東海地方沿岸の太平洋上を、一隻のフェリーがゆっくりと航行していた。
連休中ということもあって、普段よりも多くの旅行客が乗船している。
雲一つない晴天の中、穏やかに凪いだ洋上を順調に航海してきた船は、あと2時間もすれば目的地の港へ入港出来そうであった。
そんな時、海面に突然湧き起こった高い波と飛沫が、船体を大きく揺らしたのである。
飛沫の中から現れたのは、緑色の半漁人のような姿をした巨大な怪物であった。
「コイツか! 近頃海を荒してるバケモノというのは……」
船長が悔しさを滲ませながら呟いた。
ここ1ヶ月程の間、日本近海を航行する漁船や貨物船が次々に沈没する事件が起こっていた。
いずれの船も凄まじい力で穴を空けられていたことから、防衛当局では巨大生物の仕業とみて警戒を呼び掛けていた最中であった。
船長以下のクルー達はここまで慎重に航海を続けていたが、あと少しというところでこの巨大な「犯人」と遭遇してしまったのだ。
「こっちに来るぞ!」
ラウンジで誰かが叫んだ。
窓から様子をうかがっていた男性の乗船客だ。
大きな背びれを持つ巨大な半漁人――――その名は海底原人ラゴン。
特徴的な三白眼は人間に対する敵意に満ち満ちており、兇悪とさえいえる顔つきで船に迫ってきたのである。
船内はパニックとなった。
船はすでに全速で逃れようとしているのだが、ラゴンの迫ってくるスピードは明らかにそれを上回っていた。
追いつかれたら最後、クルーも乗船客も逃がれようが無い。
「あっ! あれは何?!」
震える母親の腕に抱かれた女の子が、窓から空を指差しながら叫んだ。
その視線の先には、遥か上空に浮かぶ小さなシルエットがあった。
それは見る見るうちに大きくなったかと思うと、次の瞬間には強烈な突風と波飛沫をあげながら海上に降り立ったのである。
「シェアアァッ!!」
力強さと優しさを併せ持った声。
お下げのような頭部の飾り。
豊満な胸部からまろやかなくびれを経て、肉感あふれる臀部へと到る至高のボディライン。
神秘的な女体の曲線美を際立たせる、メタリックな銀と赤のボディカラー。
ウルトラマザー。
魅惑的な肉体を持ちながら高貴なる雰囲気をたたえた、ウルトラ族随一の淑女の姿であった。
「ウルトラの母だ!!」
子供たちの歓声が一斉に沸き起こった。
大人達の間からも安堵したようなため息が聞かれはじめる。
「ちょっと! こんな時に何撮ってんのよ?」
マザーの後姿に向けてスマートフォンをかざした若い男性に、恋人と思しき女性が口をとがらせた。
「何って……皆を守るために戦うウルトラの母の勇姿をだな……」
「へえ~、コレがぁ?」
「ちょっ、おいっ!?」
女性が奪い取ったスマホの画面には、マザーの丸々とした巨尻が大写しに映し出されていた……続きを読む