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2017年06月

私を捜し回っている男たちから見つからないようにするには、建物の裏手であるこの場所で待機し続けるのが良い選択だと判断した私は、S君が入ったままの捕獲器から程よい位置にしゃがみ込みました。

本音は、地べたに足を投げ出して座りたい気持ちでした。
ですが、そうすればもう一度立ち上がる気力が奪われると思い、止めたのです。
眠気に襲われるのも、避けたいところでした。
とにかく、S君を飼い主様のお宅に届けるまでは、集中し続けなければなりません。

集中力を維持するために、何かするべきことはないか、私は考えました。
とりあえず、スマフォを開いて時間を確認すると、夜明けまではあと二時間ちょっとでした。

”無事に家に帰れるまで、お互い頑張ろうね!”

S君と自分自身を励ましてから、私はメールの文章作りに励みました。
送信しようと思った相手は、S君の飼い主様です。
この時間帯故、電話をかけるのは憚られるので、とりあえずは、S君の無事確保の報告をしようと考えたわけです。

できれば、S君の状態を撮影し、その写真をメールに貼付した方がよろこびも一入でしょう。
ですが、写真撮影時のフラッシュで、男たちに気づかれてしまう可能性がゼロとはいいきれません。
よって、一先ずは、文章だけを送ることにしました。

”飼い主様に、S君の無事を報告しとくからね”

目を閉じてじっとしていたS君でしたが、私の言葉を聞くと、ちらりとこちらを見上げました。
私は頷き、出来上がった文章を送信しました。

それから間もなくのことでした。
突然の不運に見舞われ、私は動揺してしまいました。
雨粒が落ちてきたのです。

天気予報では、雨が降るなんていってなかったのにな……。

そう愚痴をこぼしても、雨が止むわけではありません。
私はとりあえず、着ていた上着を脱ぎ、Tシャツ姿になりました。
少しでもS君が雨に濡れないよう、捕獲器に上着をかけるためです。

”雨、早く止めばいいのにね……”

しかし、無念にも、S君と私の願いは天に届きませんでした。
止むどころか、雨は次第に強まっていったのです。
S君が入っている捕獲器の地面も、徐々に湿り気を帯びてきました。
このままでは、S君が濡れてしまうのも時間の問題です。

……どうにかしなければ!

私は周囲を見渡しました。
なにか、雨避けになるものが欲しかったからです。
けれども、今いる家主様の敷地内に、余計な物は一切置いてありません。
おそらくはきれい好きな性格で、物はすべて物置の中に閉まってあると思われます。

困ったぞ……。

〈続く〉

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富山桃吉



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思いにふける私を現実に戻したのは、エサやりの女性からの電話でした。

「もしもし。どうでしたか?」

無事を確認した私の言葉に答える間もなく、エサやりの女性が感心したようにいいました。

「あんた、本当に勘が働くねえ」
「なんです?」
「あんたが心配していた通りだったよ。公園の脇の路上にバンが停まってた」
「やはり、停まっていましたか……。ということはまだ、私を捜し回っている可能性が高いですね……。それはそうと、男たちから不必要に接触されませんでしたか?」
「それは大丈夫。連中に、こっちの存在がバレないように観察したから。あんたにいわれた通り、バンには近づいてないしねえ。それに、バンから見えない位置に移動してから電話をかけてるし」
「ご無事なら、なによりです」
「それにしても、困った状況だねえ。せっかく、猫を保護できたっていうのに……」
「バンのほかに、歩いている不審な男たちは見かけませんでしたか?」
「……見てないねえ」

とはいえ、男たち全員がバンの中にいて、私が現れるのを指をくわえて待っているとは考えられません。
あらゆる手段を講じ、手分けして、私を捜し回っているはずです。
とすると、この庭を出て、迂闊に歩き回るのは考えものです。

最善の策を考えあぐねていると、焦れたような声で、エサやりの女性が聞いてきました。

「……どうするべきかねえ」
「うーん……」
「一旦、そっちに戻って、一緒に考えようか?」
「いや。お気遣いはありがたいのですが、そのままご自宅に戻ってください」
「……どうするかを決めたのかい?」
「はい」
「聞かせてごらんよ」
「一先ず、家主様が起きる時間まで、このまま待機することにします」
「それで?」
「家主様と話ができる段になりましたら、しばしの時間、玄関内に捕獲器ごと置いて頂けるようにお願いをします」
「それで?」
「捕獲器を置かせて頂いている間に、入院なさっている飼い主様の元へ急いで向かい、ご自宅の鍵を預かってきます。捕獲器の移動は、それからにします」

S君が入ったままの捕獲器を放置することは、万が一を考えると、やはり心配でした。
とにもかくにも、リスクは最小限に抑えるに越したことはありません。
エサやりの女性も、そのことに同じ考えを示し、

「そうだねえ……連中がウロウロしている間に無理して猫を運ぶよりも、その方がまだ安全かもねえ。まあけど、どうしても困った状況になったら、いつでも連絡くれていいからねえ」

と仰ってくれました。

私はあらためてエサやりの女性に御礼を告げて、電話を切りました。

〈続く〉

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富山桃吉



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S君と共にじっとしながら、エサやりの女性からの電話を待っている間、私の思考は自然とS君の飼い主様に向かいました。
S君を無事に保護できたことを伝えれば、飼い主様は興奮と感動に包まれ、心身が打ち震えることでしょう。
一刻も早くS君との再会を果たしたい一心で、体調の回復が早まるかもしれません。

迷子ペット様とその飼い主様の再会場面に立ち会えた時、いつも私は思います。
一緒にいるのが当たり前だった日々には、まさかご自分のペット様が迷子になってしまうとは、すべての飼い主様が露ほども考えなかったでしょう。
それ故に、無事発見・保護がかなった際は、これまでの暮らし以上に双方の絆は深まり、固く結ばれるわけです。

しかしながら、です。
少々厳しいことを申し上げれば、ペット様が迷子になってしまい、飼い主様と離れ離れになる状況は、たいていの場合、偶然に起きた出来事ではありません。
飼い主様の油断や思い込み、甘い認識が招いた必然といえます。
このことはなにも、ペット様を迷子にしてしまうことだけに当てはまるわけではありません。

”うちの子は大人しいから、散歩中にノーリードでも平気”
”うちの子は賢いから、一人でお留守番していても大丈夫”
”うちの子は散歩に行かなくても、ストレスにならない”
”うちの子は良い子だから、拾い食いや誤飲なんてしない”
”うちの子は……”
”うちの子は……”
”うちの子は……”

ペット様に降りかかる事故やトラブルは、上記のように信じて疑わない飼い主様が引き起こしているといっても過言ではありません。
”うちの子”の安全を第一に考えて判断し、行動をすれば、事故やトラブルを未然に防ぐことは、さほど難しいことではないはずです。

にもかかわらず、飼い主様の油断や思い込み、甘い認識によってそれを実行しない場合、当たり前に続いていくと思っていた平穏な日常は、当たり前に続かなくなります。
これは、今現在、ペット様とお暮しになっている飼い主様すべてに向けた注意喚起です。

”うちの子”は、予想だにしない事態が起きた際、本当に微塵も驚かず、微塵も怖がらず、微塵も興奮せず、平常心を保っていられるのでしょうか?
”うちの子”は、長時間に渡る一人での留守番を、本当に望んでいるのでしょうか?
室内で繋がれっぱなし、またはケージに入れられっぱなしで、”うちの子”は、本当に幸せを感じているのでしょうか?

例えば散歩嫌いになってしまったり、例えば噛み癖がついてしまったなどの原因は、”うちの子”の性格や癖のせいではなく、自問自答すれば飼い主様側に思い当たる節があるのではないでしょうか?
”うちの子”が抱えているそのストレスは、変わってしまった飼い主様の態度・習慣・行いが原因とは考えられませんか?
”うちの子”と暮らし始めたばかりのあの頃、飼い主様はどんなお世話にも愛おしさを感じていらっしゃいましたよね?

”うちの子”を迎え入れることを決めたあの日、飼い主様はどんな想いでしたっけ――

どうか、その想いを忘れないでください。
迷子ペット様と飼い主様の再会場面に立ち会えた時、いつも私は、そんなことを思うのです。

〈続く〉

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富山桃吉

メモ帳に、

”家主様
ご協力頂けたおかげで、S君を無事に保護できました。
ありがとうございます。
ただいま、S君の搬送準備のため、一旦現場を離れております。
再び戻るまで、捕獲器はこのまま触れずにお願い申しげます。
このメモ書きを御覧になり次第、お手数ですがお電話ください”

というメッセージを二つ分書いた後、その一つをS君捜索用のチラシと共に、捕獲器に張り付けました。
もう一つのメモ書きは、門柱脇に設置されている郵便ポストに入れました。

というのも、エサやりの女性からの報告内容如何によっては、私がこの場を離れるかもしれないからです。
そのほかにも、この場を離れざるを得ない緊急事態が発生する可能性も考えられます。
いずれの場合も、私が不在中に、家主様が捕獲器に入っているS君に気づくかもしれません。
その時用に、というわけです。

私を捜し回っている男たちにこの場所がバレてしまえば、逃げざるを得ない状況になることも想定しておく必要があります。
もしそうなれば、S君が入っている捕獲器を持って逃げ回ることは得策とはいえません。
逃げる最中に私が転ぶなどして、不運にも捕獲器のフラップが開いてしまえば、S君は再び行方不明になってしまう危険性があるからです。

また、男たちに、捕獲器ごとS君を連れ去られてしまうことも考えられます。
とにかく、ネガティブな事態は絶対に避けなければなりません。

上記をはじめとするリスクを最小限に抑えるならば、このまま、この場所で朝を待ち続けることでしょう。
そして、家主様が起きた時点で、玄関内に捕獲器ごと置いて頂けるようにお願いします。
その間に、S君の飼い主様が入院なさっている病院に行って、ご自宅の鍵を受け取ります。
その後、再びここに戻り、捕獲器に入ったままのS君を飼い主様のご自宅に運ぶのがいいかもしれません。

なんにせよ、私を捜し回っている男たちの今現在の動向によって、臨機応変に対処しなければならないでしょう。

私はとりあえず、S君が入っている捕獲器を、もっと人目につかない場所へ移動することにしました。
家主様宅前に伸びる道路を歩く際に、一番目につかない場所は、建物の裏手になります。
裏手には一軒家が建っていますが、住人以外の目に触れる心配はほぼありません。
しかも、物置の脇よりもさらに暗がりなので、かえって、S君は落ち着くかもしれないと思われます。
S君の様子を見る限り、捕獲器の中で鳴いて暴れたりすることもなさそうなので、近所迷惑になる可能性も低そうです。

以上のことから、私は、捕獲器を建物の裏手に運びました。

”もう少しの辛抱だからね。がんばって”

私の励ましに、S君は尻尾を軽く振って応えてくれました。

〈続く〉

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富山桃吉



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白猫様がいっていた、

"さすがに、アレは食べないよ"

とは、なんのことだろう……。
気になったボクは、アパートのゴミ置き場に向かった。
そのアパートのゴミ置き場を通り過ぎる際にはいつも、"どうしたら、こんなに散らかっているのを放置できるのかなあ"と見ていたので、場所の察しはついている。

ほどなくして、アパートのゴミ置き場に着いた。
管理会社が見かねて掃除したのだろうか、白猫様がいっていた通り、すっかりときれいになっている。

ただ、一つだけ、ゴミ置き場の中になにかが落ちていた。
目を凝らして近づくと、二つ折りの黒い財布だと分かった。
ゴミとして捨てたのかもしれないと考えたが、そうでなくて落とし物だとしたら、落とし主はさぞ困っているだろうと案じた。

財布には白い招き猫様のキーホルダーがついていて、手に取った拍子に揺れて、小さく高い音が鳴った。
落とし主に繋がる手掛かりがあればと思い、財布の中身を確認する。
すると、少なくはない現金のほかに、健康保険証をはじめとするカード類がたくさん入っていた。

これは落とし物に間違いない、と確信したボクは、すぐさま携帯電話を手にし、警察に連絡を入れた。
状況を告げると、警察官が到着するまでそのまま待っているように頼まれ、それに従った。

20分強待った末、パトカーに乗った二人の警察官が到着した。
ボクは再度、財布を拾った経緯を伝えた。

その後、警察官の一人が、拾得物に関する拾い主の権利について話してきた。
簡単にいうと、一つは、落とし主が三ヶ月経っても現れない場合、拾得物は拾い主のものになる、という権利。
もう一つは、落とし主が見つかった場合で、拾得物の5〜20%のお礼を請求する権利である。
それらの権利請求のための書類に、ボクの氏名・住所・連絡先などを書いてくれ、と警察官はいった。

けれどもボクは、それら二つの権利を放棄する書類にサインした。
落とし主のもとに財布が戻れば、それでよかったからである。

警察官は最後に、落とし主がお礼を伝えたいと申し出た場合に連絡先を教えてもよいか、と尋ねてきた。
見返りを期待したわけではないボクは、それもお断りした。
ボクはただ、白猫様との会話のついでに、ゴミ置き場を訪れたにすぎないからだ。

落とし主がお礼を伝えるのだとしたら、白猫様と招き猫様のキーホルダーにであって、ボクにではない。
落ちていた財布にボクを招いたのは、白猫様と招き猫様のキーホルダーだからだ。

警察官が去った後、ボクの背中の方で鈴の音が鳴った。
振り返ると、ごろんと横になった白猫様がいた。

欠伸をする白猫様を見つめながら、"やっぱり、その時々の気分や状況に委ねて招かれてみるのは、悪くないなあ"とあらためて思った。

〈了〉

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富山桃吉



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