けいちゃんの妖怪ブログ@北海道移住〜何のために生まれて何をして生きるのか〜

現在はコンサルティングファーム勤務、大学時代は民俗学を学んでいた渡邉恵士老(けいちゃん)の臥薪嘗胆ブログへ、お越し頂きありがとうございます。 主に新書、漫画、文芸書、ビジネス書、妖怪書など読書した感想を徒然と書き連ねています。 最近は、北海道をぶっ壊すために札幌へ移住したものの、北海道と東京を行き来する生活に慣れました。 温泉、神社、猫好き。よろしくお願いします。

妖怪屋サイトさんへ寄稿しました。

エヴァンゲリオンと妖怪ハンター
https://youkaiya.jp/archives/2746



3月8日に「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」が公開されました。

元のテレビシリーズである「新世紀エヴァンゲリオン」も含め、本作品にはキリスト教や聖書をモチーフとしたキーワードが多く出てきます。
また、影響を受けた作品として多く語られているのが、諸星大二郎氏の「暗黒神話」や、「ぼくとフリオと校庭で」に収録された「影の街」という作品です。
岡田斗司夫氏は「BSマンガ夜話」の中で、「エヴァンゲリオン」と諸星大二郎氏の「生物都市」や、「妖怪ハンター」の「生命の木」、「黒い探究者」、「死人帰り」などとの類似点を語っています。

特に、「妖怪ハンター」の「生命の木」の元ネタである、「生命の樹」を起点として、エヴァンゲリオンと妖怪ハンターについて記載しています。

青森県新郷村(旧・戸来村)には、キリストの墓があります。
元にしている文献が「竹内文書」であり、「竹内文書」は偽書として断定されていため、その言い伝え自体は眉唾物ですが、実際に青森にキリストの墓ができて、それに関わる祭祀が行われているという事実があるのは面白い事例だと思います。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の話に戻ると、聖書やキリスト教などのキーワードが今までのシリーズから更に追加して散りばめられており、ファンによる様々な分析考察がされているのが面白いですね。20年前に東浩紀氏が「動物化するポストモダン」で「データベース消費」としたものの延長線があります。

そして、本作は今までの全てのエヴァンゲリオンの物語を包括し、約25年間の決着をつけるという意味で、ふさわしい作品だったと思います。
過去の経緯を踏まえた作品ではあるので、単体の映画作品としてのストーリー性だけで語ることは難しいですが、映像や表現技法も素晴らしいので、今後も語り継がれる作品だと思います。

最近、東氏は「ゲンロン戦記」でこの10年の活動を振り返っていましたが、このタイミングで過去10年や20年の活動に一区切りをつけるというか、言葉や虚構の世界から、現実の経験への移行が大きな流れとしてあるのかもしれません。

ぼくときみの関係性に閉じた「セカイ系」の物語こそは、ゲンドウとユイの物語であり、「父殺し」によって「セカイ系」を超克し、現実に帰ってきた物語は、まさにこの20年の現実世界とリンクします。

妖怪がテーマの場でエヴァンゲリオンの話をするのは少し場違いなように思われるかもしれませんが、「誤配」がイノベーションやクリエーションの源になる場合があるということで、ご容赦ください。
こじつけに聞こえるかもしれませんが、エヴァンゲリオンのおどろおどろしさやクリーチャー性は、妖怪に通じるものがある気もしました。
聖書をモチーフとした物語や、「セカイ系」の超克、「父殺し」といった宗教性も、妖怪とつなげて分析してみると面白いと思います。(個人的な今後のライフワークになるかもしれません。)

よろしければご一読ください。
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『なぜデジタル政府は失敗し続けるのか 消えた年金からコロナ対策まで』
日経コンピュータ、日経BP、2021年2月

個人的に昔、SEABISやGIMA、人給など府省共通システム・府省重点プロジェクトに断片的、断続的に関わったことがあったので、興味深く読みました。
日経コンピュータや日経クロステックの過去記事からの収録が多いですが、それが「デジタル政府の失敗」というひとつのテーマでまとまっていることに本書の価値があります。

e-Japan戦略から始まる政府のデジタル政策の大きな流れや、その過程で起きた特許庁、年金、人事・給与システムといった失敗事例がよく分かります。
直近で起こったHER-SYS、COCOA、G-MIS等についても問題の経緯を詳細に記載しており、とても分かりやすかったです。

失敗事例だけではなく、政府CIOによる立て直しの記録やBPMの導入、農林水産省によるSlackを用いた自治体や農業従事者とのコミュニケーション事例など、成功事例についてもいくつか触れられていたので、示唆的な内容もありよかったです。
農水省は、デジタル政策推進チーム(DXチーム)を他省庁に先駆けて立ち上げており、その成果が出てきているのかと思います。
ちなみに、登大遊さんの「シン・テレワークシステム」や「自治体テレワークシステムforLGWAN」は、先日のテレビ「情熱大陸」にも出ていたので面白かったです。

自治体の失敗事例として、京都市の事例が詳細に載っているのもよいです。まだ民事調停も続いているところですが、判例として旭川医大とNTT東の発注者側責任を問う判決事例と並んで後々に残りそうなものなので、最新の状況も踏まえて経緯が記載されており、読みごたえがありました。

本書の記載内容に関しては中央省庁や自治体の情報なので、失敗事例についても契約情報など基本的にはすべて公開されている情報であり、本書独自の情報としては、いくつかあるインタビュー記事の内容くらいかなと思います。
ただ、公開情報であっても、それが時系列的に網羅的にまとまっているので、本書には資料的な価値が十分にあると思いました。

これから政府も自治体もデジタル化が大きく進んでいく中で、それに関わる人たちは、本書を読まないまでも記載されている内容は知っておき、過去の失敗を繰り返さないようにする必要があると思います。

特に地方自治体は基幹系システム17業務の標準化を「25年度末までに統一」という話が降って湧いてきたところで、「標準化」の中身が明らかでない中でもBPRを進めなければならず、国の「業務・システム最適化計画」の失敗を繰り返さないように早急に検討を進めなければなりません。

発注者側のガバナンス、BPRを含めた仕様の作成、ステークホルダーの協力体制など、当たり前のことですが、プロジェクト現場に入り込むとなかなか問題が見えにくくなってしまうことがあります。
その時に、過去の失敗事例を知っていれば、「ヤバい」という勘所は掴めるようになると思います。そうすれば、何が「ヤバい」のか落とし込んでいき、足りないリソースは外部コンサルでも使って埋めていくことができます。「ヤバい」ことの具体的な原因は組織やプロジェクトによっても異なりますし、まずは「ヤバい」ことに気付けることが大事かと思います。

今年の9月にデジタル庁ができることで、国や自治体だけではなく、民間企業への影響も多かれ少なかれ色々な形で出てくるのではないかと思います。
「DX」がバズワードになって久しいですが、民間企業も政府の失敗事例から学ぶところは大きいと思います。
政府だけではなく、自治体でも民間企業でも、デジタルに関わる人は読んで知っておく価値のある内容の一冊です。


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『こうすればうまくいく 行政のデジタル化』
石井大地、ぎょうせい、2020年12月

本書は「行政のデジタル化」というタイトルですが、国や中央省庁というよりも、地方自治体など住民への直接サービスを行っている組織におけるデジタル化の入門書・指南本という面が強いように思いました。

2020年12月25日に、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が総務省から出され、地方自治体におけるDX・デジタル化の推進は、国からも民間企業や住民からも求められており、待ったなしの状態になっています。

本書では、デジタル化プロジェクトの進め方が分かりやすく書かれており、小規模サービスから大規模システムの導入まで使える、大まかなプロジェクト進行・管理手順が理解できます。

実際に個別プロジェクトを進める際には、ここに記載されている手順をすべて実施しなければならないわけではないですし、ここに記載されている以外の調整や交渉事なども発生してくると思いますが、よくある落とし穴など、実際に起こりやすい疑問点やトラブル等にも言及されており、とてもよくまとまっていると思います。

私自身は、過去に中央省庁や地方自治体でコンサルの立場(本書でも名前が挙がっていたコンサルティング企業の一員)でシステム導入に関わったことがあるので、その立場で読んでしまいましたが、発注者側としてはパートナー選びが本当に大事だと思います。
著者の石井氏がグラファーというスタートアップ企業の代表の方なので、スタートアップ企業寄りの内容になっていますが、スタートアップ企業も数が多く有象無象であるために、中には資金財務面での継続性や、サービス品質面等での不安などデメリットがある企業もあります。そのような場合には、コンサル会社を使って市場調査を行い、スタートアップ企業を含めた各社サービスの比較検討が必要になる場合もあります。
また、自治体や、民間企業も大手企業だと人事異動があるので、せっかくパートナーとして信頼関係を構築したところで人事異動が発生し、また一から信頼関係を構築したり、信頼関係が崩れてしまって修復不可能になってしまう場合もあります。そのような場合でも、コンサル会社が間に入ることで、リスクを軽減できることもあるので、パートナーとしてのコンサル会社の活用方法は多岐に渡ります。
コンサル会社を使わずとも、信頼できるパートナー企業を見つけることができれば最善ですが、なかなかスムーズにはいかないのが現状では現実だと思います。
2021年9月に発足予定のデジタル庁では、市町村のCIO補佐官等の外部人材任用等の支援や、プロパー職員の育成など、人材確保支援にも力を入れるようなので、制度ができてくると、また違った形になってくるのかもしれません。

本書の内容に戻ると、基本的なところは押さえられており、入門的なところでは十分なものの、もう少しBPRや業務の視点があるとよいように思いました。

特に地方自治体は基幹系システム17業務の標準化を「25年度末までに統一」という話が降って湧いてきたところで、「標準化」の中身が明らかでない中でもBPRを進めなければならず、国の「業務・システム最適化計画」の失敗を繰り返さないように早急に検討を進めなければなりません。

発注者側のガバナンス、BPRを含めた仕様の作成、ステークホルダーの協力体制など、当たり前のことですが、プロジェクト現場に入り込むとなかなか問題が見えにくくなってしまうことがあります。
その時に、本書に記載されているような基本的なデジタル化手順に関する知識があるのとないのでは、大きな違いが出てきます。

「DX」や「GovTech」という言葉をバズワードで終わらせずに、具体的な行政サービスに落とし込み実現していくために、参考となる一冊です。

こうすればうまくいく 行政のデジタル化
石井大地
ぎょうせい
2020-12-25


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妖怪屋公式サイトさんに寄稿しました。

オニャンコポンとアフリカの妖怪たち


https://youkaiya.jp/archives/2685

本日2月14日は聖バレンタインデーです。

チョコレートの原料であるカカオ豆は、コートジボワールやガーナなど、西アフリカでの生産量が多いです。

ガーナの創造神として、「オニャンコポン」がいます。

「オニャンコポン」という名前は「進撃の巨人」のキャラクターとして有名になっていますが、元ネタと思われるのは、ガーナの神様です。

アンドルムン、イエバン、アスプ、カトブレパスなど、アフリカに伝わる妖怪をご紹介します。

よろしければご一読下さい。



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「妖怪ちゃんねる」さんに寄稿しました。

2021年は妖怪イヤーとなるか

https://youkaiya.jp/archives/2394

2021年は年明けから新型コロナ禍により首都圏の1都3県にて再度の緊急事態宣言が出され、関西3府県でも緊急宣言発令が予定されていたり、アメリカではトランプ支持者が暴動を起こしワシントン連邦議会議事堂を襲撃し、現役の大統領が国家反逆罪を犯したとして罷免を求めて弾劾される事態になりつつあるなど、波乱の幕開けとなりました。

2021年は丑年です。
ウシをモチーフとした妖怪としては、「牛鬼」や「件(くだん)」などがいます。
2020年には、疫病を予知して鎮めるということで「アマビエ」が流行りましたが、同様に疫病を鎮める力を持つ牛鬼や、予言能力を持つ件は、干支とも相まって今年ブームになるかもしれません。

今年の妖怪的なニュースといえば、映画「妖怪大戦争 ガーディアンズ」が2021年夏に公開予定です。
監督は三池崇史、主演は寺田心で、埼玉県所沢市が舞台になるようです。
東所沢にある角川武蔵野ミュージアムでは、「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020」が開催されるなど盛り上がっているようです。
所沢は、トトロの舞台となったトトロの森のある土地で、その近くの早稲田大学所沢キャンパスの図書館は、民俗学や文化人類学の蔵書が多くあり、妖怪研究にうってつけの場所です。
私もここで、妖怪研究をしていました。
所沢の鎌倉街道にかつてあった「福猫塚」は、不思議な猫の言い伝えが残る場所です。

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北海道の今年のトピックスとしては、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産になるかもしれないということがあります。
北海道・青森・秋田・岩手の17遺跡で構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、今年6月から7月にかけて開かれるユネスコ(国連教育科学文化機関)の委員会で世界文化遺産への登録決定を目指しています。
縄文時代の土偶として有名な「遮光器土偶」は、青森県亀ヶ岡石器時代遺跡のものです。

縄文文化の自然の中に神性を見る「アニミズム」の考え方は、妖怪文化に通じるものがあります。
持続可能な開発目標である「SDGs」が流行ってきている今、約1万5千年も続いた縄文時代の文化が、現代の人類にとって手掛かりとなるということもあり、注目が集まってきています。
SDGsは、妖怪と相性がよく、環境問題、社会課題の解決のためには、妖怪の力を借りることも必要ではないかと思います。

ちなみに、宣伝になりますが、SDGsと自治体DXについてのセミナーを予定しています。
妖怪についても語る予定です。

https://www.itc.or.jp/foritc/seminar/b_210127.html


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北海道では、チプサンケなどのアイヌのお祭りが2020年は中止になっていました。
今年はお祭りや各種イベントが開催されるようになることを祈念しています。
そして、新型コロナ禍が治まり、疫病退散されることを祈念いたします。

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