捜索努力の賜物で、S君が向かった先の立地状況は把握しています。
ですので、S君を直接的に追わず、遠回りすることに決めました。
公園を出た後に、S君がどこに向かうのかを知ることが、今後の捜索範囲の絞り込みに役立つからです。

〈続く〉

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富山桃吉

地道な聞き込みなどによるS君捜索の周知徹底は、その後も数日間続けました。
おかげで、ご自宅の敷地内でエサやリをしている幾人かや、親身に協力を申し出て頂いた方々とも接触ができました。

捜索を実施する時間帯については、適するであろうそれに合わせ、臨機応変に行いました。

ところが、S君もしくはS君に似た猫様の有力な目撃情報だけは、すでに得ているもの以外、新たに入手ができない日々が続きました。

こうして、聞き込みなどによる住民への周知徹底範囲は、最終的に、怪しげな男たちと遭遇した公園まで広げることになったのです。
そこからは、今ブログシリーズ『飼い猫様の窃盗 4』から『飼い猫様の窃盗 30』に綴った通りの展開になりました。

ここまでの展開で確実にいえることは、S君の飼い主様が最初に依頼したペット探偵は、まったくといっていいほど捜索をしていない不誠実な業者である、ということでした。
それでもS君の飼い主様は、エサやリ男性から私が入手した目撃情報に希望を見出し、件のペット探偵のことは高い勉強代として割り切り、今後の捜索の進捗に期待を寄せておられます。
ですから、その期待に応えるべく、私も誠心誠意、全力で捜索に当たっていました。

そうして、公園内の茂みに紛れ、張り込みに近い形で待機していながら、一時間半ちょっとが経過した頃です。
私が撒いたエサの一か所付近に、何ならかの生き物が近寄って来る足音が聞こえてきました。

夜の暗さにすっかりと目が慣れていたとはいえ、その生き物が何者なのか、瞬時に判断ができません。
だからといって、焦りは禁物です。
その姿を確認できるまでは、辛抱です。
むやみに動くことによって、エサを食べに来たであろう生き物を驚かせないよう、私は息をひそめながら待ちました。

しばらくの時間が経過後、その生き物の姿をいよいよ目視できました。
その瞬間、私の目は大きく見開かれました。
尻尾までふさっとした長毛種の猫様だったからです。

次いで、頭の中に焼き付いていた情報が、まるでコンピューターのごとく素早く弾き出されました。

・全身のほとんどが白で、背中周りと尻尾の先にはシルバーの被毛が交っている
・去勢済みのオス
・年齢は3歳くらい
・体重はおよそ5kg
・臆病な性格
・瞳は薄い青みを帯びている
・赤い革製の首輪と迷子札(猫様の名前S・飼い主様の携帯電話番号が記載)を装着

見た目の特徴からいっても、間違いありません。
今私の目に映る猫様は、S君でした。

〈続く〉

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富山桃吉


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エサやリ男性は、その表情の全面に、おぞましさを表しました。

「その”噂”を教えてくれた人は、何で猫が虐待されていると思ってんの?」
「”ここ数ヶ月の間に、近所の猫が一気に顔を見せなくなった”というのが根拠だそうです」
「ああ……なるほど。だからさっき、近所の野良猫の数が増えているのか減っているのか聞いてきたわけか」
「はい」

公園でエサやリをしている女性のことは約束通りに伏せたまま、私は確認を取りました。

「ご自分のほかに、どなたかがエサやリをしている場所をご存じありませんか? もちろん、誰から教わったのかは、絶対に口外しないと約束致しますので」
「分かりやすいのは、すぐ近くにある大きな公園だろうね。あそこには、野良猫たちが夜な夜な集まってる。ってことは、誰かがエサやリをしているのは間違いないと思う。けどまあ、オレは実際にエサやリしている人も、エサやり場所を見つけたこともないけど」
「分かりました。その公園には注意を向け続けたいと思います」
「参考にならないかもしれないけど、ほかにもエサやリをしている人は多いと思うよ。オレみたいに、ベランダとかで。そういう人たちを見つけ出して、同じように話をすれば、協力してくれるんじゃない?」
「そうですね。飼い主様のためにも、S君を無事に発見・保護してあげたいので、この先また目撃することがあったり、”噂”にまつわることで何かありましたら、連絡を頂けますか?」
「いいよ。頑張って見つけてあげて」
「はい。貴重なお話を頂きまして、ありがとうございました」

エサやリ男性とは、その場で別れました。
そして、周囲の捜索を再開しながら、エサやリ男性から得た情報を整理し直しました。

すでに目撃情報を頂いている二件と同様、S君似の猫様を目撃した時間帯及び場所が共に近いということは、同一の猫様である確率が高そうです。
加えて、今回得た情報で注視するべきは、エサやリ男性が見かけた猫様も、S君が装着していた首輪と似ているものをしていた、という証言です。

もちろん、その後に、何らかの事情で首輪が外れている可能性は否定できません。
ですが、首輪が外れていないのであれば、誰かしらに目撃された場合、S君かどうかの有力な判断材料になり得ます。

とにもかくにも、現状でいえるのは、この近所での捜索に重きを置くべきだということです。
私は、一軒ずつ聞き込みを行うことを決断しました。
それ相当の時間はかかりますが、近所に、S君捜索の周知徹底を行いたかったからです。

〈続く〉

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懐かしそうに、けれど今現在も変わらず傍で暮らしているかのように語るエサやリ男性の目には、共に過ごした猫様との確かな思い出の日々が輝いていました。
穏やかさを交えた沈黙でその姿を見つめていた私に、エサやリ男性はいいました。

「それ以来さ、猫を飼うことは止めてる。まさかオレみたいな人間がなるとは思わなかったんだけど、ペットロスってやつなのかも」

愛猫様がどんな理由で天国へ旅立ったのか、エサやリ男性に詳細を尋ねることを私は控えました。
興味だけでいたずらに突いて、悲嘆を思い出させたくはなかったからです。

私が慮る一方、エサやリ男性は消え入りそうな声でいいました。

「かかりつけの獣医の話によるとさ、オレの猫は、生まれつき病気を患ってたらしいから、いつ死んでもおかしくはないっていう覚悟はしてた。それでも、いざ死んでいくのを目の当たりにすると、予想以上にきつかったなあ……」

私自身も、過去に同じような経験をもっているので、自ずと胸がつまりました。
その影響もあり、無難な言葉を見つけて対処することはしたくなく、ただただ想いに任せて頷くことしかできませんでした。

愛猫様を亡くした経験を持つエサやリ男性の想いは、S君の飼い主様に向けられました。

「それにしたってさ、オレの場合は猫を病気で亡くしたから、ある意味、まだマシだよね。看取ってやれたし。もちろん、単純に比較できることじゃないけどさ、自分の猫が迷子になって、行方不明のままの方がよっぽど辛いよなあ……」
「迷子ペット様捜索の様々なケースを経験してきた私も、同じ想いです。だからこそ、無事発見・保護に繋がるかもしれない情報を必死で集めるわけです」
「オレも猫好きだからさ、ほかに聞いておきたいことがあったら、なんでも聞いてよ」
「ありがとうございます。では、伺わせて頂きます。本当は、むやみに心配させたくはなかったので躊躇っていたのですが……」

エサやリ男性の心遣いに甘え、私は聞きました。

「実はですね、つい先日、ある方から、物騒な情報を入手したのです」
「……どんな内容なの?」
「『最近、近所の猫が虐待されているかもしれない』という情報です」
「えっ!? マジで!?」
「まあ、今のところ、あくまでも”噂”レベルの話ですので確たる証拠があるわけではないのですが……。そのことについて、心当たりがあればと思いまして。何か、ご存じではありませんか?」
「いやあ……虐待されてケガしたり死んでる猫とか、オレは見かけたことはないけど……」

〈続く〉

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「もう少しだけ、お伺いしたいことがあるのですが」
「いいよ。何?」
「現在お住まいのアパートには、もう長いのですか?」
「長いね。十年近くになる」
「じゃあ、この辺の立地には、さぞかしお詳しいでしょうね」
「まあね。潰れた店とか、前にはなかったマンションとか、色々詳しいと思うけど」
「十年前から、ベランダでエサやりをなさっているのですか?」
「いや。エサやリを始めたのは、二年前くらいから。遊歩道の脇のエサやりも、そうだけど」

となると、周辺に生息している野良猫様たちを見かけたことがある数が相当なのは、間違いなさそうです。
十年前と今現在を比べて、周辺の野良猫様の数が増えているのか減っているのか……気になって尋ねた私に、エサやリ男性は答えました。

「減ってるよ。確実に」
「そうですか……。では、最近、急に見かけなくなった子はいますか?」
「うちのベランダに来てる猫たちに関しては、そんなことない。でも、いわれてみれば、ほかの場所でよく見かけてた猫を見なくなったなあ……」
「そうですか……」
「でも、タイミングの問題だけかもしれないし」
「まあ……そうかもしれませんよね」
「ところでさ、野良猫の寿命は、家猫の寿命よりも短いのは知ってるよね?」
「はい。感染症やケガ、交通事故などのリスクはさることながら、満足するほどの食にありつくのも楽ではありませんし」
「そう、そう。だから、お腹一杯にはならないかもだけど、餓死しないように、せめてエサだけはあげたいと思ってさ……」

いいながら微笑んだエサやリ男性の表情に悲嘆の色が滲んだのを、私は見逃しませんでした。

「オレさ、二年前くらい前まで、猫を飼ってたんだよね。遊歩道の脇で保護した、ガリガリの野良猫。こいつがさ、全然なつかない猫でさ。毎日エサをやって、快適な寝床を用意してやったっていうのに、薄情者だよな、まったく」

成猫様を保護なさった方の大抵が、同じような経験をするのは珍しくありません。
だからといって、愛情がかけられずに見捨てることをしないのもまた、成猫様を保護して共に暮らす方々に共通するやさしさなのを、私は知っています。

エサやリ男性は、ご自分と暮らしていた猫様の話を続けました。

「笑っちゃうよな、まったく。二年前くらいに亡くなったんだけどさ、結局、ずっとなつかなかったんだよ。でもさ、最後は、オレに抱っこされながら息を引き取った。撫でられるのなんて、好きじゃなかったくせに……」

〈続く〉

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