メビー・ラック BLOG~今も明日もLucky Life~

あなた様とあなた様の大切な存在が 今も明日もLucky Lifeを送れますように

ペットホテル (REST・STAY) ペットシッター シニアペットヘルパー デイケア保育 シニアペット様ホーム 手作り食&おやつ・プレミアムフード&おやつ オーダーメイドペットグッズ 謝恩グルーミング 迷子ペット様捜索

2017年11月

”聞かせた”のではなく、”聞かせてくれた”という受動的態度で表現したのには、私なりの考えがあった。
かなしいかな、現実問題として、人の世では無条件に信じて騙されてしまうことも時としてあるので、疑ってかかる姿勢も大事だ。
それにしたって、自分が知り得る知識の限界でシャットアウトせず、受け入れてみる余白をもって対峙する寛容性が、新しい知識の習得に成り得る部分もあるはずである。

そうはいっても、今、男性と私が直面している、誰かが聞かせてくれた鈴音の理由を知ることで、新しい知識の習得にはならないかもしれない。
だが、私たちの最大目的である、キジ白猫様の保護に役立つ可能性もある。

たとえば、鈴音を”聞かせてくれた”のが茶色猫様だとすると、だ。
捕獲器の中に、なにがしかの生き物が入ってしまっているのでそれを解放してあげろ、という忠告の一種なのかもしれない。
場合によっては、茶色猫様自身が捕獲器の中に入ってしまったので出してくれ、というヘルプの意味だと捉えることもできる。

実際の方法論はべつとして、”シロ”くんが鈴音を”聞かせてくれた”のだとしても、上記と同じような事情によるメッセージなのかもしれない。

「いずれにしても、です。良きにしろ悪きにしろ、なにかしらの理由で、誰かが私たちに鈴音を”聞かせてくれた”前提で考えれば、なかったことにするのはいかがなものかと思います」

私の考えに、男性も同意した。

「そうですよね。鈴音を”聞かせてくれた”理由を確かめてみる価値はありますよね。草むらの中を、もう一回確認しに行きましょうか?」
「お願いしたいと思います。さしあたって、私は一度、車の中の白猫様とキジ白猫様の様子を見てきます。そのついでに、手作り食の追加分を持ってここに戻ってきますので、それまでは、この位置で、辺りの様子を探っていてもらえますか? もう一度、鈴音を”聞かせてくれる”かも分からないので」
「了解しました。聞き逃さないように集中しておきます」

男性の返事を聞くなり、私は自分の車に向かって急いだ。
車内の白猫様とキジ白猫様の様子に異変はなかった。
私の心配をよそに、二匹ともスヤスヤと眠っている。

二匹の様子を確認した後、私は車のトランクを開けて、追加分の手作り食を手に取った。
残りはわずかだ。

手作り食が尽きてしまう前に、どうにかこうにか、残りのキジ白猫様を保護したい!

私は決意をあらたに車のトランクを閉め、男性が待つ場所へ戻った。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉

幽霊や心霊現象に関する知識について、男性も詳しくはないらしい。
それもあって、自分の発言に自信は持てないという。

「……そうだとしても、です。やはり、”シロ”が止まっていた状態からばっと動き出した時に鳴る鈴音にそっくりなんです。さっきの鈴音は。信じてもらえないかもしれませんが……」

ここまで主張をするからには、男性の耳には確かに”シロ”くんの鈴音に聞こえたのだろう。
繰り返し述べるが、幽霊や心霊現象に関する知識不足が故、本当に”シロ”くんの鈴音だったかどうかの判断基準を私は持ちえない。
であるからして、男性のいっていることを真っ向から否定できない自分がいた。

「先ほどもいったように、私は、”シロ”くんが付けていた鈴音を存じません。それも加味しつついえるのは、私もさっきの鈴音を聞いている事実がある、ということです。その鈴音が”シロ”くんが鳴らしたものであろうが、ほかの子が鳴らしたものであろうが、事実は事実として私は受け入れています」

結局のところ、信じるか信じないかについて判断を下せるとしたら、それは茶色猫様と”シロ”くんが止まっている状態を目の前にして、交互に、ばっと動き出してもらい、その時に鳴る鈴音を聞き比べるほかない。

しかしながら、”シロ”くんは亡くなっているし、聞き比べのためだけに茶色猫様を捕まえることはしたくないので、上記は実現不可能である。
よって、信じるか信じないかの判断を下すことについてこれ以上考えるのは時間の浪費にしかならないと私は思った。
だからといって、そんなふうにストレートな表現で伝えたら、男性はきっと気落ちするであろう。
ならばこそ、私は話の矛先を変えた。

「誰が鈴音を鳴らしたのか、よりも私が気になっているのは、どうして鈴音を鳴らしたのか、についてです」
「……といいいますと?」
「鈴音を鳴らしたのが”シロ”くん又はほかの子だとしても、私たちに鈴音を聞かせてくれた理由があるのではないでしょうか?」
「理由、ですか……たとえば、どんな理由なのでしょう?」
「自分でいっておいてなんですが、正直、分かりません。理由をつけて自分を納得させたいのかもしれません。単に、その理由を知りたいという興味も含まれます。それにしたって、もしも、ですよ? 自らその理由を知ろうとするなら、知ろうとしないことで知ることが叶わないなんらかの結果を知り得るかもしれません」
「そうですね。私も知りたいです。誰かが聞かせてくれた鈴音の理由を……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉

前回ブログ『サービスエリアの空の下 64』の文末で男性がいった、

『”シロ”が止まっていた状態からばっと動き出した時に鳴る鈴音にそっくりだったなあと』

という意見は、猫様と暮らしていない人にとってみれば馴染み深いものではないだろうから、よもや疑わしい発言だと思うかもしれない。
ただ、私は兄弟猫様と共に暮らしているので、その実感をもって、男性の発言にすんなりと頷けた。
確かに、猫様によって動作に違いがある。
止まっていた状態からばっと動き出した瞬間に関していえば、駆け出したその歩数には個体差を確認できるものだ。

それにしても、である。
”シロ”くんはこの草むらの中で生まれ育ったわけではなく、男性宅の納屋で産声を上げ、彼の家で育ったはずだ。
なによりも、”シロ”くんはすでにお亡くなりになっているので、草むらの中で鈴音を鳴らすことはあり得ない。
そうである故に、男性の想いに適する反応を上手く見せることができない私がいた。

男性自身にしても、まさか”シロ”くんが生き返ったとは思っていないであろう。
そこまで理性を失っている言動を見せたことは、ここまで一度もない。
おそらくは懐かしみの一種に違いない、という解釈に私は努めた。

しかし、男性が口にしたつぎの言葉で、私の解釈とはべつの意味があることを知った。

「たぶん今、”シロ”は草むらの中にいます。とはいっても、生きていた頃の実物の姿ではなくて、幽霊の状態とでもいいますか……」
「……幽霊!?」
「そうですよね。こんなことをいったら、気が触れたのだと思われるでしょうけど……」
「いや……そこまでは思っていませんよ。けれども、です。仰るように、”シロ”くんが幽霊の状態で草むらの中にいたとして、ですよ。どうして鈴音を鳴らしたのでしょうか? もっといえば、どうやって鈴音を鳴らせたのでしょうか?」

幽霊の状態の”シロ”くんが、この世に実物の状態として存在する鈴を鳴らせる術があるのかどうか、私には分からない。
きっと、男性自身も分からないのだと思う。
それでも、上記を尋ねたのは、男性の考えを否定したいからではない。
むしろ、私自身が納得したいがための発言であったといえる。
男性にそれを告げてから、私は意見を重ねた。

「私は、”シロ”くんが付けていた鈴音を存じません。ですから、茶色猫様が付けていた鈴音との違いを聞き分けることは不可能なのです。ただ、それだけの理由で、さっきの鈴音が”シロ”くんのものではないと断言できるほど、幽霊や心霊現象に関する知識を持ち合わせていないのも事実です」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉

草むらの中へじっと視線を向けたままの男性は、少し間を空けてから言葉を繋いだ。

「茶色猫の鈴音が聞こえたのが空耳だとは思いません。二人共が聞こえたのだから、間違いはないでしょう」
「では、なにが引っかかっているのですか?」
「いやあ……」

この期に及んでも躊躇しながら、男性は続けた。

「あの鈴音にですね、聞き覚えがあるような気がしてならないのです」
「聞き覚えが?」
「はい」

私としては、特段、変わった鈴音だとは思わなかったのが正直なところである。
それでも、それは口にせず、男性の話の続きを待った。

「……いやね、鈴音のわずかな違いを聞き分けられるほど、耳がいいわけではありませんがね。それでもさっきの鈴音だけは忘れることはないのですよ」
「それはその……鈴音の高さや低さ、もしくは鈴音の大小の違いから、そう思われたのですか?」
「高低差や大小というよりは、リズムですかね」
「リズム……」

私は、自分が聞いた鈴音のリズムを思い出そうと試みた。
独特なリズムだったと断言はできないが、所謂、一定のリズムではなかった気がする。

だが、それはそうだろう。
茶色猫様が、常に一定のリズムで動いていたわけではないからだ。
事実、その動作は自由気ままで、動き方によっては鈴音がすることもあったし、しないこともあった。

では、男性と共に聞いた、先ほどの鈴音はどうであっただろうか……。
私自身と共に暮らす兄弟猫様の首輪にも小さな鈴が付いているので、彼らの鈴音が聞こえるシチュエーションを頭に思い浮かべてみた。
彼らが脚で首元を掻いたり、グルーミングを行っている最中に鈴音が聞こえることがある。
そのほかといえば、止まっていた状態からばっと動き出した瞬間などにも鈴音が聞こえる。
私は、そのことを男性に話した。

「どちらかといえば、先ほどの鈴音は、急な動き出しのその初動に鳴ったもののように感じたのですが」
「同じく、そう思います」
「ということは、そのような動きのリズムに聞き覚えがあるということですか?」
「その通りです。あの動き出しのリズムが、とてもよく似ているのですよ。”シロ”に……」(※”シロ”くんの詳細については、過去ブログ『サービスエリアの空の下 4』を参照)
「”シロ”くんは、鈴を付けていたのですか?」
「はい。さっきお宅さんがいっていましたが、”シロ”が止まっていた状態からばっと動き出した時に鳴る鈴音にそっくりだったなあと。あの鈴音は……」
「そうなのですね」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉

俯き加減の男性を、私は促した。

「捕獲器にべつの生き物が入っていなくて良かったですね。とりあえず、二匹のことが気になるので、車に戻りましょう」

無言で頷いた男性を連れ歩きながら、私はわずかながらの自嘲を覚えた。
サービスエリアの空の下 61』でも書いた通り、茶色猫様に対し、

”もしかしたら、もうすでに、キジ白猫様を捕獲器へと誘導してきてくれたのかもしれない……。

と淡い期待を抱いていたからである。

そんなに都合よく、ことは運ばないか……。

恥じ入るように、私も軽く俯いた。
その時である。
草むら際から小股でニ十歩くらい歩いた位置で、茶色猫様が付けていた鈴音を私の耳は捉えた。

「……ん?」

立ち止まり、下を向いていた顔を条件反射のように上げると、男性と目が合った。
どうやら、男性にも鈴音が聞こえたらしい。

「今の音……あの茶色猫の、ですよね?」
「そう、だと思います」
「どこから聞こえてきたのでしょう……」

男性が首を回す。
私も同じようにして、茶色猫様の姿を探した。
しかしながら、四つの目をもってしても、周囲に茶色猫様の姿を見つけられない。
そのうちに、男性が不思議そうにいう。

「おかしいですね……確かに聞こえたと思うのですが」
「……ですね」

私と男性が今立ち止まっている位置は、歩道部分のアスファルト上だ。
よって、視界を遮るものはない。

そうなると、だ。
茶色猫様が姿を隠せる場所があるとすれば、それはやはり、草むらの中しかない。
それを私が口にするまでもなく、男性もそう考えたのだろう。
気づけば、草むらを振り返り、呟いた。

「茶色猫、どこかに上手く隠れていたのでしょうかね……」

それは草むらの中に植わっている樹の上だったのかもしれないし、茂る草陰だったのかもしれない。
いずれにせよ、男性と私からは見えない位置だったのだから仕方がないだろう。
そもそも、茶色猫様は保護対象ではないので、あまり深刻に考える必要はない。

私はそう意見を述べたが、男性はしかし、まだどこか釈然としない様子であった。
不思議に思い、私は尋ねた。

「一体全体、なにが、そんなに気になるのですか?」
「いやあ……茶色猫の鈴音について、ちょっと……」
「鈴音、ですか?」
「ええ」
「私にもさっき、確かに聞こえましたよ。ですから、空耳ではないかと思いますが……。鈴音を聞いたのは、さっきのが初めてではありませんしね。あの子と出くわしてから、もう何度も聞いています」
「はあ……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉

このページのトップヘ