d75853e5.bmp カルトについての関心は小さくないようである。私の認識では、カルトとは
 
 「特定の人物(あるいは事物)に対して、熱狂的な崇拝やのめり込みを行うことやそうした行為を行う組織・集団のこと」
 
 であると考えている。宗教であると、政治思想であると、妄想であると、ユートピア思想であるとを問わない。閉鎖的である場合が圧倒的だと思う。極めて特異な教義、信条や行動様式を持つものがカルトであり、指導者がいない場合も稀にあるが、多くの場合の特徴として、カリスマ的指導者のもとに率いられている。

 京都府のキリスト教教会、宗教法人「聖神中央教会」の牧師、金保の性的暴行罪は日本中の注目を強烈に集めている。一般的なニュースの素材としても、タブロイド紙的なゴシップのネタに至るまで百花繚乱のメディア乱舞である。興味本位の好奇心、のぞき見的趣味にはぴったりであるのだろう。

 被害に遭った元信者の少女らに対して、「被害者の会」を作って対応しているのが日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団の京都教会牧師である村上密氏であることはすでに知られていることであるが、今回の事件についての心理的カウンセリングは想像以上に困難であり、予想を超えた被害者の続出に加え、想像を絶する日本中の反響の大きさに、彼、および「被害者の会」の対応能力はすでに完全なパンク状態となっているらしい。確かにそうだろう。おそらく村上密氏は眠る時間を捻り出すのがやっと。心身共に消耗の限界に近づいていると思う。誠にお気の毒だ。
  
 「他の教会の牧師と話をすると、地獄に落ちる。」
 「悪いことが起きるのは悪霊のせい。」

 と洗脳されていた少女達から話をするのは大変だったようだが、可塑性に富む少年期の子は変化も早い。根拠のない恐怖心を過去のものとすることは比較的容易だろう。だが、問題は性的虐待の心的外傷、トラウマである。おそらくこれは一生消えない、と私は思う。被害者の少女達と相性の合った有能な臨床心理士や精神科医が束になってケアに取り組んでも完全にトラウマを消すことは無理だろう。
 
 事実の真偽は定かではないが、顔にモザイクが入っていたものの元信者という成人女性の被害者が 

 「きれいな人はみんな被害に遭っていた。来なくなった人たちも含めれば100人以上いるんと違います?」

 と言っていた、100人は大袈裟にしても軽く数十人に達することは十分あり得そうな見通しである。
 
 ここで私は一つのことを思わずにいられない。これら実態についての詳細な情報や、将来的な見通しについて村上牧師は事件が社会的に報道される前に容易に分かりえたことであるが、それにも関わらず、専門的で適切な、そしてまた柔軟性のある機動的なケアや事後の対応をとれるような人的、物的資源の準備がまるでなかったように見えるのである。何をやっていたのだろうか。村上さんが、先週、先の土曜日までに京都府庁を通じて専門家の協力を求める予定だと仰っていたり、今後、他の教会牧師とも連携して表面化していない新しい被害者やその家族、脱会信者のケアにあたるため、

 「全てのキリスト教会に協力を訴えたい。カトリックの方も協力してくれるのであれば喜んで連携したい。」
 
 と記者会見していたのを見て感じたことである。
 
 今頃になって何を言っているのだろうか?事件が起こってから後は蜂の巣をつついたような騒ぎでてんやわんやになるのだから、そうなってから後に 
 
 「カトリック○○教会の司祭、○○と申します。この度はどうぞ宜しくお願い申し上げます。」
 「○○教団の牧師、○○でございます。今回は大変なことになりましたが、精一杯のお力添えをさせていただきます。」

 などと名刺交換の挨拶から始めるつもりだったのだろうか。間に合うわけがない。そもそも相手の人物、能力、人格、信頼性などを見極めることすらできない。ただ単純にキリスト教の聖職者であるというだけで無前提に楽観的に信用して良いということにならないことは、言うに及ばない。
 
 「被害者の会」が置かれている京都教会には被害を訴える電話が続き、少女から成人まで、引きこもり、鬱病、精神的な変調など多種多様な痛み、被害に苦しむ駆け込み相談でてんてこ舞い。村上牧師は佐賀千恵美弁護士(この女性弁護士は評価が高い)を立てており、司法的な対応も同時並行で手がけているのだから、物理的な処理能力を超えた完全パンク状態になることは明らかだった。熱血漢で情熱家、村上密牧師のパーソナリティから考えるにあまり組織横断的な事件のキャッチ体制をネットワークとして作ってから動くという戦略的準備ができなかったことについては、私は何となく想像がつくのであるが、事件がことこういう状態になってしまってから予想を遙かに超える展開に立ちすくみ、こんなはずではありませんでした、で弁明できる性質の問題ではない。迅速かつ機動的な対応こそ焦眉の課題になることがわかっていて、なぜ、あらかじめカルトへのケア体制を整えなかったか。疑問でならない。私の知る限り、ペンテコステ派のアッセンブリーズがカトリックに助けを求めるというのはものすごく珍しいこと。完全否定こそしなかったが、幼少時からアッセンブリーズの人たちがカトリックについて肯定的な見解を話したり教えてくれたことは一度もなかった。 
 
 とはいえ、事態は長期戦になることが確実で緊急なのだから、ぜひ適切な能力と余裕がある人たちがボランティアとして責任を持って対応に協力してあげてほしいと私は願う。私も自分が女性で、関西に暮らしていて、心理的な対応ができるのであれば、村上氏のことを決して尊敬はできない(はっきり言えば嫌い)のであるが、好きとか嫌いとかで斜に構えている場合ではない。ただただご奉仕の姿勢に徹してお力添えさせていただきたいという気持ちはある。

 女性の方で、弁護士、臨床心理士、セラピスト、修道女、保母、看護婦、教員などの経験がある人ならば相当程度、貢献できるのではないかと思う。事件の性質上、男性はあまりしゃしゃり出て行かない方が逆にいいかも知れないが・・・。